自由気ままな子どもたちに、いつも親はハラハラドキドキ、時にもやもや。
「笑った!困った!」…でもウチの子はどうしてこんなことするんだろう。その行動の裏には、知られざる“子どものココロ”が隠されているはず。
元気なココロちゃんとマナブくんきょうだいの育児に追われる小木(こぎ)さん一家に聞こえてきたのは、こんなお話。
「初めてやることなのに、なぜか『できないから、やりたくない!』と決めつけて手を出そうとしない…」
「エレベーターのボタンを自分で押したい!」「ひとりでトイレに挑戦したい!」「お母さんのお手伝いがしたい!」などなど、色々なことに“やりたいスイッチ”が入る子どもたち。
でも、そんなやる気満々の子どももいれば、初めてやることのはずなのに「できない!」と拒んでしまう子どもも…。
パパママからすれば「まずはやってみたらいいのに?」と思ってしまう子どもの“やり渋り”は、一体どうして起きるの?育児に役立つ“子育て心理学”を発信している公認心理師・佐藤めぐみさんにお話を聞いた。
大きく分けてタイプは2つ
――初めてのことなのに「できないからやりたくない!」こんな風に子どもが思うのはなぜ?
過去に何回もやって、でもできなくて、だから「やりたくない」という場合はその気持ちを理解しやすいですが、初めてトライすることに対しても、「できないからやりたくない」と尻込みしてしまうと「なんで?」「やる前から?」と思ってしまいますよね。
でもこういうパターンは私の相談事例でも聞くことがあるので、意外とよくあるケースなのではと考えています。
子どもたちの中には失敗を怖がる子がいますが、大きく分けて理由は2つです。
1つめは、なにかしらの過去の経験で“失敗はよくないもの”という認識ができあがってしまい、それを避けるためにそもそもトライしないというもの。たとえば「ちゃんとできなくてすごくショックだ」「できないのは悔しい経験だ」などはごく一般的に見られます。さらには「やるなら完璧にやらないといけない」と自分でハードルを高めてしまい気持ちが折れてしまうケースや「パパ・ママに怒られるのが怖い」という委縮から来るものもあると思われます。
2つめは、性格的に「石橋を叩いて渡る慎重タイプ」の子。このタイプの子は、新しいことに対してまずはネガティブな側面から入り込みがちです。「橋が落っこちるのではないか」ということですね。それゆえ「冒険は避けたい」という思いが働きやすくなってしまうのでしょう。
――「なんでも自分でやりたい時期」があるように、「やりたくない時期」も子どもにはある?
年齢的な要素以上に、その子の性格や置かれた環境、親の接し方のほうが影響していると思われます。
あえて年齢という視点で言うなら、基本的に人間は小さい頃の方が“万能感”を持っていますので、成長とともに様々な影響を受けて、より現実に基づいた判断をするようになる。このような変化はあると思います。「身の丈に合った挑戦をする」「無鉄砲なことには手を出さない」などです。身の丈に合っているし、無鉄砲ではないのにそれでも拒むのは、性格的な要素やそれまでの経験で得た失敗への思いの方が大きく作用していると思われます。
少し話は逸れますが、子どもたちがチャレンジをしないと、大人はものすごくがっかりしてしまうものです。でも私たち大人だって「できないからやりたくない」「どうせ自分にはできない」と無意識のうちに手放してしまっていることはあるように思います。「子どものことばかり言っていられない!」「案外自分だってそうかもしれない」と感じたら、親自ら何かに挑戦し、背中を見せていくことも、子どもの認識を変えていく一助になるのかもしれません。
「パパママの失敗談」で気持ちをほぐす
――“やり渋り”する子どもに挑戦させたい!どんな風に導くのがいいの?
その場でできることとしては「パパと一緒にやってみようよ」「じゃあママが先にやってみるね」「途中で交代しよう」というような“伴走”がやりやすい方法でしょう。「子ども1人でチャレンジする」ということにこだわらないということですね。
また、部分的にできた段階でしっかりほめていくこともとても重要です。完全にできてからほめるのではなく、その過程でほめるということです。
ただ、こういう場面で尻込みしてしまう背景には「失敗が怖い」という思いがあることが多いので、その場の工夫だけでは不十分です。もっと土台の部分の「凝り固まった思い」を溶かしてあげるのがとても重要です。
たとえば、パパやママの失敗談を話したり、親子でちょっとハメを外して遊んじゃう、というのも「失敗はいけないこと」という頭をほぐすのに有効だと思います。あとは、親自ら「失敗しちゃった、助けて~」というシチュエーションを作り、子どもにレスキューに来てもらう、というのも少々芝居がかっていますが、子どもの心を動かすいいきっかけになるかもしれません。
「失敗って案外悪くないんだな」「みんなも失敗しているんだな」と失敗への許容を広げられれば、前に進みやすくなります。それで一歩目の勇気が出たら、すかさずその気持ちをほめる。こんな風にやっていけると、少しずつですがその気になってくれることが増えてくると思います。
子どもが「できないからやりたくない」という気持ちになってしまうのは、実は過去の失敗の経験から「失敗したらどうしよう!」という気持ちを凝り固めてしまっているからかも。
「失敗が怖いからやりたくない」「完璧にできないならやりたくない」、実はこんな気持ちを隠しているかもしれない子どもたちに“薬”となってくれるかもしれないのが、パパママたち大人の失敗談!
「どうして初めて挑戦するのに、できないなんて言うの?」「いいからまずはやってみて!」と叱ってしまいそうになったら、まずは子どもたちに「失敗しても大丈夫なんだ!」と安心してもらえる手助けをしてあげよう。
(解説:佐藤めぐみ/公認心理師)
英・レスター大学大学院修士号取得・オランダ心理学会認定心理士。欧米で学んだ心理学を日本の育児で取り入れやすい形にしたポジ育メソッドを考案。アメブロの「ちょっと子育て心理学」(http://ameblo.jp/la-camomille/)にて発信中。
(漫画:さいとうひさし)
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