2024年3月中旬、ある報道が自動車界、いや、経済界を駆け巡った。日産とホンダが業務提携を結ぶという衝撃的なニュース。ホンダの三部敏宏社長と日産の内田社長によって行われた共同会見。急転直下の出来事だけに我々ユーザーも驚きを隠せないが、早速見ていこう。
※本稿は2024年3月のものです
文/ベストカー編集部、写真/HONDA、NISSAN
初出:『ベストカー』2024年4月26日号
■「戦略的パートナーシップの検討を開始」とは?
日産とホンダが業務提携を結ぶらしい……というニュースがメディアを駆け巡ったのは、2024年3月14日。
ある特定分野の業務提携(たとえば電気自動車用バッテリー購買分野など)なのか、資本提携を含むがっちりとした関係強化か、多くの報道関係者や市場関係者が注目するなか、日産とホンダ、両社長出席のもと記者会見を実施する旨の案内状が、翌3月15日、各メディアに届けられた。
「自動車の電動化・知能化時代に向けた戦略的パートナーシップの検討を開始」と銘打たれたニュースリリースが配布され、会見冒頭に日産の内田誠社長から、「すべてはこれから検討してゆきます」と語られた。以下、共同会見で語られた内容と今後の見通しを紹介したい。
■話し合いが始まったのは2024年1月から
ホンダ三部敏宏社長と日産内田社長による挨拶が終わると、両者は「百年に一度の自動車改革期」において、環境対応技術・電動化技術・ソフトウェア開発などの領域に関する強化が不可欠である、という市場分析を語った。
そこで日産・ホンダの両社の強みを持ち寄り、将来的な協業を見据えた検討が必要と考え、今回の合意に至ったという。
具体的には車載ソフトウェアプラットフォームの開発、バッテリーEVに関するコアコンポーネント、商品の相互補完など。それぞれの分野でエンジニアを入れたワーキンググループを組織して、話し合いや協調を進めていくという。
質疑応答での回答によると、両社長による話し合いは2024年1月頃から雑談レベルで始まっていた。
お互いに持っているものを持ち寄れば出来ることが広がる、ただこれ以上、話を進めるためには社外秘情報を取り扱う必要があり、MOU(Memorandum of Understanding/基本合意書)を結んだほうがいいだろう……ということになったそう。
そういった契約を結ぶのであれば、ある程度「話し合っていること」自体はオープンにしたほうがいいだろう、ということで今回の会見に至ったという。
■戦略的提携の意味と今後の見通し
「提携(のための検討開始)」の意義について、ホンダ三部社長は「従来のライバルだけでなく、新興メーカーにも対抗する必要がある」とし、日産内田社長は「2030年の時点でトップグループについていくためには、いま動く必要があると判断した」と語る。
2023年通年の日産のグローバル生産台数は約337万台(ルノー・三菱を加えると約660万台)、ホンダは同年約387万台で、この二社が組み合わされば、トヨタ(単体で約1077万台、グループで約1123万台)に次ぐ世界第2位の巨大連合になる。
「この検討が、資本提携まで発展する可能性は?」という質問に、「現時点では、今回の話し合いで資本提携の話はいっさい入っていない。ただ将来はわからない」とホンダ三部社長。
必要なところで、必要なぶんだけ組む、という狙いであり、もし両社の取り組みが発展してゆけば、将来的にありうるかもしれない、というニュアンスだった。
日産はすでに巨大グループの一員であるが、今回の提携検討によって、三菱自動車やルノーとの契約や役割分担に変わりはない、と日産内田社長。「日産にとってよりよい部品や技術がもたらされれば、それはアライアンス先にも共有されるでしょう」とのこと。
日本自動車史でも有数となる、伝統メーカー同士の巨大提携話。実態はまだまだ「これから」だが、今後大きな発展の可能性を感じる歴史的内容だった。
■「クルマの共通化」はあるのか……?
会見では「両社の商品は個性でいうと真逆に近いと思うが、そうした個性を打ち消し合う心配はないか」という質問が記者から飛んだ。
その点については両社長とも「今回の検討は、あくまでクルマ作りの土台部分のみの話。お客さまに直接関わる商品の個性まで変わる話になるのは、(もしそこまで進んだとしても)ずっと先」と明言した。
一部で「スカイライン タイプRとか出るのか?」と話題になったが、そういう話には当面ならなそう。ちょっと安心&残念。
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