流麗なスタイリングで、サッシュレスの4ドアを持つピラーレスハードトップとして、一大ブームを巻き起こすほど大ヒットしたのがカリーナED。いっぽう、カリーナEDのライバルとして登場したのが1988年11月に登場したのがマツダペルソナ。しかし、3代目まで販売されたカリーナEDとは違い、たった3年で撃沈。そんな悲哀に満ちたペルソナを取り上げてみた。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカー、トヨタ、マツダ
■初代カリーナは大ヒットしたのだがペルソナ大失敗のなぜ?
1985年8月に登場したトヨタカリーナED。EDは英語のExciting Dressyの略語で、コロナクーペとともに、セリカの兄弟車として登場。傾斜した前後のピラーによりクーペのような低い全高を実現。後席の居住性は快適とは言い難かったが、スタイリッシュなデザインと4ドアの利便性を両立したモデルとして大ヒットした。
いっぽう、カリーナEDのライバルとして1988年11月に登場したのが、今回取り上げるマツダペルソナだ。カペラをベースとした4ドアピラーレスの4ドアクーペ(ハードトップ)、ペルソナは、ラウンジやリビングのソファーを思わせるリアシートが特徴だった。
車名のペルソナ(PERSONA)はラテン語で“人、個人”を意味する。「人の感性を大切にしたい」との思いを込めて命名された。 「インテリアイズム」ならびに「ビューティフル・クルージング」というキャッチフレーズの元、女優のイングリッド・バーグマンをイメージしてデザイン最優先で作られた。
ペルソナのスタイリングは柔らかいボディラインを基調とし、七宝を埋め込んだフロントオーナメント、凹型形状の大きなテールランプ、アーチ型のピラーラインなどが特徴。ファブリックのA仕様と本革シートのB仕様というグレードを用意し、またペルソナの姉妹車としてユーノス300も1989年10月に設定された。
初代カリーナEDとは違い、デビュー当初を除いて販売成績は振るわず、1990年3月にエンジンをDOHC16V化(115ps)するなどのマイナーチェンジを実施したが奮わず、ユーノス300も不振をきわめた。
1992年3月、残念ながらたった3年、一代限りで姿を消し、実質的な後継モデルとなるアンフィニMS-8やユーノス500などに道を譲ることとなった。
パワートレインは基本的にカペラからのキャリーオーバーで、140psの2Lと97ps(後に115ps)の1.8L、直4の2種類。トランスミッションはそれぞれに5速MTと4速ATを組み合わせている。
ペルソナは、日本車として初めて灰皿とシガーライターをオプションとしたクルマとしても話題になった。マツダが5チャンネル化で混迷していた時期と重なった不運はあるが、内外装の美の追求は今のマツダでも継承されていることからも、注目すべきクルマといえる。
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■発売当時のベストカーを読んでみると女性の意見が掲載
最後に、ベストカー1988年12月26日号に掲載されたインプレッション記事を紹介しておこう。
ペルソナのカタログの表紙をめくると、そこに大きく『インテリアイズム』と書かれている。これがどう具体化されているかはクルマを見ればわかると思うが、現実的にこのインテリアを女性がどうみるかを尋ねてみた。街で片っ端から女の子に声をかけ、ベルソナ(特に内装に)どんな反応をするか聞いてみたのだ。
「シンプルな室内ね。革を使っているみたいだけれど、あまり嫌みがなくていいんじゃないかしら」、「これ本当の革なの? 高いでしょう!?」。200万円程度で購入できるというと「ふーん。その割には高級感がありますね。カッコもいいし、次はこのクルマにしようかしら。名前はなんていうの?」「豪華マンションのリビングルームにあるイタリア製のソファのようね」。
たしかにこのペルソナにTシャツのシートカバーや手縫いのクッションなどは似合わないだろう。あくまでもこのまま何も付けずに乗るのがよさそうだ。そして1日撮影につきあってくれたモデル嬢はこういった。
「凸凹のない局面を使った室内は好き嫌いがはっきりするかもしれないわ。でもペルソナのいいところは、女の子ってたいがいメカには弱いんだけど、そんな女の子でもスイッチがきちんと整理されていてひと目でわかるようになっていて使いやすそうね。黒のインパネにスイッチがたくさんついているより、ムードがあっていいんじゃないかしら」。
ちなみにベストカーでは「インテリアカー・オブ・ザ・イヤー」を主宰していたが、1988年に選ばれたのはこのペルソナだった。
現在、大手中古車情報サイトを検索すると、初代カリーナEDは7台流通し、中古車価格は68万~130万円。対するペルソナの中古車は1台も流通していなかった。ただただ残念、哀しすぎる……。
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