大型二輪免許を持っていれば、多くのライダーが憧れる1000cc超のリッタークラス。でも、最近は、600cc~900ccのミドルクラスもかなり充実しています。スーパースポーツからネイキッド、ネオクラシックにクルーザー、アドベンチャーなどのツアラー系まで、まさに百花繚乱! しかも、2024年には、ホンダのCBR650RやCB650RにE-クラッチ仕様が追加されたり、往年のWGPレーサーを彷彿させるヤマハXSR900GPなど、注目モデルが続々登場し、ラインアップはさらに拡大傾向です。
では、こうしたミドルクラスのバイクは、どういったライダーに最適で、どんなメリットがあるのでしょうか? 筆者の経験談も交えながら検証してみます。
XSR900GPやCBR650R/CB650R E-クラッチなど新型車も続々!
まずは、国車車を例に、600cc〜900ccクラスには、主にどんなバイクがあるのかを見てみましょう。
【スーパースポーツ・フルカウルスポーツ系】
ホンダ・CBR650R/E-クラッチ【2024新型】
カワサキ・ニンジャ7ハイブリッド【2024新型】
スズキ・GSX-8R【2024新型】
ホンダ・CBR600RR
ヤマハ・YZF-R7
カワサキ・ニンジャZX-6R
カワサキ・ニンジャ650
【ネオクラシック・ネイキッド系】
ヤマハ・XSR900GP【2024新型】
ホンダ・CB650R/E-クラッチ【2024新型】
ヤマハ・XSR900
ヤマハ・XSR700
カワサキ・Z900RS/SE/カフェ
カワサキ・Z650RS
カワサキ・W800
カワサキ・メグロK3
スズキ・SV650/650X
【ストリートファイター系】
カワサキ・Z7ハイブリッド【2024新型】
ヤマハ・MT-09/SP
ヤマハ・MT-07
スズキ・GSX-8S
カワサキ・Z900
カワサキ・Z650
【ツアラー・アドベンチャー系】
ホンダ・NC750X/750X DCT
ホンダ・XL750トランザルプ
ヤマハ・トレーサー9GT/9GT+
ヤマハ・テネレ700
スズキ・Vストローム800/800DE
スズキ・Vストローム650/650XT
カワサキ・ヴェルシス650
【スクーター系】
ホンダ・X-ADV
*【2024新型】=2024年登場の新型モデル
ご覧の通り、スーパースポーツ系やフルカウルスポーツ、ストリートファイターなどのネイキッド系、ネオクラシックにツアラー系など、ざまざまなジャンルのモデルがあります。
特に、2024年には、注目のブランニューモデルが続々と登場。例えば、ヤマハでは、1980年代のWGPマシンYZR500をイメージしたXSR900GPを発表(2024年5月20日発売予定)。ホンダは、マイナーチェンジしたCBR650RやCB650Rに新MT機構のホンダE-クラッチ仕様車を追加することも明らかにしています(2024年6月13日発売予定)。
また、カワサキでは、600ccクラスの車体に、世界初のストロングハイブリッド機構を搭載するニンジャ7ハイブリッドとZ7ハイブリッドの国内導入を決定(いずれも2024年6月15日発売予定)。
加えて、スズキでも、フルカウル775cc・2気筒マシンのGSX-8Rを2024年1月に発売しました。
ほかにも、ホンダのCBR600RRやヤマハのMT-09には、マイナーチェンジを受けた2024年型が登場するなど、各メーカーがラインアップの充実や強化を図っています。
ハヤブサからCBR650Rに乗り換えたワケ
近年、ますます存在感を増し、ユーザーも増えている600cc~900ccクラスですが、1000cc以上のモデルと比べ、どんなメリットがあるのでしょうか?
それは、まず、車格や重さが、日本人の体型にちょうどいいことだと思います。そして、これは、大型バイクの初心者が扱いやすいだけでなく、バイク歴40年以上のオジさんライダーである筆者も実感しています。
筆者は、2020年に、大排気量1300ccのスズキ・ハヤブサ(2代目の2008年式GSX1300Rハヤブサ)から、650ccのホンダ・CBR650R(初期型)に乗り換えました。理由は、恥ずかしながら、ハヤブサで度重なる立ちゴケを経験するようになったからです。
50歳も後半に差し掛かり、体力が衰えたのかもしれません。特にロングツーリングや、趣味であるサーキットのスポーツ走行からの帰りに(自走で往復していた)、自宅付近で疲れが出て、数度の立ちゴケを経験。ハヤブサも、乗ってしまえば意外に軽快なんですが、さすがに停車中の取り回しは重かったのです。なにせ、2代目ハヤブサの装備重量は266kgもありましたから。
ミドルサイズは車格や重さが「ちょうどいい」
そこで、後ろ髪を引かれるような思いも感じながら、思い切ってCBR650Rに乗り換え。納車され、またがった瞬間に感じたのが、まるで400ccクラスのように感じたこと。理由は、ハヤブサと比べると、車体がかなりコンパクトで軽かったことです。
2代目ハヤブサのボディサイズは、全長2190mm×全幅735mm×全高1165mm、ホイールベース1480mm(国内仕様の数値)。
対するCBR650R(初期型)は、全長2120mm×全幅750mm×全高1150mm、ホイールベース1450mm。
特に、CBR650Rは、ハヤブサと比べ、ポジションがコンパクトだし、車両重量も207kg(初期型の数値、新型は209〜211kg)。初心者や女性ライダーには、200kgの車体を重く感じる人もいるでしょうが、ハヤブサの266kgと比べると、成人男性の1人分は軽いんです。
特に、身長165cmの筆者にとって、ハヤブサはポジションが大柄で、ハンドルも遠目。渋滞路などでの低速走行やUターン時は、車体の重さもあり、コントロールに細心の注意を払わないといけませんでした。
一方、CBR650Rは、セパレートハンドルながら前傾姿勢もさほどきつくなく、低速走行でもバランスが取りやすく、あまりふらつくことはありません。
ロングツーリングなどでも、常に扱いに気を遣うハヤブサほど疲れを感じず、よりバイク旅を楽しめているといえます。そんな効果からか、購入して4年目には、走行距離2万800kmを超えるほど、以前よりもバイクに乗る時間が増えました。12年間所有したハヤブサで走った距離を、軽く超えそうな勢いです。
筆者にとって、若い頃は「速いバイクが正義」。でも、この年になると、「軽いバイクが正義」という意識に変わってきていることを実感しています。
ちなみに、ハヤブサに乗っていた時代、ツーリング先で、よく同年代か、年齢がさらに上のご同輩(ハヤブサ乗り)に出くわすことがありました。
そんな時、度々話題に出たのがやはり立ちゴケ。特に、久々にバイクに乗るリターンライダーの方には、若い頃と同じ感覚で「乗れるだろう」と購入したはいいけれど、思いのほか重いなどで、立ちゴケを繰り返してしまう人も多いようです。
ハヤブサに限らず、大柄で重いバイクを扱いづらく感じるのは、筆者だけではないということですね。
100PS前後の扱いきれるパワーが「ちょうどいい」
CBR650Rの最高出力は、95PS/12000rpm。2代目ハヤブサ(最高出力197PS)や最近の200PSを優に超える1000ccスーパースポーツなどと比べると、100PS前後少ないパワーです。でも、筆者にとって、実は「ちょうどいい」パワーだと感じています。
もちろん、超パワフルなハヤブサの加速感は、かなりエキサイティングです。最近、3代目の現行ハヤブサにも試乗する機会がありましたが、圧倒的な動力性能は変わらずで、感動的でもありました。
でも、日本の公道では、200PS近いパワーを使い切れる場所はあまりないのも事実。高速道路での合流や追い越しなどでも、CBR650Rの95PSで十分な加速を得られます。また、山道などの長い登り坂などでも必要十分といえるでしょう。
もちろん、トルクフルなハヤブサなど大排気量バイクの方が、ロングツーリング時に高速道路を巡航するときなどは楽。あまりギアチェンジをせずに、6速トップをキープ、もしくは1段落として5速で走れることが多かったですし、回転数もあまり上がらないため、振動も少ないといったメリットもあります。追い越しなどの加速時に、4速まで落とす場合もあるCBR650Rと比べると、高速巡航などで快適なのは間違いありません。
特に、ハヤブサは、車体が重いこともあり、ブレーキをコーナーのかなり手前でかけていました。それに比べると、より軽いCBR650Rの場合、ブレーキングポイントもかなり奧に取れるようになりましたし、コーナーを曲がる時の軽快感も全然違います。
ちなみに、筆者は、ヤマハの1000ccスーパースポーツ「YZF-R1」に、袖ヶ浦フォレストレースウェイ(千葉県)という、タイトコーナーも多い1周2436mのサーキットで試乗したことがあります。
ヤマハMotoGPワークスマシン「YZR-M1」のテクノロジーが投入された憬れの1台。しかも、車両重量は201〜202kgと、CBR650Rより軽くできています。
でも、正直にいえば、最高出力200PSのパワーと軽い車体などが生む動力性能は、筆者にとって異次元。あまりの速さに目が追いつきませんでした。コーナー出口の加速が鋭すぎて、あっという間に次のコーナーが迫り、そこをクリアするとまたすぐに次のコーナー。その連続に、目や体が徐々に対応できなくなった記憶があります。
余談ですが、同年齢のバイク店社長で、若い頃にレース経験もある知人も、同様に、「1000ccスーパースポーツでサーキットを走ると目が追いつかない」といっていました。筆者も知人も、16歳で免許を取り、ずっとバイクに乗り続けていますし、ましてや知人は元レーサー。サーキット経験豊富なライダーでも、年齢には勝てないということですね。
600ccクラスなら100万円台からある。値段も「ちょうどいい」
CBR650Rは、筆者にとって、価格面でも「ちょうどいい」バイクだといえます。
現行モデルの3代目ハヤブサは、価格(税込み)215万6000円。また、1000ccを超えるスーパースポーツや高級ツアラーなどには、240万円台〜300万円台のモデルもあります。
一方、600ccクラスのバイクであれば、100万円を少し超える程度で買えるモデルも多いため、お財布にはより優しいといえます。筆者が乗る2020年式CBR650R(グランプリレッド)の車両価格は、税込みで108万9000円でした。新型でも、E-クラッチなしのスタンダード仕様で110万円、E-クラッチ仕様車が115万5000円〜118万8000円です。
ほかにも、600ccクラスでは、100万円台〜120万円台といった価格帯のバイクも多く販売されています。もちろん、より排気量の大きい900ccクラスになると、例えば、ヤマハの新型XSR900GPで税込み143万円、根強い人気を誇るカワサキのZ900RSシリーズでは、148万5000円〜170万5000円と高くなりますが、いずれにしろ、200万円以下で購入可能です。
もちろん、例えば250ccなど、より排気量が小さいクラスの方が価格は安いですよね。スクーターなどモデルによっては30万円台〜40万円台、スポーツモデルになると50万円台〜90万円台とやや高いですが、車検がないから維持費は安くなります。
でも、やはりミドルクラスのバイクの方が、走りなどに余裕があるのも確か。好みやスキル、体格や収入などには個人差があり、一概にはいえないため、あくまで私見ですが、予算と走りのバランスが「ちょうどいい」クラスのひとつが、600cc〜900ccのモデル群ではないかと思います。
大型バイク初心者にもおすすめな理由
以上、主に筆者の体験から、オジさんライダーにとって、600cc〜900ccミドルクラスのバイクがいかに最適かを紹介しました。
でも、これもあくまで私見ですが、ここで紹介したメリットは、大型バイクを取得したばかりの若い初心者ライダーなどにも、当てはまることが多いのではないでしょうか。
まず、1000ccオーバーの大型モデルと比べ、車体がコンパクトで軽い点。若いライダーであれば、筆者よりも体力はあるでしょう。でも、これも個人差はあるでしょうが、大柄なバイクの扱いに慣れていないと、例えば、細い路地などでの低速Uターンや、狭い駐車場での取り回しは大変です。
特に、筆者のように身長160cm台の小柄なライダーや、重いモノを押したり引いたりするのが苦手な女性ライダーには、重いバイクはハードルが高いもの。そうしたライダーにとっては、まずはより軽いミドルクラスのバイクで慣れてから、1000cc超のバイクにステップアップした方がいいかもしれません。
また、パワー面も同様。250ccや400cなどのバイクでは、例えば、フルカウルモデルのホンダ・CBR250RRで最高出力42PS。普通二輪免許で乗ることができる最大排気量を持つ同じホンダのCBR400Rでも、最高出力は45PSです。
そんなバイクに乗っていた人が、大型二輪免許を取ったからといって、いきなり200PSを超す1000ccスーパースポーツなどを上手く操るには、かなり慣れが必要になるといえます。まずは、100PS以下、よりハイパワーでも120PS程度までの600cc〜900ccクラスに乗って、慣れるほうが安全ではないでしょうか。
そして、価格面。もちろん、予算さえあれば、どんなに高いバイクでも買えます。でも、特に、学生や社会人になりたてなどの若い世代は、200万円を超える価格だと、なかなか手が出しにくい人も多いでしょう。
また、ベテランライダーでも、子育て費用や住宅ローンなどで、あまり大きな出費ができない人もいるはず。そうしたライダーたちにとっても、600cc〜900ccのバイクは、比較的に手が出しやすい価格帯なのだと思います。
近年、各メーカーがミドルクラスのラインアップ強化を図っている背景には、ここで挙げたように、大型バイクの初心者からベテランまで、幅広いライダーに最適なことも理由のひとつなのかもしれませんね。
自分のスキルや体格、好みに合った排気量のバイクが結果的に楽しい
いずれにしろ、自分がどんなバイクに乗るかは、基本的に、免許さえあれば個人の自由。だから、大型二輪免許を取ったばかりの初心者などが、いきなり大排気量バイクに乗ってもいいのは当然です。
ただし、自分のスキルをはじめ、体格や体力にマッチしたバイクに乗ることは、安全にも繫がります。もちろん、1000ccを超える大排気量バイクが持つ高いハードルを乗り越えて、自在に乗りこなせるようテクニックを磨くこともバイクの醍醐味です。
でも、それは、自分が怪我をしたり、周りに迷惑をかけない範囲でのこと。これからバイクを選び、購入を考えている人は、参考にしてもらえれば幸いです。
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/374804/
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