失って初めて気づくことは多いもの。今のクルマ界にも、なくなったら困るものは多々あるはず。お金、タイヤなどストレートなもの以外のクルマ界の「なくなったら困るもの」を探ってみた!!(本稿は「ベストカー」2013年4月26日号に掲載した記事の再録版となります)

文:渡辺陽一郎、編集部

■激化する軽自動車0.2km/L単位の「燃費競争」

ワゴンRとムーヴ。燃費向上という意味では、この2台のライバル関係もなくなっては困る

 以前の企画では“イタチゴッコの戦い”とも表現してしまった、最近激化する軽自動車の燃費競争。手の平返しじゃないけど、この企画では「なくなったら困るもの」に認定したい。

 2011年9月、ダイハツミライースがJC08モード燃費30.0km/Lで誕生したが、その3カ月後にはライバル車のスズキアルトエコがわずか0.2km/L向上した30.2km/Lで登場。

 さらに2012年9月、スズキワゴンRが28.8km/Lの燃費で話題をさらったが、その2カ月後にダイハツはMCしたムーヴで29.0km/Lを叩き出した。

 こんな感じで、ここ2年間はスズキとダイハツで0.2km/Lの争いを展開しているが、それに今年、NMKVの新型軽自動車やホンダのライフも参戦!

 今やJC08モード30.0km/Lでないと勝負にならない軽自動車の世界になったが、これもチマチマした争い(失礼!)の積み重ねの成果。

 互いに切磋琢磨することで燃費値が向上していくわけ。財布にも地球環境にもとても優しいので、「軽の燃費競争」はやっぱりなくなったら困るのだ。

■国内外の自動車メーカー同士で結ばれる「業務提携」

 クルマ業界でこれから生き残るためには、やはりメーカー間の業務提携や技術提携などは欠かせないようで、国内外の自動車メーカーにとっては「提携=なくなったら困るもの」だろう。

 ここ数年でも、日産とメルセデスベンツ、トヨタとBMWなど話題を集める提携が多い。時代にマッチしたディーゼルエンジンや進化したハイブリッド技術など、互いが欲するものを得られる提携で、互いにメリットも生まれてくる。

 また、業界のなかで生き残っていくため、会社存続のために提携したり、傘下に入るという例だってある。

 ひと昔前を思えば、合点がいかない提携もあったりするが、互いの会社の英知が融合すれば過去にないすばらしいクルマが誕生することも今後ありうる。なので、ユーザーにとっても提携はあっていいもの、といえそうだ。

 そんななかで、ホンダは孤高の存在。こちちはこちらで独自路線で期待感はある!

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■メーカーにとってなくては困る!? 「ハイブリッドカー」

今のトヨタに、もしアクアやプリウスがなかったら……と思うとゾッとする

 2009年春、現行プリウスの爆発的ヒットを契機に、現在もハイブリッド(HV)と名が付くクルマは売れに売れる。今でこそ“ハイブリッドブーム”という感じではなくなったが、EVやPHVといった新しい技術が登場しても、やはり一般市場は「ハイブリッド(HV)」という言葉に弱く、買うならHV車を選択することが多いようだ。

 今年(2013年)2月のトヨタとホンダの、ガソリン車とHV車の販売台数と比率などの表があるが、それを見ても一目瞭然。

2013年2月の月販に占めるトヨタ、ホンダのHV車比率

 トヨタの場合、全販売台数に占めるHV車の比率は実に48.3%と、半分に迫る勢い。凄い! HV車の中でもプリウスシリーズとアクアが8割を占めているから、いかにこの2ブランドが強いかが明白だ。

 いっぽうのホンダは35.2%とトヨタほどではないが、計算上は3台に1台がHV車ということになる。

 この2社はもちろん、日産やスバルなども近い将来HV攻勢を仕掛けてくるはず。“販売を見込めるHV車”、多くの日本のメーカーにとって「なくなったら困る存在」、これ間違いなし。

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■これがないと商用に見えたりして……「ミニバンのエアロパーツ」

去年(2012年)10月に登場したヴォクシーの特別仕様車、ZS煌III。こんな仕様は欠かせないぞ

 ウィッシュのような背の低いミニバンは、外観がスマートな感じだが、セレナやノア/ヴォクシーなど、背の高いミニバンはパッと見て商用車風に見えたりすることも(ありますよね!)。

 ノーマル状態でアルミホイールもなしだと、いかにも実用車。そこでエアロパーツとアルミホイールを装着すると、見栄えは一変するから不思議。

 ワルっぽい印象ではあるが、生活感の漂うおとなしいファミリーカーの雰囲気は払拭される。なので、ミニバンにとってエアロパーツは、なくなったら困るものといっていい。

 なかでもセレナのハイウェイスター、ヴォクシーのZS煌IIIなどは人気が高く、一番の売れ筋グレード。少々お値段は高くなるがミニバンにはエアロパーツは不可欠だ。

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■ゼロになったら困る「マニュアルトランスミッション」

MTの醍醐味を味わう機会がなくなるなんて困ります!

 MTミッション。設定車が減るいっぽうだが、「なくなる=ゼロになる」と想像したら、そりゃ困る! 走行状態とエンジンの性格を考えて、ドライバーが適切な回転数とギヤを選んでクルマを走らせる。それこそがMTの快感。

 ヒール&トゥとダブルクラッチで回転を正確に合わせてシフトダウンすれば、実に滑らかに減速できて運転する喜びを実感。その操作感がなくなるのはクルマ界の大きな痛手だ。

 またMTで教習を受ければ、エンジンの持つ力が恐ろしいほど強いことや、エンジン回転と車速の関係などもわかる。若い方には、ぜひMT教習を!

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■自動車メーカー、なくなったら困る意外な部署

 もちろんどの部署も大切だと思うけど、質問にお答えいただいたのがホンダ。

「製作所の“設備管理BL(通称:設管)”ですね。普段は問題なく動いている工作機械たちに異常が発生した時、速やかに原因を究明し、生産ライン停止の時間を最小限に抑えてくれる部署です。生産遅れを少しでもなくすようにしてくれる、いわば縁の下の力持ち。

普段はぷらぷら歩いているように見えるが(笑)、異常が発生したら飛んできます。まさにスーパーマンのように。もし、この部署がなくなったらクルマは作れず、品質は安定しない。大変重要な部署ですよ!」

 スーパーな人の集まりですな。

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■買う側としてはなくなってほしくない「残価設定ローン」

約50%の残価で買えるN-ONE。支払いを考えると嬉しい!

 契約時に3~5年後の残価を設定し、残価を除いた金額ぶんを分割で返済する残価設定ローン。契約期間を終えても車両は自分の所有にならないが、月々の返済額を安く抑えられるコレは買うほうにも、売るほうにも「なくなると困るもの」といえるだろう。

 日本車はレクサスを除いて残価保証型だから、契約終了時に不人気車になっても、再査定で残価を減らされて精算が発生する心配はない(走行距離などの制限はある)。こんな部分もメリットといえ、残価設定ローンは受け入れられているのだろう。

 ちなみに、3年後の残価は一般的には新車価格の40~45%だが、ジューク、アクア、N-ONEなどは約50%。これらのように適度に個性があり、数年後の流通価値が高いと予想される車種が有利だ。

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■なくなったら困るもの「小さなことだけど大事です」編

・バックフォグランプ…欧州車にはVWポロのような低価格車でもリアフォグランプが付いている。それは86などの日本車にも用意され、ディーラーオプションで選ぶことも可能。ただむやみに点灯すると後続車を眩惑させる。濃霧の時を除くと通常は使う機会があまりないのが実状。

86のリアフォグ。夜間にバックする時はけっこう使える

 しかし夜間に車庫入れをする時などは便利。意外と明るいので、後退灯と併用すれば、クルマの後方がよく見える。濃霧時に使うものだが、意外な使い道があるもんだ。

・視野に入るボンネット…狭い道を曲がる時や車庫入れ、縦列駐車などの時、ボンネットが見えると運転がしやすいもの。運転に慣れてない女性は特にそう感じるはず。ボディの先端や車幅がわかりやすく、目安になるからだ。

 でも、最近はボンネットが見えるクルマが激減。構造上背の高い車種が増え、ボンネットが前方に向けて傾いているからだ。特にコンパクトカーではボンネットが見えないクルマばかり。意外にもカローラアクシオも見えない。逆にレガシィ、クラウン、86、軽自動車ではラパンなどが視野に入る。小さいことだが「視野に入るボンネット」、なくなったら困るといえそう。

・ドアに連動した室内灯…意外に便利なのが、ドアの開閉に連動して点灯する室内灯だ。本来の目的は夜間の乗り降りを容易にするためだが、それだけではない。ルームミラーの手前に室内灯が装着されたクルマであれば、半ドアになっている時、室内灯が点灯を続けているから即座に半ドア状態とわかる。メーター内部に警告灯のある車種も増えたが、室内灯のほうがすぐ視野に入るので便利。なくなったら意外と不便さを感じるに違いない。

ドアの開閉に連動して点灯する室内。室内を照らすより半ドア警告灯的な役割もあり

(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)

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