西日本鉄道(西鉄)では、国土交通省が主導する『完全キャッシュレスバス実証運行』へ参画し、観光客やインバウンドの利用が多い一部路線で実施する。運用の詳細が決定しまようだが、救済措置もあるようだ。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■実証の目的と対象路線
完全キャッシュレスバスの定義は、運賃の支払いを現金以外の決済手段(キャッシュレス決済)に限定したバスということである。本実証運行は、福岡空港国際線ターミナルとJR博多駅を結ぶ路線と、福岡市都心部を循環するBRT路線の2路線が対象で、2025年2月28日(金)までの実証を予定している。
対象路線の車両には「完全キャッシュレス」である旨の周知のため、乗車口へのステッカー掲示やバス側面のLED方向幕への案内表示を行うとしている。
また2025年1月31日(金)までの期間限定で、当路線をnimocaですれば利用金額の5%をポイントバックする「nimocaポイント付与キャンペーン」を実施する。
同社では本実証運行を通じて、完全キャッシュレスバスの需要を見極めるとともに、持続可能な公共交通の実現に向けての課題把握や知見獲得を目指すとしている。
■完全キャッシュレスバスの実証運行
実証の目的は、完全キャッシュレスバスの運行実現に向けた課題把握や知見獲得だ。決済手段の多様化から現金を抜いた形になる。この点で熊本で実施される交通系ICカードの利用停止とは根本的に異なる。使えないのは原則として現金のみだ。
運行期間は2025年2月28日(金)まで。対象路線は2路線で、1路線は博多駅~福岡空港国際線の博多バスターミナル~福岡空港国際線ターミナル間。平日・土曜・日祝とも1日あたり74便の運行。2路線目は、Fukuoka BRT(連節バス)で、区間は天神・博多駅・ウォーターフロント地区である。便数は平日・土曜・日祝とも1日あたり83便。
使用できる決済手段は、交通系ICカード(nimoca、はやかけん、Suica、SUGOCAなど)、クレジットカードタッチ決済(Visa、JCB、American Expressなど)、各種乗車券(SUNQパスなど)で乗車できる。またmy route等のデジタルチケットも含まれるので、現金のみが使用できないということになるだろう。
■実際の利用方法
バスの利用方法は、原則として現金以外の前述の決済手段(キャッシュレス決済)で乗降する。ここからが西鉄が考慮した救済方法だ。現金決済ができないということは、車内で現金を取り扱わないということと同義であろうと思われた。
しかし、バス車内でのICカードへのチャージや両替は可能だろうだ。よってICカードの残高不足でも車内で現金によるチャージはできるようなので、ICカード乗車券でチャージ切れでも大丈夫そうだ。
もう1点気になるのは、両替も可能という点だ。もしICカードもクレジットカードも持っていないとすると八方ふさがりになるのだが、「現金しかお持ちでないお客さまにつきましては、従来通り運賃箱へ現金をお支払いください」としており、そのための両替なのかと思われる。
■知見の蓄積が大切
もっとも、実証実験で既存の運賃箱を取り去ることはしないので、チャージも両替機能も生きているのだろうから、知らずに乗ってしまったら最後ということがないように、あくまでも原則キャッシュレスというスタンスなのだろうか。結局は現金でも払えるのかということになってしまう。
この点は実証で知見を蓄積してほしいところだが、キャッシュレス決済にはスムーズな運賃決済による混雑の緩和や、現金を取り扱わないことによる運転士業務の軽減があると予測される。果たして完全キャッシュレスバスの告知で、どれくらいの現金乗客が存在するのかの統計を取ることは重要だ。
前乗り均一運賃先払いであれば、「現金は使えません」と乗車拒否してしまえば済むが、対距離制運賃で後払いだとそうはいかない。取りっぱぐれ対策にもなるのだろうか。
経験の蓄積がないので、すべてはこれからだが、完全キャッシュレスに移行するにせよ、従前の潔斎方法を継続するにせよ、乗客の混乱だけは避けなければならないだろう。
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