近年“災害級”の大雨が増えていることもあり、土砂災害も増加している。実際に大雨が降った時、土砂災害の危険が高まった時、我々は慌てず冷静に行動できるだろうか。

政府災害オンラインや内閣府、気象庁、NPO法人「土砂災害防止広報センター」のサイトをもとに、避難方法や身を守るために知っておきたいポイントを紹介する。

(前回記事はこちら:土石流・地すべり・崖崩れに“前触れ”はある?大雨の前に知っておくべき危険な場所と前兆現象)

土砂災害警戒情報を正しく理解する

直近の10年間で、毎年平均1400件以上もの土砂災害が起きている日本。特に大雨が降るとニュースなどで「土砂災害警戒情報」を見聞きすることも多いが、避難までの流れをおさらいしよう。

【土砂災害警戒情報】
都道府県と気象庁が共同で発表
。大雨で土砂災害の危険が高まった時に、市町村に対して出される。
市町村の避難指示「警戒レベル4」相当であり、市町村が実際に避難指示を出す判断材料になる。住民の自主避難の参考にも。
※避難にかかる時間を考慮し、2時間後までに危険基準に到達すると予測された時に出されている

土砂災害警戒情報の発表例(国交省・気象庁)
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確認方法
・各都道府県の砂防課などのホームページ
(都道府県や市町村によっては、携帯電話に自動的に配信するサービスも)
・気象庁ホームページ
・テレビ、ラジオなどの気象情報

「土砂キキクル」では土砂災害の危険度を、地図から1km四方単位で詳しく見られる(気象庁HPより)

土砂災害警戒情報が発表された市町村内で、危険度が高まっている詳しい場所は、気象庁ウェブサイトにある「土砂キキクル(危険度分布)」で確認できる。地図上で1km四方ごとに5段階で危険度が色分けされていて、常時10分ごとに更新される。

「キキクル」では土砂災害以外にも、浸水、洪水の危険度分布も知ることができる。日頃から確認して災害時にすぐ見られるよう慣れておくと共に、プッシュ通知のサービスもあるので活用するといいだろう。

気象庁「キキクル」はこちら:土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)

警戒レベル3か4で避難を開始

【避難指示(警戒レベル4)】
市町村長が住民に対して発令。
警戒レベルは1から順番に5段階あり、政府はこのレベル4までに避難するよう呼びかけている。

新たな避難情報に関するポスター・チラシ(内閣府防災担当・消防庁 2021年5月改定)

警戒レベル1:早期注意情報
警戒レベル2:大雨・洪水・高潮注意報
警戒レベル3:高齢者等避難
警戒レベル4:避難指示(必ず避難)
警戒レベル5:緊急安全確保(すでに安全な避難ができず命が危険な状況)

避難に時間がかかる高齢者や障害がある人は、警戒レベル3で避難を始める必要がある。それ以外の人も、避難指示や土砂災害警戒情報が出る前から、必要に応じて避難の準備や自主的な避難を心がけよう。

確認方法
・都道府県や市町村のホームページ
・テレビ、ラジオなどの気象情報
・防災行政無線、広報車など

避難時の注意点

土砂災害警戒情報や避難情報に注意し、実際に避難をする時には早めに行動することが何より大切だ。NPO法人「土砂災害防止広報センター」によると、避難時には次のような点に注意してほしいという。落ち着いて避難場所を目指そう。

NPO法人「土砂災害防止広報センター」HPより(イラストの著作権は同NPO法人に帰属します) 

・家を出るときはブレーカーを落とし、ガスの元栓を閉める。窓は鍵を閉めてカーテンを閉め、戸締まりをしっかりとする(火災の延焼や空き巣被害を防ぐため)
・1人では避難しない、特に子供は必ず大人と一緒に
・流れる水には近づかない。膝まで来ると歩けなくなる
・濁った水の中は深さが分からないので注意。その中を歩かざるを得ない時は、つえや傘をつきながら歩く
・雨が止んでも、突然水かさが増えることがある。その場合はしばらく待つ
・どうしても避難場所に行けない時は、近くの丈夫な建物の2階以上に避難。それも難しければ、家の中の一番安全な場所(2階や崖から一番遠い部屋など)に避難する

早めの避難のためには日頃から

早めの避難が大切だが、素早く安全に避難するためには、日頃から避難方法や避難場所について家族と話し合って決めておくことが必要だ。
事前にできる主なことは、以下の4つ。

1)避難場所の確認
2)家族の連絡先を決める
3)非常持ち出し袋の準備
4)(雨風が強くなる前に)家の外と中の備えを確認

ハザードマップは市町村の役所などでもらえるほか、市町村のホームページでも確認できる

【1)避難場所の確認】
土砂災害が起きそう・または起こった時の避難場所は、土砂災害のハザードマップで調べられる。事前に、大雨が降っている時などに安全に避難するにはどの道を通れば良さそうか、実際に歩いて確かめてみるとよい。

(前回記事はこちら:土石流・地すべり・崖崩れに“前触れ”はある?大雨の前に知っておくべき危険な場所と前兆現象)

【2)家族の連絡先を決める】
災害が起きた時、家族が一緒にいるとは限らない。災害時には電話やメールがつながりにくくなる可能性があるため、家族がバラバラになった時のために、みんなが連絡をする場所を決めておく。

家族の携帯番号を控えておき、被災時にバラバラで避難した場合はお互いがどこに連絡をするのか・どの災害用伝言サービスを利用するのかなど、事前に決めておくことが大切だ(本資料の著作権はNPO法人土砂災害防止広報センターに帰属します)

安否確認には以下のように、通信事業者や自治体などからたくさんのサービスが提供されている。事前に家族と相談して何を使うか決めておこう。また、災害時に慌てないよう、使い方を確認して試してみるのが重要だ。

NTTが提供する「災害用伝言ダイヤル」使用法(NTTのHPより)。事前に使い方を確認することも重要だ

・NTT「災害用伝言ダイヤル(171)」のほか、au(KDDI)、ソフトバンクなど各通信事業者が提供する災害用伝言サービス
・自治体の防災アプリ
・勤務先の安否確認システム
・遠くに住む親戚や友人など、大きな災害が起きても被害が及ばない場所に連絡先を決めておく

【3)非常用持ち出し袋の準備】
中に入れるものは、家族にお年寄りや赤ちゃんがいるかの家族構成や、季節によって変わってくる。何が必要か家族で話し合い、暑くなってくる時期や寒くなってくる時期などに定期的に見直そう。

【4)家の外と中の備えの確認】
台風や大雨が来ることがわかったら、雨や風が強くなる前に、家の外と中の備えの確認をしよう。

雨風が強くなる前に、家の内外で点検を(政府広報オンラインより) 

家の外の備え
・窓や雨戸はしっかりと閉め、必要に応じて補強する
・側溝や排水溝は掃除して水はけをよくしておく
・風で飛ばされそうな庭木やプロパンガスなどは飛ばないように固定したり、家の中へしまったりする
・自動車のガソリンを満タンにしておく

家の中の備え
・飛散防止フィルムを窓ガラスに貼る
・水を確保する
・スマートフォンやパソコンをフル充電する
・非常用持ち出し袋の確認

繰り返しになるが、命を守るには早めの避難が重要だ。
そのためには土砂災害警戒情報や避難情報を正しく理解して、すぐに動けるよう日頃から家族と備えておこう。

特集「今すぐ始める 我が家を守る防災」の記事一覧はこちらから↓
https://www.fnn.jp/articles/-/701567

【出典・参考】
・気象庁「土砂災害警戒情報・土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)
・国土交通省 気象庁「土砂災害警戒情報について」パンフレット
・内閣府「避難情報に関するガイドラインの改定(令和3年5月)」
・NPO法人土砂災害防止広報センター「避難(ひなん)のしかたを身につける」
・政府広報オンライン「大雨や台風の気象情報に注意して 早めに防災対策・避難行動を行いましょう」
・NTTホームページ「災害用伝言ダイヤル(171)」

【URL】
・気象庁「土砂災害警戒情報・土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)
・国土交通省 気象庁「土砂災害警戒情報について」パンフレット
・内閣府「避難情報に関するガイドラインの改定(令和3年5月)」
・NPO法人土砂災害防止広報センター「避難(ひなん)のしかたを身につける」
・政府広報オンライン「大雨や台風の気象情報に注意して 早めに防災対策・避難行動を行いましょう」
・NTTホームページ「災害用伝言ダイヤル(171)」

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