あおり運転や事故にあったとき、正確な記録を保存してくれるドライブレコーダー。「いざというときに備えてつけておきたいけれど、工賃は1万円以上するし、自分で取り付けようと思うと配線が難しくてちょっと…」と二の足を踏んでいた方に朗報だ。デイトナが展開するドライブレコーダーブランドMioからなんと、配線のいらない前後カメラつきドライブレコーダーが登場したのだ。それがMiVue MP30 GPS(以下、Mivue)。テストする機会を得たので、その機能性や実際の使い心地をお伝えしていきたい。
文/石川順一
GPSトラッキングつきの前後カメラドラレコ「Mivue MP30 GPS」
本体はご覧の通り、手のひらにおさまるコンパクトさでパンツのポケットにもスポっと入る。ちょっと厚めなことを除けばインカムっぽくもみえるが、それもそのはずで、これはバイク側に設置するのではなく、ヘルメットに固定するタイプだ。インカムとの共用を考えているためか、設置位置はヘルメットの向かって右側が基本となっている。
同梱品は本体とマウント、マニュアル以外に、充電用のUSB-Cケーブルのみといったシンプルな構成。電源アダプタ自体は付属しないものの、手持ちのスマートフォンの充電器やモバイルバッテリーからの充電が可能だ。余計な専用充電器が家に増えないというのは、地味にうれしい。記録媒体はMicroSD、32GB~256GBまで対応。最長で11時間弱も記録できる。とはいえ記憶容量が満杯になっても、古い映像から上書きして記録を続けてくれるループ録画が基本なので、ツーリングの思い出を残すことが主な用途でない限りは、少なめの記憶容量でもいいかもしれない。
気になるバッテリーは3200mAhで、稼働時間は約4~4.5時間というのがメーカーの公称値。筆者が使用してみたところ、ちょくちょくつけ外しをしていたせいもあるかもしれないが、3時間強で20%以下で、ちょっと心もとない感じだった。バッテリー残量の確認方法も、慣れが必要そうだ。本体のインジケーターと振動で知らせる設計なため、ヘルメットを装着した状態だと、他の機能との区別がちょっとつきづらかった。もちろん振動の仕方がそれぞれ違うので、数日使っていれば判断がつくようになるだろう。
マウントの着脱でON/OFFできちゃう!
もっともMioのヘルメット固定型ドライブレコーダーは、これが初というわけではない。それが、アクションカム的に使えるという触れ込みで2020年に登場したM777D。こちらは前後カメラつきという面ではよく似ているが、実はヘルメットマウントで使えたのは前カメラのみで、後カメラは配線が必要かつ車体固定するタイプだった。前後カメラどちらも配線不要で使えるのは、Mivueが初だ。
加えて、さまざまな面でアップデートが施されている。まず触れたいのは、その起動の手軽さ。ヘルメットに固定したマウントへ、本体をカチッというまで押し込むだけで電源がONになり、録画が自動で開始される。なにかボタンを押したり、余計な操作をする必要が一切ないのだ。電源のOFFにしても、マウントから本体を外すだけで済む。
ただし、マウントの取り付け位置には要注意。えいやとなんとなく設置してしまうと、画角が斜めになってしまったりするからだ。なるべくヘルメットに対して本体が水平になる位置を見つけてつけるようにしよう。専用のスマートフォンアプリMivue Proを使えば、リアルタイムのカメラ映像を見ながら位置を調整できるので、両面テープの剥離紙を剥がす前に確認しておこう。筆者はこれを怠ってしまったため、常に首を斜めに傾けているかのようなカメラ映像になってしまった。
上下角に関しては、マウントが回転するので心配ご無用。オフ車のように骨盤を起こして乗るときでも、スーパースポーツのようにキツめの前傾に構えて乗るときでも、カメラを回転させれば進行方向に合わせた角度を実現できるというわけだ。
2K映像とセンサーで安心の”記録”
肝心のドライブレコーダーとしての機能も充実。一般的なドライブレコーダーでは解像度が1920 x 1080である場合が多いのに対し、Mivueは2560 x 1440まで対応している。加えて、映像の滑らかさを表しているフレームレートも最大で58fpsと一般的なドラレコの倍近い数値だ。解像度とフレームレートは、アプリMivue Proを介せば、2560 x 1440/ 29fps、1920 x 1080 / 58fps、1920 x 1080 / 29fps / HDR の3種類から選べる。
その実力やいかにと、走って試してみることにした。まずは走行時の撮影に一番適していそうだなと、フレームレートが一番高い1920 x 1080 / 58fpsをチョイス。録画した映像を見てみたところ…、見える見える。道中の看板はもちろんのこと、近くのクルマのナンバーもくっきり。2~3m離れたクルマのナンバーも、なんとか判別できるくらいだった。
さすがに夜間になるとライトで照らされていないところや、照らされていても反射してしまっている部分が多くなり、ナンバーの判断がつきづらい場面も多くなってきた。それでも1m以内のものや、停車時ははっきりと周りが確認できる状態だったので、いざというときも安心といえそうだ。
ところが、夜間の映像を確認していると、ちょっと気になるところが出てきた。1/2/3分のいずれかずつ区切りで録画を残すことができるのだが、30km/h以上で走行している映像のラスト5秒くらいに差し掛かると、画面が停まってしまうデータがちらほら出てきたのだ。もっともこれは、29fpsを採用している他の解像度では起きなかったので、高フレームレートであるがゆえに、画像処理と映像の保存処理で負荷がかかっているということなのかもしれない。いずれにしても、夜間の撮影では2560 x 1440/ 29fpsか1920 x 1080 / 29fps / HDR を使ったほうが無難そうだ。
事故時以外にも使えるイベント録画/GPS機能
さらに見逃せないのが、イベント録画機能だ。これは、Gセンサーで衝撃や転倒を検知すると、その時点から前後20秒の映像を上書きしないデータとして確保してくれるというもの。早速どこかの壁か電柱に突撃して…とはいかないので、いくつか衝撃やGを加える方法を試してみたところ、下記のような状況で映像の保存を開始してくれた。
- ヘルメットを持って振る
- ヘルメットをバシバシ叩く
- ヘルメットを被って頭を左右に大きく早く揺らす
いずれもGセンサーの感度設定は3段階から選べるが、”中”としたときのもの。このくらいでも動作してくれるとは…。いざというとき、かなり安心できそうだ。本体に設置されているボタンを1回押すだけでもイベント録画は起動できるので、あおり運転等のトラブルに遭ったときにも使えるだろう。
ただ設置場所の関係上、アクセル操作時に本体のボタンを押すことは困難。気になるお店や風景を、イベント録画するといった使い方には向いていない。そんなときに役立つのがGPS機能だ。自分が巡ったルートを映像ごとに記録してくれるので、アプリ上で風景と一緒に場所を確認するといった使い方もできる。さらにトリップラプスという動画容量圧縮機能をONにすれば、1秒毎の画像で風景を確認できる。いわば1fpsの動画になるため、圧倒的にシーンの探索が楽になる。その分、動画はカクカクしてしまうので、どの機能を優先するかで使い分けたいところ。
ただし、トリップラプスの使用にはMicroSDのフォーマットが必須。出先で切り替えると、それまで記録した映像がすべて消えてしまうため、使用を考えているときは出発前に設定しておこう。
旧車勢/複数台持ちにもオススメなお値打ちドラレコ
ワンタッチ起動という手軽さに、必要十分以上の高画質、充実の機能性を実現したMivueの実勢価格は2万8000円弱。前後ドラレコとしてみるとかなりコスパ良好だ。録画開始まで電源ONから40秒程度待つ必要があったり、インジケーターがないのでバッテリー残量がわかりづらいといった面もあるが、そこに慣れてしまえばかなり良さげなパッケージ。バイクのバッテリーに負荷をかけなくて済むし、「カメラを設置すると雰囲気が崩れる」と導入をためらっていた旧車勢や、「一台一台つけるのも手間」と考えていた複数台持ちにもオススメ。ぜひ、その利便性を試してみてほしい。
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