プロショップで音の進化を体験できるデモカー。愛媛県のサウンドカーペンターにカーナビのみを交換してDSP調整によるサウンドを体験できる車両(ダイハツ『ミライース』)が用意されていたのでクローズアップした。エントリーユーザーにもわかりやすい試聴を実践しよう。

◆純正のフルレンジスピーカーを使って
タイムアライメントを調整する効果を体感

前回からお伝えしている愛媛県にあるサウンドカーペンターのデモカーであるミライース。純正スピーカーをそのまま利用して、カーナビのみを楽ナビに交換したという、ごくベーシックなシステムながら、カーナビ内蔵のDSP調整機能をプロショップの技術で駆使することで大きくサウンドが変貌することを体感できるデモカーとなった。エントリーユーザーにも取っつきやすい、手軽なクルマによる音質改善を体感できる車両なので要注目だ。

後編では、どんな調整機能を活用してどのようなサウンドを実現しているのかについて紹介して行くこととした。先にも紹介した通りミラ イースに取り付けられているのはカロッツェリアの楽ナビ(AVIC-RL820)だ。DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)内蔵していることが魅力のモデルもである、同社のスタンダードモデルだ。

ミラ イースに施されているカーナビ内蔵のDSP調整で真っ先に取り上げたのは“タイムアライメント”だ。スピーカーは純正のフルレンジユニットがドアに取り付けられている。そのためタイムライメントでの調整は左右のみ(リアスピーカーも調整してあるが今回は鳴らさない設定として特に言及しない)。

そもそもタイムアライメントとは、スピーカーから音の出るタイミングを調整する(遅らせる:ディレイとも呼ばれるのはそのため)機能。クルマの運転席は車体の中央から右側にズレている、そのため左右のスピーカーからの距離が偏ってしまう。運転席に座ると右のスピーカーは近く、左のスピーカーは遠くなる。当然右のスピーカーの音が早くリスナーに到達してしまうことになる。そこでタイムアライメントを使って右のスピーカーの音の出るタイミングを遅らせることで、左右のスピーカーの音のタイミングを合わせることができるのだ。調整した音を聴くとドライバーの目の前にピタリと音の中心が現れる気持ちの良いサウンドの変貌しているのがわかる。純正ではまず体験できないこの音を体感するだけでDSP調整の大切さが実感できるだろう。これが純正スピーカーをそのまま使ったミラ イースでも体感できるのだ。

◆帯域ごとの調整が可能はイコライザー
高域の伸びやボーカルの厚みなども調整可能

DSP調整の機能には他にも重要な調整要素が用意されている。そのひとつがイコライザーだ。今回取り付けられていた楽ナビに搭載されているイコライザーは13の調整バンドを備えている。これは低域から高域(50Hz~12.5kHz)の帯域を13個に分割して、それぞれの帯域の強さをプラス/マイナスするのが役目だ。

具体的には高域が弱い、中低域が強すぎるなど、未調整の状態だと車内の形状や吸音、反射の影響もあり周波数帯域ごとの音のバランスは崩れていることがある。実際に未調整の状態で試聴すると低域が強い、高域が弱いなどと感じることもあるだろう。そんな場合には低域を下げ、高域を持ち上げる方向で調整すると言った使い方だ。そうすることで、再生する曲が録音時に本来持っていた音のバランスを車内で再現でき、曲がよりリアルに原音に近い形で再生されるようになるのだ。

さらに具体的な例として紹介すると、例えばイコライザー調整によってバランスが整うことでボーカルがぐっと前に出てきたり、高い音が抜けるように伸びてくるなど、さらにはベース音の厚みがアップして安定感が出てくるなどもメリットだ。これらの変化は今回のミラ イースのシステムのように純正スピーカーを使っていても感じられるのだ。

DSPには他にも機能がある。例えば前後方向の音の強さを調整するフェダーを使うことも多い。ミラ イースは純正でフロントドア/リアドアにそれぞれスピーカーが取り付けられている。当然同じ音が前後から聞こえてくるのだが、ドライバーが一人で乗る際にはフェダーを前に振ってリアスピーカーの音をカットしてしまうことも多い。フロントスピーカーだけの音を聴くことでフロントスピーカーから出た音だけを聴くことでクリアさを引き出すこともできる。

◆大画面カーナビの加工取り付けも可能
プロショップの守備範囲の広さも実感

このように純正スピーカーのままでもカーナビによるDSP調整次第で音のレベルアップは体感できることがわかった。オーディオのシステムアップを実施する際に、何を重視するのかを判断する上でもサウンドカーペンターが用意するこのデモカーは非常に興味深い車両になった。

そんなミライースを見ていると、DSP調整以外にもオーディオプロショップならではのメリットが見えてきた。そのひとつがカーナビの“加工取り付け”だ。ミラ イースは純正状態でダッシュボード中央部にナビ取り付け部があるが、ここに取り付けられるのが7インチ画面のモデルまで。しかし取材した車両には8インチ画面の楽ナビが取り付けられていた。これはショップでナビ周辺のダッシュパネルを加工して開口部を広げ、さらに取り付け金具も治具を作ることで対応させている。取り付けられたスタイルはごくスマートで、もともと8インチ画面のナビが取り付けられる車両であるように見える美しい仕上がりなのも魅力だ。

近年はカーナビの大画面化が進んでいるが、大画面ナビが取り付けられない車種もまだまだ多い。取り付けの際には「このサイズの画面取り付けられません」と断られる場合も多い。しかしサウンドカーペンターであれば加工による取り付けも視野に入れることで、ほとんどの車種に望みのサイズの大画面ナビを取り付けられるのだ。

今回はサウンドカーペンターで見つけたデモカー(代車として利用中)がオーディオ初心者にもわかりやすく体感できる車両だったので取り上げてみた。プロショップに出かければさまざまな発見がある、そのひとつが今回の調整機能による音の進化だろう。自分で体験することで納得した上でシステムアップするには、DSP調整をしたライトなデモカーを聴くのは非常に有効だ。しかも高級スピーカーを設置したクルマだと「スピーカーが良いから音が良いんでしょ?」と勘ぐってしまうが、今回のミラ イースは純正スピーカーなのでその問題も無く、純粋にDSP調整による音の変化を感じるには絶好。そんなオーディオ調整を自分の耳で確かめるためにデモカー試聴に出かけてみると良いだろう。

土田康弘|ライター
デジタル音声に関わるエンジニアを経験した後に出版社の編集者に転職。バイク雑誌や4WD雑誌の編集部で勤務。独立後はカーオーディオ、クルマ、腕時計、モノ系、インテリア、アウトドア関連などのライティングを手がけ、カーオーディオ雑誌の編集長も請負。現在もカーオーディオをはじめとしたライティング中心に活動中。

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