クルマと道路は切っても切り離せないもの。交通ジャーナリストの清水草一が、毎回、道路についてわかりやすく解説する当コーナー。今回は、圏央道にオープンした新たな休憩施設の課題について考察する!

文:清水草一/写真:フォッケウルフ/資料:NEXCO東日本、関東地方整備局、坂東市

■新たに誕生したパーキングエリア

 4月23日、圏央道に新たなパーキングエリア「坂東PA」がオープンした。坂東PAは、東北道(久喜白岡JCT)と常磐道(つくばJCT)のほぼ中間に位置する。

まずは内回りのみ先行して開設された坂東PA

 圏央道の東側区間(東北道より東側)は、PAが少ないことで有名だった。菖蒲PA(埼玉県久喜市)より東は、約76km先の江戸崎PA(茨城県稲敷市)までPAがなく、首都圏の高速道路では稀有な「恐怖のトイレ空白地帯」と言われていた。

 坂東PAは、菖蒲PAと江戸崎PAのほぼ中間。これでトイレ難民の発生を防げるかと思いきや、実際に行ってみるとそうでもない。

 まず、坂東PAは内回り側だけの片肺発進で、外回り側には未設置だ。現場は暫定2車線を4車線に拡幅する工事中。増設される外回り側は、4車線化されてから(2025年~2026年度予定)設置が予定されている。

 オープンしたばかりの坂東PAは、新設だけにとてもキレイだが、トイレと自販機のみの簡易型施設で、過疎路線レベル。隣接地にハイウェイオアシスの建設が始まっているのが救いだ。

坂東PAに隣接して整備される予定の「坂東PAハイウェイ・オアシス」イメージ。茨城県初、圏央道初のハイウェイオアシスとなる

■過疎路線状態を打破する4車線化!

 圏央道東側区間のPAは、江戸崎PAと高滝湖PAも、同じくトイレと自販機のみ。建設が決まっている神崎PA(2025年度オープン予定)や山武PA(オープン未定)も同様だろう。ただ神崎PAは道の駅に隣接しており、PA開設とともにハイウェイオアシス化される予定になっている。

4月23日に新設された坂東PA(内回り)は、トイレと自販機のみの簡易型

 圏央道東側区間は、現状、大部分が暫定2車線で、PAは簡易型。まさに首都圏の過疎路線だが、東北道(久喜白岡JCT)―東関東道(大栄JCT)間は4車線化工事が進捗中で、これが完成する頃にはハイウェイオアシスも2か所でき、幹線高速並みになる。それまでの我慢である。

 この区間の交通量は、平均して2万台/日前後(最大で久喜白岡JCT―幸手間の3万5657台/日)。4車線化されれば、交通容量にも大きな余裕が生まれ、快適な高速になるだろう。4車線化の完成予定年度は以下の通りだ。

<久喜白岡~幸手> → 4車線化済み
<幸手~五霞> → 2024年度
<五霞~境古河> → 2025~26年度
<境古河~坂東> → 4車線化済み
<坂東~つくば中央> → 2025~26年度
<つくば中央~つくばJCT~牛久阿見> → 2024年度
<牛久阿見~阿見東> → 2025~26年度
<阿見東~稲敷> → 2024年度
<稲敷~大栄JCT> → 2025~26年度

■西側区間は物流路線として盛況だが?

 一方、東北道(久喜白岡JCT)から東名(海老名JCT)までの圏央道西側区間は、様相がまったく異なる。沿道には巨大物流施設が林立し、交通量は6万台~8万台/日に激増。この数字は、同じ4車線の中央道(八王子JCT付近)を大きく上回っている。

 圏央道西側区間は、開通当初から4車線だが、近年の交通量の激増によって、平日でも自然渋滞が頻発している。なにしろ交通量の半分を大型車が占めるという、新東名をも上回る物流路線なのである。

 が、物流高速の割には、休憩施設は非常に小ぶりだ。

<内回り>
菖蒲PA 大型52台/小型86台
狭山PA 大型55台/小型70台
厚木PA 大型54台/小型69台
<外回り>
菖蒲PA 大型51台/小型88台
狭山PA 大型65台/小型59台
厚木PA 大型42台/小型76台


圏央道西側区間の狭山PA。交通量を考えると、駐車可能台数はとても少ない

 東名高速・足柄SAは、圏央道西側と同程度の交通量(約8万台/日)で、大型260台/小型517台の駐車能力を持つ。圏央道西側のPAの約5倍の規模で、施設の充実度も比べ物にならない。

 圏央道はレジャー利用が少ないなど、東名とは使われ方がまったく異なるので、さすがに東名と同レベルの施設は必要ないが、自然渋滞が頻発するうえにPAも小さくて余裕がないのでは、利用者にとっては砂漠だ。

 圏央道西側区間は、本来なら6車線への拡幅が必要だが、現状、計画すら存在しない。計画されたとしても、トンネルが多いため、着工から完成まで10年から20年は必要だ。せめて、比較的簡単に実現できるPAの拡張を行うべきである。

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