母親に抱かれて眠るコアラの赤ちゃん=鹿児島市の平川動物公園で2024年2月14日午前10時18分、吉田航太撮影
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 愛くるしい姿が動物園などで人気のコアラは、好き嫌いが激しい偏食家という一面を持つ。日本では簡単に手に入らないユーカリしか食べないことに加え、個体ごとに好きなユーカリの種類も異なり、国内の飼育施設が頭を悩ませている。この問題について、北海道大や北里大などの研究グループは母親のフンを通じて受け継がれる「ある物」が関係しているとする研究結果をまとめた。

 コアラは600種類以上あるユーカリのうち30種類ほどを食べるとされる。毒を持つユーカリを食べられる理由の一つとして、乳児期に離乳食として食べる「パップ(盲腸便)」がある。これは母親が食べたユーカリを含むフンで、消化や解毒を助ける腸内細菌が子供にも受け継がれる。

 ただ、ユーカリの種類や葉の柔らかさなどの好みが個体によって違い、与えた9割程度が「食べ残し」になることも珍しくない。いかに効率よく餌を食べさせるかが長年の課題となっている。

 研究グループは、個体ごとに好き嫌いが分かれる理由を解明しようと、母親から受け継がれる腸内細菌などに着目。国内で飼育されるコアラ計6頭を対象に、普段から食べている5種類のユーカリを与えてそれぞれの好みを特定した上で、フンから採取した腸内細菌の種類や構成の割合と、食べるユーカリの種類との関係を調べた。

木の幹に抱きつき、毛繕いをするコアラ=鹿児島市の平川動物公園で2024年2月14日午前10時37分、吉田航太撮影
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 その結果、推定100種類前後ある腸内細菌のうち、食べたユーカリの種類ごとに増減する菌があることを確認。特定のユーカリを好むコアラの腸内だけに多い菌があることも判明した。

 結果について、北大の早川卓志助教(ゲノム進化学)は「個体ごとの腸内細菌の構成に応じて、消化しやすいユーカリを選んでいる可能性がある」とした上で、「腸内細菌を調べて餌を選ぶことで、コアラの食べ残しを減らすことにつながるかもしれない」と期待する。

 論文は5月27日、オンライン学術誌「PeerJ」に掲載された。【高橋由衣】

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