2024年5月16日、ホンダは都内で「2024 ビジネスアップデート」を開催。電動化に向けた取り組みの方向性と財務戦略について、三部敏宏氏(取締役 代表執行役社長)が会見に立った。昨今、世界的に普及にブレーキがかかったBEVだが、ホンダはブレずに「2040年にBEV100%」を目指すという。

文/ベストカーWeb編集部、写真/ホンダ

■ハイブリッドで儲けた予算をBEVへ

 先ごろの2024年3月期決算発表(2023年4月~2024年3月)で、ホンダは営業利益1兆3819億円という過去最高益を叩き出した。これは2023年モデル以降のハイブリッド車(e:HEV)が利益率を高め(25%改善したとのこと。今後の投入モデルはさらに利益率が高まるそう)、世界的なハイブリッド需要の増加を受け、そのうえでの円安効果があっての結果といえる。

 このハイブリッドで得た利益を、ホンダは今後の「BEVシフト」へ全力で突っ込むわけだ(ホンダが計上する来期の設備投資費2879億円、研究開発費9646億円は、日本企業でトヨタに次ぐ投資額)。

 今回明言されたホンダの四輪車生産計画によれば、「2030年」時点でグローバルBEV+FCV販売比率は40%(200万台)、「2035年」で80%、「2040年」で100%を達成するとのこと。

 特に「2030年時点で40%、200万台」が驚きだが、その内訳は(会見での質疑応答によると)ざっくり「北米75万台、中国75万台、日本を含むアジアそのほかの地域で50万台」。昨年度(2023年)のホンダの四輪車グローバル販売台数は410.9万台だから、これをさらに伸ばしつつ、このうち4割をBEVにする……と。

 しかしホンダといえば、先日(2024年1月)、自社初の量産型電気自動車「ホンダe」の生産を終了したばかり。販売不振が理由だったが、そのうえでF1への復帰も発表したことだし、てっきり「BEV+FCV100%には、もうこだわってません。内燃機関も含めた全方位戦略でがんばります」と方針転換したものだと思っていたが……。

 以下は三部社長の会見での発言。

「四輪事業の電動化を取り巻く環境は、激しい変化に晒されており、北米、ヨーロッパでは”踊り場に差し掛かった”と言われ、いわゆる減速感が増しております。

 しかし、ホンダの掲げる2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、さまざまなアプローチがあり、モビリティの環境負荷ゼロに向けては、航空機や船舶などの大型モビリティにおいては航続距離の観点からSAF(Sustainable Aviation Fuel=持続可能な航空燃料)やe-fuel(合成燃料)などが有望視されるなど、多様なソリューションに対応していく必要があります。

 いっぽうで、二輪・四輪などの小型モビリティについては、ホンダは、”EVが最も有効なソリューションである”という考え方は変わらず、長期的視点で見ればEVシフトは着実に進んでいくと確信しています。

 足元の状況変化に捉われ過ぎることなく、2020年代後半以降に訪れるEV普及期を見据えた中長期的な視野で、強いEVブランド、事業基盤の構築が必要です。」

ホンダビジネスミーティング資料より。2030年までに7車種のBEVを投入

 ホンダは「BEVの開発へ邁進する」という姿勢を崩さないという(もちろんハイブリッドシステムの高効率化は進めるとのこと)。

 そのために「EVを普及させていくために魅力的なEVを投入します」という、大変もっともだけど一番難しいことをやろうとするホンダは、2026年に(先ごろ公開した)「SALOON」に近しい市販型BEVを北米で発表、それを皮切りに2030年までにグローバルで7車種のBEVを投入する。

ホンダの日本市場への投入計画。「交換用バッテリー」を4基搭載した小型シティコミューターを投入予定とのこと

 この商品戦略を見ると、日本市場はそれほど力を入れていないのかな…(日本市場向けの製品が見当たらない)とも思ったが、どうもそうではないらしい。上記とは別に、日本市場には2025年(来年!)軽乗用BEVとともに、交換式バッテリーを搭載するシティコミューター(MPP Micro Mobility)も投入予定だとのこと。

 ホンダの戦略は通用するのか。普及するのか。引き続き取材を続け、「商品」についての情報が入り次第、お届けします。

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