ステランティス内のプジョー及びシトロエンに用意されているMPV、『リフター』と『ベルランゴ』がマイナーチェンジを受けた。
今回お借りしたのは、プジョーの『リフターGT』。ショートホイールベース版のモデルである。リフターとベルランゴはほぼバッジエンジニアリング車だから、基本的なメカニカルトレーンは同じながら、先代もそうであったように、足回りは微妙に異なる味付けがなされている。
プジョー リフターGT新しくなってもその差別化は同じで、この2車の差は一番大きなところでタイヤサイズの違い。リフターが17インチを履くのに対し、ベルランゴは16インチである。単に17と16という差異にとどまらず、リフターの方は215/60R17 100H。一方のベルランゴは205/60R16 96Hと、タイヤ幅、耐荷能力も異なる。足のセッティング自体も先代は異なっていたので、今回も差別化をしていると思われる。
こうした性能差は2台を乗り比べてみないとわからないものだが、今回はとりあえず新しいリフターの印象についてお伝えしよう思う。
◆先代から大きく変わった3つのポイント
先代から大きく変わった点は大きく3つ。一つはインパネのディスプレイ類で、インフォテイメント系のセンターディスプレイは、そのサイズが8インチから10インチに拡大している。先代ではナビゲーションが標準装備であったが、今回はスマホのミラーリングで対応しているようである。これはソフトウェアのOTAに対応するもので、常に最新のソフトウエアを入手できると考えれば、こちらの方が良い。
次にメーターが、従来のアナログからデジタルディスプレイに変更された。見た目に新しいことと、ディスプレイの表示を好みに応じて変更できる点もプラス材料だろう。
プジョー リフターGT2つ目はシフトコントロール。従来はダイヤル式を採用していたが、今回はレバータイプ。使い勝手がどちらが良いかと言われると、まああまり変わりはないが、レバータイプの方がより一般的だから、他社から乗り換えたユーザーにとっては違和感が少ないかもしれない。
そして3つ目はACCにミリ波レーダーを採用したことで、ACCの性能が向上したこと。これはありがたい。
とまぁ、これが感じることのできた大きな違いである。気になる点としてはマルチパノラミックルーフとリアのシーリングボックスが廃止されたこと。これによって従来よりも大型の積載物を載せることができるとあるが、もともと日本ではリフターにしてもベルランゴにしても、商用バンとしてよりもピープルムーバーとしての使用の方が圧倒的に多いので、この二つの廃止は少なくとも日本市場だけを見ればネガな要素と感じた。
◆リフターの方がほんの少しだけ上級モデルな雰囲気
プジョー リフターGT試乗した印象としては、従来以上にスムーズな動きになったと感じた。GTを名乗るだけあって、相変わらずシートの形状はよりサイドサポートが大きそうな抉りの強い形状(ほんの少しだが)と、3D iコックピットを採用した結果、小径のステアリングが装備されて、ハンドリングもシャープに感じられる(感じられるだけかもしれないが)ことなどがベルランゴとの違いである。
それとドライブモードが装備されるが、リフターはエコ、ノーマルに加えてスポーツが用意されるのに対し、ベルランゴの方にはスポーツの設定はない。このモード切替による走りの違いは比較的顕著だから、横並びにして加速性能を競った場合はリフターの方が速そうだ。
全体的に見て、やはりリフターの方がほんの少しだけ上級モデルという装いと雰囲気を備えている。とはいうものの、価格にしてベーシックモデル比較では9万円リフターが高いだけ。こうなるとほとんど好みの問題という印象もあった。そうそう、言い忘れたが、従来ステアリングに隠れて使いにくかったACCの起動スイッチは、ステアリング上に移動しているからこれも進化の一つである。
プジョー リフターGT■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来47年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。
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