本格的なシーズンを迎えるサクランボの収穫を控えた今、2024年は、2つの実がくっついた「双子果」が多く、山形・寒河江市の生産者を悩ませている。それでも、おいしいサクランボを届けようと工夫しているが、ほかにも新たな問題が起きていた。
正規品として出荷できず 収入減に
6月5日、さがえ西村山さくらんぼ部会の大沼喜一部会長は、真っ赤に色づいた早生(わせ)品種の「高砂(たかさご)」の収穫にあたっていた。来週からは人手を増やし、「佐藤錦」の収穫と最も忙しい時期を迎えるが、気がかりなのは晩生(おくて)の品種「紅秀峰」の出来だ。
この記事の画像(12枚)大沼さんが「もうがっかり…、今年はがっかりです」と落胆するほど、サクランボの木の上部には、2つの実がくっついた「双子果」が育っていた。
2023年の猛暑の影響でめしべに異常が生じ、2024年は、双子果の数が増えている。双子果は正規品として出荷できないため、多ければ多いほど生産者の収入は減ってしまう。
大沼さんは「かなりマイナスだと思う。極端にいうと昨年度の半分、半分以下になるのでは」と話す。
そして今、双子果以外にも、大沼さんが「初めてのことだ」と話す新たな問題が起きていた。
あえて残し子どもたちに「ラッキー」と
サクランボの木には、双子果に加え“実割れ”のサクランボがいくつか見られた。
「雨で割れたことはあるが、おしりの方から割れるのはまずない」と大沼さんは話す。色づいている最中・これから大きくなるという時期の実割れはこれまでなく、初めてのことだという。
2024年は、春先の天候の影響で受粉がうまくいかず、実の数が少なくなり、“残った実に養分や水分が行き過ぎたこと”が実割れの要因とみられている。
本来、双子果は正常な実の品質を落とさないようもぎ取るとされているが、大沼さんはこれ以上実割れしないよう、あえて双子果を残す選択をした。
さらに、もうひとつ、双子果を残す理由がある。
大沼さんがお客さんに電話をしたところ、「(双子果を)少しなら入れてほしい、孫たちが喜ぶ」との話があったといい、「子どもたちが開けた瞬間『ラッキー』と思うのでは…」と考え、双子果を少し入れるつもりだという。
双子果が多いことを受け、JAさがえ西村山は少しでも生産者の収入アップにつなげようと、きれいにできた双子果を「わけあり品」として出荷することを決めている。
「1粒残らず食べてもらいたい」
収穫まであとわずか。
大沼さんたち生産者は、2024年は特に貴重なサクランボを、より高品質に仕上げるため力を尽くしている。
大沼さんは「紅秀峰も佐藤錦もすべて、おいしいサクランボを消費者に届けたい。1粒残らず食べてもらいたい」と笑顔で話す。
子どものころ、双子果・双子のサクランボを見つけると、うれしかった記憶がある人も多いのではないだろうか。双子果を入れるのはいい案なのかもしれない。
大沼さんの園地で、佐藤錦を食べたさくらんぼテレビの白田貴彦アナウンサーは、「実が割れていても、甘くて酸っぱくてとてもおいしかった」という。
数は少ないかもしれないが、2024年もおいしいサクランボが期待できそうだ。
(さくらんぼテレビ)
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