2024年11月に開催されたミラノショー2024(EICMA)では、各メーカーが競ってブランニュー&モデルチェンジを発表、世界中のライダーが注目を集めている。その中でも熱いジャンルがミドルアドベンチャー。ヤマハ「テネレ700」、ホンダ「XL750トランザルプ」ともに大きくアップデートされた、同排気量&同ジャンルの好敵手が揃った。会場でも確認できた、それぞれのモデルの最新仕様を確認したい。

  文/Webikeプラス編集部  

電スロ&電制フル装備の大型改良で一気に進化したテネレ700

 2016年にコンセプトが発表、2019年に海外で初登場したTénéré700(テネレ700)は、ラリーレイドなタワー型コクピットを持つミドルアドベンチャーだ。そのネーミングは1985年にまでさかのぼる、ヤマハのパリ・ダカールラリーへの挑戦機から由来。MT-07と共通する水冷並列2気筒689ccのCP2(クロスプレーン)エンジンを搭載しつつ、エンジン特性はオフロード走破性を重視した中低速寄りのセッティングが施されており、さらに16.0Lの大容量タンクと21インチのフロントホイールで高い踏破性と航続能力を持つ。2024年にはマイナーチェンジを受けており、この時ウィンカーのLED化、メーターの縦型フルカラーTFT液晶化が行われた。

 今回登場した2025年新型テネレ700は、初めて操作系統、足回り、外観に及ぶ大きなアップデートが果たされている。まずエンジンは最高出力73.4ps/8750rp、最大トルク6.93kg-m/6500rpmと、基本的なパワーは従来からそのままながら、吸気ダクトを改良し低速トルクアップを図るほか、スムースなシフトチェンジのためギアボックスの設計も見直された。また、新型MT-07と同時に電子制御スロットルを新採用。ライディングモード設定が可能となり、アグレッシブな「スポーツ」とトレッキング向きの「エクスプローラー」という2モードを選択可能となった。

 

 

 

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 シャーシは部分的に補強を受けたほか、足回りはサスペンションを前後ともに改良、φ43mmの倒立フロントフォークにはイニシャル調整機能を新採用、従来から調整可能だったリアショックと合わせ、フルアジャスタブルな仕様となった。さらにリアショックはセッティングとリンク機構を変更し、リザーバータンク付きに構造を変更。ピギーバック式を採用し、イニシャル調整が容易になっている。

 そして大きく印象を変えた外観は、従来通りのラリータワー風に縦長なロングスクリーンはそのまま、ヘッドライトのLEDが横長のスクエアタイプに変更。レンズは従来通り4眼だが、新たにY字型のマウントも採用され未来的なスタイルとなった。さらにタンク、シュラウドはスリムにリファイン、シートは一体型に変更され、ポジションの自由度を向上。従来型よりも流線形の細身なシルエットを獲得した。

 装備面では、従来からの縦型TFTメーターが6.3インチに大型化。従来未実装だったナビゲーションの表示など、機能も拡大している。もちろんスマホ連携機能も搭載、各種情報をモニタで確認できるほか、TypeCのUSBコネクタも装備されている。また、これらの機能拡大に伴って左ハンドルのスイッチはジョイスティックタイプが追加、さらに新型MTシリーズが備えるワンタッチウインカーや自動キャンセル機能も備えた。

 

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ヘッドライトが2眼に変化!パワフルなマルチパーパスモデルXL750トランザルプ

 機能充実したテネレ700に対し、ホンダが用意する対抗馬的なアドベンチャーモデルがXL750 TRANSALP(トランザルプ)だ。こちらは2023年に登場したばかりで、日本にも同年中に導入を開始。こちらもネーミングは1986年にまでさかのぼる、トランス・アルプス(アルプス走破)を意味するシリーズ名を冠する。トランザルプは歴代モデルともにオフ/オンともにこなせる設計のクロスオーバーモデルだが、現行のXL750トランザルプはオフロード性能を重視したキャラクター。フロントに21インチホイールを備え、サスペンションにはショーワ製43mm SFF-CATM (セパレート ファンクション フォーク カートリッジ) USD フォーク、リアに別体式リザーバータイプのショーワ製ショック(プリロード調整機構付き)を装備する、高い走破性を誇る。

 2023年発売という新顔だけあり、XL750トランザルプは既に主要な装備は最新鋭の水準を備えている。パワーユニットは755ccのSOHC4バルブ並列2気筒で、これは欧州で販売されているストリートファイター・CB750ホーネットと共通。パワーは67.5kW(91.7PS)/9500rpm、75N・m/7250rpmを発揮する。さらに電子制御スロットルは当初から搭載済で、HSTC (ホンダセレクタブルトルクコントロール) によってエンジンパワーやブレーキ、ウィリーコントロールなどを複合的にモードチェンジが可能。「スポーツ」「スタンダード」「レイン」「グラベル」の基本4モードと、ユーザーの自由設定モードが選択できる。

 

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 2025年新型では、このエンジンや操作系の機能はそのまま、外観と装備をアップデート。まずヘッドライトがエッジの効いた1灯タイプだったものが、デュアルLEDプロジェクターヘッドライトの2眼に変更され、CRF1100アフリカツインと同様の印象を形成。さらにサスティナブルな新素材「Durabio」製スクリーンを採用し、空力性の高い形状に見直されている。

 装備面では、従来からの5インチTFT液晶メーターが、カバーガラスとの間を樹脂で密閉する構造へ変更され、バックライトの透過率を向上。視認性も高められた。機能は従来通りで、Honda RoadSyncアプリを介したスマホ連携や、ターンバイターンナビゲーションの表示が可能。マルチファンクションなモニタ操作のために、左ハンドルバーのバックライト付き4方向トグルスイッチも続投する。

 

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オフ指向に強化されたテネレと堅実に進化するトランザルプが同価格帯で衝突? カワサキも新モデルで参戦か

 新型テネレ700、新型トランザルプは共に日本導入の可能性は高く、近日中のアナウンスに期待したい。ホイールサイズや車体重量といった基本的な要素にはあまり差はないが、ただしオフロードでの操作性という面では、改良されたサスペンションやプロポーションを備えるテネレ700の実力が気になるところだ。対して排気量のアドバンテージがあるトランザルプは、新スタイルで着実にアップデートを遂げているほか、兄弟モデルであるCB750ホーネットの日本登場の可能性も高く、国内での注目度は高まるだろう。双方ともに価格は未発表だが、イギリス仕様はすでに価格が発表されており、新型テネレ700は1万400ユーロ(約170万円)、新型トランザルプは1万532ユーロ(約172万円)でほとんど同じだ。国内でも同価格帯に落ち着くとすれば、自然、日本のファンにとっても気になるライバルとなるだろう。

 

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 さらにダークホースの存在がある。というのはホンダ、ヤマハのほか、カワサキも大型アドベンチャーらしき新モデルをミラノショー会場へ持ち込んでいたのだ。箱に覆われたそのモデル、今回正体は不明だったものの、21インチの大型ホイールやフェアリングを確認することができた。また排気量は不明だが「KLE EST1991」としてモデル名と「KLE500」が発売された年が表示されていたことから、KLEシリーズに連なる新型ミドルアドベンチャーが予想されている。こちらの続報も待ちたい。

 

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