世界最大の車載電池メーカーである中国の寧徳時代新能源科技(CATL)は4月15日、2024年1~3月期の決算を発表した。同四半期の売上高は797億7000万元(約1兆6967億円)と、前年同期比10.4%減少。一方、特別損益を除いた純利益は92億5000万元(約1968億円)と同18.6%増加した。
「原材料相場の下落に連動する形で、バッテリーの販売価格も下がったためだ」。1~3月期の減収の要因について、CATLの経営陣は決算説明会でそう述べた。
とはいえ、電池の容量ベースで見たCATLの販売実績は伸び続けている。1~3月期の総販売量は約95GWh(ギガワット時)と、前年同期比25%以上増加。そのうち約8割を車載電池、約2割を(再生可能エネルギー発電などの電力を一時的に蓄える)蓄電システム用電池が占めた。
国内市場でシェア5割
中国の電池業界では近年、自動車市場の急速なEV(電気自動車)シフトや太陽光・風力発電所の建設ラッシュを背景に、車載電池や蓄電システムの需要拡大を当て込んだ新規参入や生産能力増強が続いてきた。
その結果、需要の伸びを上回るペースで供給能力が拡大し、電池業界は早くも過当競争に突入している。
にもかかわらず、CATLは(販売価格の下落による)減収を余儀なくされながらも増益を達成した。これは激しい価格競争の中でも市場シェアを拡大して販売量を伸ばし、スケールメリットを発揮した成果だ。
韓国の市場調査会社SNEリサーチのデータによれば、車載電池のグローバル市場における2024年1月から2月までのCATLのシェアは38.4%と、前年同期比5ポイント上昇。また、中国の業界団体のデータによれば、国内の車載電池市場における2024年1~3月期のCATLのシェアは48.9%と、同4ポイント上昇した。
車載電池のガリバーとして不動の地位を築いたCATLだが、その社名の認知度は一般消費者の間では必ずしも高くない。そんな中、同社はEVメーカーとの協業を通じて自社製品の「ブランド化」を図ろうとしている。
CATLは2024年1月、国有自動車大手の東風汽車集団の傘下にある猛士科技(M-Hunter)との戦略提携契約に調印。猛士科技のオフロードEV「猛士917」のボディに「CATLインサイド」と記したバッジを取り付けると発表した。
CATLは顧客企業の製品に社名入りのバッジなどを取り付け、一般消費者へのブランド浸透を図る。写真は中国の建機メーカー、龍工控股の製品に貼られたステッカー(CATLのウェブサイトより)さらに、通信機器大手の華為科技(ファーウェイ)が国有自動車メーカーの奇瑞汽車と共同開発したEVセダン「智界S7」や、同じくファーウェイが中堅自動車メーカーの賽力斯集団(セレス)と共同開発したSUVタイプのEV「問界M9」についても、車載電池を供給するCATLがプロモーションビデオを公開。その狙いは、「EVを買うならCATL製電池の搭載モデルを」と、一般消費者に印象づけることにある。
アメリカではフォードと提携
CATLにとっては、海外市場のさらなる開拓も重要な経営課題だ。同社の説明によれば、特にヨーロッパ市場での需要拡大を見込んでおり、ドイツに建設した電池工場は2024年中に収支均衡に達する予定だという。
本記事は「財新」の提供記事です。この連載の一覧はこちら一方、アメリカでは(バイデン政権が2022年8月に成立させた)「インフレ抑制法」に基づくEV向けの補助金の支給対象から、中国製電池が事実上排除された。しかしCATLは、アメリカ自動車大手のフォードの車載電池工場に技術と生産サポートを提供することで、アメリカ市場に地歩を築こうとしている。
「この(フォードとの)提携方式には、わが社の顧客の自動車メーカーだけでなく、ヨーロッパの電池メーカーも関心を示している」。CATLの経営陣は、決算説明会でそう自信を示した。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は4月16日
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