イメージ写真=ゲッティ

 少子化対策を盛り込んだ子ども・子育て支援法などの改正案が4日、参院内閣委員会で可決され、今国会での成立が確実となった。今後は子ども・子育て支援金制度で公的医療保険を通じた新たな徴収が生じるが、岸田文雄首相は「実質負担ゼロ」を掲げる。首相の「公約」を実現するには、医療費の窓口負担増など社会保障制度改革が必要で、2026年度予算編成に向けた来年度後半に議論が本格化する見通しだ。

 少子化対策の全体像を示す「こども未来戦略」では、必要財源3・6兆円のうち1・1兆円を歳出改革で捻出することが求められている。その上、首相が唱える「実質負担ゼロ」の実現には、社保改革によって保険料負担を減らす必要がある。

保険料を支払う本人1人当たりの年収別の支援金負担額

 社保改革の中身は、昨年12月に閣議決定した「社会保障の改革工程」で方向性が示されている。医療費が高額になった場合に患者の所得に応じて一定額を払い戻す「高額療養費制度」の自己負担限度額引き上げや医療費窓口負担が3割の高齢者の範囲拡大、金融資産・所得の各保険料への反映検討などだ。

 ただ、厚生労働省は年末に公的年金制度改革の関連法案をまとめ、来年の通常国会に提出する構えだ。ある幹部は「年金は重要法案で、これに加えて医療や介護の制度改革に向けた法案をさらに出すのは難しい」と明かす。政権の支持率が低迷する中、「官邸に負担増の話を持って行っても、全部蹴られてしまう」(自民党厚労族議員)という声もあり、来年度に先送りされそうだ。

 目先の負担増の次だが、30年代初頭までに子ども関連の予算を倍増する案もある。政府内には「新たな財源として消費増税議論は避けられない」との意見もある。【神足俊輔】

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