商用車メーカー各社が目指すレベル4自動運転は、高速道路の幹線輸送あるいは空港や物流施設、建築現場の構内物流など、さまざまなユースケースでの開発が進められている。
三菱ふそうが開発した追従型EVごみ収集車「eキャンター・センサーコレクト」もユニークなユースケースの1つといえる。
環境省の委託業務として実証実験が行なわれている同車は、現在二代目に当たる。初代と比べてどう進化しているのか?
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
追従型EVごみ収集車「eキャンター・センサーコレクト」とは?
三菱ふそうの追従型ごみ収集車「eキャンター・センサーコレクト」は、各自治体などが担うごみの収集作業において、作業者の後ろを無人で追尾させることで運転作業を省略し効率化・省人化を図るというコンセプトで、2020年に初代モデル(初代eキャンターがベース)が完成した。
同車は作業者を車両側で認識させて、リモートコントローラ(スマートフォン等)で指示を送ると、安全な距離を保ち低速で作業者に追従するというもの。
自動追尾は基本、高精度GPS(GNSS)を用いたルートトレースで行なわれているが、クルマなどの障害物を検知した際には自動でルートを作成・回避が行なえる。
住宅街などではごみ集積場が点在しており、現状収集作業においてはクルマの乗り降り、運転、作業を短い距離で繰り返すような業務が多い。
運転の手間を省くことは効率化・省人化だけでなく、巻き込み事故など危険が伴う収集作業において、作業に集中することで事故を防ぐといった目的にも有効な手段といえるだろう。
このセンサーコレクトは、現在、eキャンターの新型モデルをベースとした第二世代に進化し、環境省の委託業務として2022〜2023年にかけて川崎市や三菱ふそうの喜連川研究所(栃木県さくら市)などで行なった実証実験に投入された。
ニコンの高性能カメラを搭載した二代目
では、二代目はどう進化しているのか?
まず、新型ではLiDAR(レーザー走査式測距センサー)が廃止され、代わりにニコンとの共同開発で物体認識用に設計したカメラセンサーが採用された。
同カメラはフロントのサイドミラーステーに前方・側方検知用360°カメラを2基、リア上部に後方検知用180°カメラを2基備え、計4つのカメラにより、従来LiDARで行なっていた障害物検知を担うほか、ミラーカムとしても用いられ、同映像は室内のピラー部のモニターに表示される。
この変更は、赤外線を照射し周囲をスキャンするLiDARは太陽光に弱く朝や夕方に使えなくなるということがあったためで、信頼性を上げる目的で今回はカメラセンサーを採用したという。
また従来から引き続き超音波センサーも備わっており、こちらはカメラのバックアップ用とし、車両の周囲に12個(初代は16個)搭載したセンサーで、万が一障害物を見逃した際の安全性を確保している。
いっぽう、センサーコレクトでは車両が作業員を認識してからコントローラーによる指示で自動運転を開始するが、新型ではこの認識の精度が大きく向上。従来認識するまでに30秒近く要していたところ、作業員が運転席から降りた瞬間からマーキングできるようになった。
さらに、集積場の認識機能も搭載する。基本は作業員が集積場の前に立ち、指示を送ることで車両のホッパー(投入口)を作業位置に合わせて停車させるが、新型は集積場の認識機能により自動で作業位置を合わせて停止できるようになった。
また、これと合わせて自動で着車するとホッパーが自動で開く機能も追加。現状は安全上、ホッパーのカバーが開くのみだが、将来的には安全性を担保する機能を追加して、着車した瞬間にカバーが開いて塵芥装置が作動、すぐにでも作業開始できる仕組みを目指したいとしている。
センサーコレクトは、今年になって環境省の委託業務の継続が決まり、2025年の秋頃を目処に再び実証実験を予定している。
この実証実験では、高齢化の影響で近年日本でも普及し始めた戸別収集等、違うスタイルのごみ収集オペレーションをセンサーコレクトで試し、どれくらいの効果もたらすのかなどが試される見込みだ。
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