ベストカー本誌で30年も続いている超人気連載「テリー伊藤のお笑い自動車研究所」。過去の記事を不定期で掲載していきます。今回はランボルギーニ ウルス(2018年-)試乗です!(本稿は「ベストカー」2019年5月26日号に掲載した記事の再録版となります)

PHOTO/西尾タクト

■街を走っていても誰もふり向いてくれない……そんなランボルギーニ、ある??

ランボルギーニ初のSUVとして登場したウルス。ポルシェカイエン、ベントレーベンテイガとプラットフォームを共用。全長5112×全幅2016×全高1638mm、ホイールベース3003mm、車重2200kg

 ランボルギーニにはタブロイド紙のような魅力がある。政治経済と風俗の記事が一緒に載っている夕刊紙。そういう怪しさがランボルギーニのよさだと思っている。

 そういう意味で、ウルスは「意外と真面目だな」という印象を持った。

 ランボルギーニは1980年代に「LM002」という四駆を市販化しており、あの革命的なデザインに比べると、スーパーカーメーカーが作るSUVとして想定の範囲内に留まっている。

  LM002はもともと軍用車のチータを民生化したクルマで、「こんなクルマが街を走ってもいいのか?」という驚きがあった。

 勝手ながら、私はランボルギーニが作るSUVにはそういう驚きを期待していたのだ。ファンタジーと言い替えてもいい。

 ウルスのデザインは一見、過激に見えるかもしれないが、我々はすでにC-HRを知っている。「C-HRに似ている」というのは禁句なのかもしれないが、事実だからしょうがない(笑)。

軍用車「チータ」をベースに、1982年に市販化された「LM002」。これほどの衝撃を求めるのは酷だろうが「ウルスはわりと普通だな」と思ってしまった

 ランボルギーニといえば、ガルウイングだ。ウルスはなぜガルウイングにしなかったのか?

 テスラにできてランボにできない理由はないはずで、ランボルギーニはウルスを実用的なクルマにすることを重視した結果なのだろうと推測できる。

 その結果どうなったか。街を走っていても、誰もふり向いてくれない。そんなランボルギーニがあるなんて、乗ってるこちらがビックリだ!

 ウルスはもっと下品で、権力と戦うタブロイド紙のようなクルマにしてほしかった。もしも私がランボルギーニウルスを買ったら、どうドレスダウンしてやろうかと考えるだろう。

 昔のトランザムのように、ボンネットに巨大なランボルギーニの牛のマークを貼って、ボディサイドに価格をデカデカと貼り付けたい。

 日本円で「¥30000000」はストレートすぎるから、ユーロ価格で「236000€」とオシャレにキメるのはどうだろう。

 日本人特有なのかもしれないが、ランボルギーニはそうやって遊びたくなるのがいいのだ。

 エンジンは強力である。V8、4Lツインターボで650ps、最高速は305km/hというのだから、ランボルギーニの名にふさわしいムダいっぱいの性能だ。

■ランボに乗るのはお線香の煙を浴びるようなもの 御利益に理屈はないのだ!!

「それでテリー、ウルスの走りはどうだったんだ?」と聞かれても、私に乗り出し3000万円もするクルマの走りの評価などできるわけがない。

 ただ、御利益はありそうな気がする。

 浅草寺で線香の煙を浴びると清々しい気持ちになるようなもので、300円の食パンよりも2000円の食パンのほうがおいしいと感じるだろうし、コンビニの100円コーヒーよりスターバックスの1200円コーヒーのほうがありがたく思える。

 そんな「気がする」としか言いようがない。

 ただ、これなら誰でも運転できそうだなと感じたのは事実だ。

 ボディの大きさに尻込みするかもしれないが、慣れれば女性でも気軽に走らせることができるだろう。

■スーパーカーのSUV化は進むのか?

SUVの利点である着座位置の高さを活かし、巨大なボディのわりに運転しやすい。スーパーカーもこれからは我慢を強いないクルマが主流になるのか

 ランボルギーニウルスはどういうクルマなのかといえば、「ランボ好きが2台目に買うクルマ」というイメージが最もしっくりくる。

 アヴェンタドールを所有しながら、奥さんの誕生日プレゼントにウルスを買ってあげるというような人も現実に存在するだろう。

 妻のクルマにハスラーを選んだ私とあまりにも違う(笑)。

「驚きがない」だのなんだの文句を言ったが、結局のところ「ランボルギーニをポンと買える男に憧れる」というのは否定できない事実だ。

 今後はスーパーカーもSUV化が進むのではないかという意見もあるが、従来型の背の低いスーパーカーと背の高いSUVの両方が存在し続けるというのが現実的な予想だろう。

 平べったいスーパーカーはボディコンであり、あれに乗れるのは若い証拠である。

 肉体的にも精神的にも若くなければ乗り続けられないし、グッチの服にはそれに合う体型があるように、窮屈なスーパーカーに乗ることが自分の表現になる。それはこれからも変わらない。

 一方で、今の若い富裕層はスーツを着ないし、ネクタイもしない。昔ながらのスーパーカーのような不便なクルマにも乗りたがらないだろう。

 かといってロールスロイスではおじさんくさいし、ベンツもちょっと違うとなると、ウルスのようなスーパーカーメーカーが作る高価なSUVに行きたがるのもよくわかる。結局は共存していくことになるのだろう。

 ランボルギーニウルスは期待どおりではなかったが、欲しい人の気持ちはよくわかるクルマであった。

 というか、安い中古車ばかり買い漁っている私がどうこう言えるクルマではないということ。残念ながら、それが事実だ(笑)。

■テリー伊藤 今回のつぶやき

「こんなに注目されないランボルギーニがあるのか!」とびっくりしたが、理屈を超えた「御利益」は健在だった!

(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)

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