俳優、芸人、アイドルなど芸能人向けのセカンドキャリア支援サービスの立ち上げが相次いでいる。人材サービスのギグワークス傘下のグリーンライト(東京都港区)は5月から芸能人のセカンドキャリア支援を始めた。放送作家の秋元康氏らも共同出資している。

 面談で本人の希望やスキルを聞き取り、求人紹介や面接対策の助言をする。ビジネスマナーやパソコン操作を学ぶリスキリングの場も提供するという。「企業からの問い合わせは来ている」(同社)。テレビCMなどを手がける「エイスリー」(同渋谷区)もセカンドキャリア支援に乗り出している。

 俳優として32年のキャリアを持つ松永博史さん(55)も50歳で引退後、芸能人のセカンドキャリアを支援する仕事をしている。

 かつて「赤い霊柩(れいきゅう)車」シリーズなど人気ドラマに多数、出演したが、2008年のリーマン・ショック以降、仕事が減り、コロナ禍で「どん底」に。

 「僕らの若い頃はドラマなどのギャラはもっとよかった。コロナ禍を経て今はどん底。売れている俳優以外は食べていけなくなっている」

 俳優の引退を決意するとともに、同様の境遇にある芸能人のセカンドキャリアを支援する仕事に就いた。21年9月、就職採用コンサルタント会社「ジェイシップ」(同目黒区)に入り、芸能人のセカンドキャリア支援の部門を立ち上げ、責任者になった。

 10代でオーディションを受けて芸能界に入っても、スターに上り詰めるのはごく一部。多くは売れないまま、志半ばで去っていく。一般社会に戻ろうとしても芸能以外の経験が乏しく、支援を必要としていることも、こうした動きの背景にある。

 「これまで約100人の芸能人の相談にのり、仕事をあっせんしてきたが、実際に社員として採用されたのは10人ほど」。就職先は不動産会社、介護、飲食店が多いという。

 松永さんは6日、芸能分野などでの労働環境改善を求め、日本芸能従事者協会が国会内で開いた集会に参加。芸能人のセカンドキャリア支援の必要性を訴えた。長時間労働の是正、報酬支払いの適正化、社会保障制度の充実なども関係官庁に要望した。(編集委員 森下香枝)

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