祝日がない6月。だからこその「メリット」があるという=イラストはイメージ(ゲッティ)

 5月の大型連休から1カ月あまり。祝日がない6月のカレンダーを見て、ゆううつになっている人は少なくないだろう。でも、祝日がない6月だからこそ、ある「メリット」があるという。

祝日の数は世界で22位

 大型連休後の祝日は「海の日」(7月の第3月曜日)まで、ない。2カ月間超の長い空白期間について、SNS(ネット交流サービス)では「6月は地獄」「6月に祝日つくれ」などの投稿が目に付く。

 議員立法による法改正を重ね、現在は年間16日の祝日がある。日本貿易振興機構(ジェトロ)が事務所を置く57の国・地域で、日本の祝日数は22位(5月31日時点)で、決して少なくない。

 こういった事情もあり、祝日法を所管する内閣府の担当者は「余暇時間が増える一方、病院の休診などで困る人がいるし、経済も止まる」とし、祝日が増える可能性について、慎重な見方を示す。

祝日増による変動は「一時的」

 天皇陛下が即位された2019年は5月1日が1年限りの祝日になったこともあり、ゴールデンウイークは10連休となった。

 そこで、経済や暮らしなど幅広い分野を調査・研究しているニッセイ基礎研究所は祝日の影響を探るため、鉱工業▽医療・福祉▽生活・娯楽関連サービス--など業種別の生産量を試算した。

 結果は、祝日1日あたりで、旅行や外食を含む生活・娯楽関連サービスがプラス0・83%となったものの、鉱工業のマイナス0・95%、医療・福祉のマイナス0・71%など、他の業種はいずれも生産量が減少した。

2022年の日本の有給休暇取得率は62・1%となったが、ドイツやイギリスとは、大きな差がついたままだ=画像はイメージ(ゲッティ)

 ただ、全産業でみれば生産量はマイナス0・41%にとどまることもあり、研究所は祝日の増加について「変動は一時的なもので、景気の落ち込みを心配する必要はない」と総括した。

「強制的な休み」のデメリット

 経済への影響が大きくないのなら、6月に祝日があってもいいのではないか。そんな疑問を抱きそうだが、研究所で経済調査部長を務める斎藤太郎さんは「新たな祝日の誕生は絶対に反対です」と話す。

 その理由は、祝日が「強制的に労働者を休ませる」との性質を持っていることだという。

 「休暇は本来、働く側が自分の都合にあわせて取得すべきもの。祝日が増えることで、自分で休暇をマネジメントできなくなってしまう」

 厚生労働省によると、22年の有給休暇取得率は62・1%で、統計を取り始めた1984年以降、最も高くなった。

 だが、オンライン旅行予約会社「エクスペディア」の調査では、ドイツは90%、イギリスも85%となっており、大きな差がついたままだ。

 斎藤さんは平日が多い6月だからこそ「自分で仕事量を調整して休む日を決めやすいメリットがある」とし、有給休暇の取得を勧める。そして、こう続ける。

 「子育てや介護をしながら働く人は増えている。働き方が多様化する中で、休み方も多様であるべきです。企業は、従業員が休める時、休みたい時に休める環境を整備する必要があります」【山本萌】

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