「水抜き剤は入れますか?」とはガソリンスタンドで以前よく聞かれたフレーズ。ガソリンタンク内には水が溜まるから定期的に水抜き剤を入れたほうがいいと聞いていたが、なぜ最近は聞かれなくなったのか……?
文/山口卓也、写真/写真AC、Adobe Stock
■そもそもフルサービスのスタンドが減少している
「水抜き剤は入れますか?」のフレーズは、今や少数派となりつつあるフルサービスのガソリンスタンドでかつて聞かれたもの。
2023年度の全ガソリンスタンド数に対するセルフスタンドの割合は、今や約40%にもなり、年々フルサービスのガソリンスタンドは減っている。セルフ化が最も進んでいるのは55.8%の神奈川県、次いで54.0%の埼玉県となっている(石油情報センター調べ)。
筆者は神奈川県在住だが、これでは「水抜き剤は入れますか?」を聞かれないはずだ。立ち寄るガソリンスタンドにスタッフの方は常駐しているが、すべてセルフ式なのだから。
あのフレーズは聞かなくなってしまったけど、「本当に自分のクルマに水抜き剤は入れなくて問題ないのか?」と思っている人も多いのではないだろうか?
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■ガソリンタンク内になぜ水が溜まる?
寒い冬、暖かい部屋の窓ガラス内側が結露して水滴がつくのを見たことがあるだろう。
筆者が学生時代に住んでいた安アパートもそうだった。これは部屋の内側と外側の温度差による結露、密閉性の低さが原因だが、金属製ガソリンタンクも同じような原理でタンク内壁に少量の水滴がつく。
この水滴と燃料は混ざることがなく、燃料より重い水滴はタンクの底に溜まり、タンク内壁についた水分は金属製タンクにサビを発生させる原因となる。
サビは燃料ポンプのフィルターなどを詰まらせてエンジン不調の原因となる場合も。また、燃料とともに水分がエンジンに運ばれて燃焼不良を起こしてノッキングを起こしたり、始動不良となることもある。
さらにタンク内に水滴が多く溜まると、最悪の場合はサビの進行によってタンクに穴が空いたりするおそれもある。そこで“水抜き剤”が必要となるというわけだ。
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■水抜き剤が効果を発揮するクルマもあるが……
●水抜き剤の成分はどんなもの?
水抜き剤の主成分は可燃性の液体であるイソプロピルアルコール。アルコールであるイソプロピルアルコールは水に混ざりやすく、エンジン内で燃焼することができる。
水抜き剤は水とガソリンをキレイに混ぜてくれる(タンク内の水を抜いてくれる)イメージがあるがそうではない。「少量の水(水滴)にアルコールを混ぜることでなんとか燃焼室内でガソリンとともに燃やしている」だけ。
ただ、水抜き剤には防錆剤を含むものも多くあり、サビの発生を防ぐ効果もある。
●現代のクルマにはほぼ必要ナシ!
欧米で1960年代に採用され始めた樹脂製燃料タンクだが、2000年代に入って日本車にも樹脂化の波がやってきた。
燃費向上に寄与する軽量化、形状の自由度の高さから樹脂化は進み、金属製タンクに発生するサビの心配は樹脂製タンクにはない。よって、現代のクルマであれば水分除去ではなく防錆の意味での水抜き剤はほぼ不要である。
しかし、2000年代以前のクルマ(2000年代以降の国産車にも金属製タンクを採用するクルマはある)、防錆処理を施していない金属製タンクのクルマであれば、水抜き剤によるある一定の効果はある。
不安な人はディーラーなどで水抜き剤が必要か不要かを確認しよう。
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■水抜き剤を使う場合の注意点
●水抜き剤には種類があるので要注意!
水抜き剤には燃料によって種類が用意されるため、水抜き剤を使う場合はガソリン車用か軽油車用かをまずはチェックしたい。また、自車の取り扱い説明書をよく読むと、「燃料添加剤や水抜き剤を使用しないでください」と書いてある車種もある。
水抜き剤の多くは満タン時に1本を注入するが、多く入れると「燃焼状態が良くなって性能アップ!」とはならないので必ず用量も守ること。
●サビの原因となる水滴を発生させないために
金属製タンク内の水滴によるサビは、タンク内に燃料がほとんど入っていない状態が長く続くと発生しやすい。樹脂製タンクであっても結露による水滴が気になるのであれば、給油時はできるだけ満タンにして結露が起こりにくい状態を保つといいだろう。
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■水抜き剤のデメリットはある?
水抜き剤は“燃料”ではないため、燃料に対して多く入れすぎるとエンジン不調の原因になる。
また、主成分がアルコールのため、入れすぎるとゴムや樹脂製の燃料ホースやパッキンを傷めたり、アルミを腐食させたり、黒煙が多く出ることもある。用法・用量を守って使用しないと、逆にエンジン不調の原因となるので要注意である。
いろいろ書いたが、水抜き剤は燃料タンク内のサビを防止して燃料フィルターの詰まりを防止する効果、冬期に発生する燃料パイプ内の水分の凍結を予防してパイプが詰まることで起こるトラブルを防止する効果もあり、寒冷地や湿気の多い地域ではある一定の需要があることも確か。
用法・用量を守って使うぶんにはほぼデメリットはないといえるだろう。
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