小林製薬(大阪市)の紅こうじ成分を含むサプリメントの問題は、関連が疑われる死者が5人出るなど、2015年に機能性表示食品の制度が始まって以来、最も大きな健康被害となった。消費者庁は制度の見直しに向けて有識者の検討会を設け、安全性を高めるための再発防止策を27日付の報告書にまとめた。 (河野紀子)  検討会で主に議論されたのは、(1)健康被害情報の報告ルール(2)製造、販売過程における安全性の確保(3)消費者への情報提供のあり方-の3点だ。

◆報告などの義務化提言

 これまで機能性表示食品の健康被害については、企業に情報が寄せられた時に「速やかに行政機関に報告する」とガイドラインで規定されているのみ。小林製薬は1月に医療機関から健康被害を疑う最初の連絡を受けてから、国への報告と自主回収まで2カ月かかり、被害が広がった。そのため、医師が健康被害の疑いがあると診断したケースは、企業からの報告を義務化するように提言した。  また、今回の健康被害が報告された錠剤やカプセル形状のサプリメントは、安全性の対策が必要と指摘。現在は「推奨」となっている製造工程や品質管理の基準(GMP)は、義務化すべきだとした。さらに、機能性表示食品以外のサプリメントの規制についても、今後検討すべきだとする委員の意見を付けた。  食の安全に詳しい奈良県立医科大公衆衛生学講座教授の今村知明さん(60)は「健康被害の報告と、GMPの義務化を提言したのは意味がある」と評価。機能性表示食品は、特定保健用食品(トクホ)と比べて開発コストが低く、急速に市場が拡大してきた経緯があり、「今回の問題を契機に、規制を徐々に強めて安全性を高めていくしかない」と話した。  消費者の理解不足も課題だ。昨年3月に全国の1万人を対象にしたインターネット調査で、機能性表示食品が「どのようなものか知らない」と答えた人が8割、トクホは7割に上った。今村さんは「トクホは安全性と効果を国が個別に審査しているが、機能性表示食品は審査していないといったことを知った上で、本当に服用する必要があるかを考えてほしい」と話す。  では、機能性表示食品を含めたサプリメントを服用する場合は、何に気を付ければいいのだろうか。  前提として知っておきたいのは、そもそも多くのサプリメントは、健康な成人を対象にした商品ということ。子どもや妊婦、持病のある人は注意が必要だ。

◆持病ある人は服用注意

 特に持病があって薬を飲んでいる場合、サプリメントによって薬の効き目や副作用に影響する可能性がある。服用の前に医師や薬剤師に相談したい。  また、サプリメントは特定の成分を濃縮しているため、体への影響が出やすく、効果を期待して1日の目安量を超えて飲むのも危険。例えばビタミンDは、取りすぎると腎機能障害や食欲不振などにつながる。  今回、消費者庁が全6800の機能性表示食品を調査したところ、因果関係が否定できない健康被害の報告は、紅こうじ以外に21件あった。「消費者が体調不良を感じても、医師にサプリメントについて言わないこともあるだろう。今回の数字を重く受け止めるべきだ」と今村さん。  少しでも体調に異変を感じた時は、服用をやめて病院を受診しよう。消費者庁はホームページで「健康食品手帳」を公開。製品名や目安量、体調の変化を記録でき、「お薬手帳」のような活用を呼びかけている。


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