海水温の上昇などでたびたび白化現象に見舞われている石垣島のサンゴ礁を再生しようと始まったプロジェクト。

そのカギとなる有性生殖によるサンゴの産卵が、4年の月日を経て2024年5月22日に初めて確認され、関係者からは喜びの声が上がった。今後は2025年度までに1万群体のサンゴの種苗の生産を目指すことにしている。

遺伝的に多様なサンゴを生みだす養殖技術

2022年に石垣島の崎枝湾で撮影された白化が進むサンゴ。

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多様な生き物の繁殖場所やエサ場でもあるサンゴ礁は白化によって減少し、八重山の海の漁獲量も減少傾向にあった。

こうした事態を食い止めようと、サンゴの保全に取り組んできた八重山漁業協同組合とともに、サンゴを再生させようと日本トランスオーシャン航空などが協議会を設立した。

日本トランスオーシャン航空の青木紀将社長(当時)は、「環境保全のみならず、沖縄の基幹産業である水産業・観光業の活性化、地域社会の経済の発展に寄与するものだ」と述べた。

協議会として取り組むのはサンゴの有性生殖だ。

これまでのサンゴの再生は、折り取ったサンゴで苗を作って植え付ける「無性生殖」で行われてきた。

協議会が取り組む有性生殖では、サンゴの一斉産卵を利用して卵と精子を受精させるものだ。

親サンゴが同じ断片では受精しないという無性生殖のデメリットを補って、遺伝的に多様なサンゴを生み出すことで、受精率を高めることも期待される養殖技術だ。

約4年の月日をかけて初めて迎えた産卵

2024年5月17日、石垣島の崎枝湾で作業していたのは、八重山漁協でサンゴの保全と増殖活動に取り組んできた小林鉄郎さん。

八重山漁協サンゴ種苗生産部会 小林鉄郎さん:
ネットの下にサンゴがあるので、それが産卵してネットの中に入っていくという感じです。きょうは5月17日ですが、20日から22日の間に産むのではないかと思われます

高度な技術が必要とされる有性生殖。およそ4年の月日をかけ、いよいよ初めての産卵のタイミングを迎えた。

2024年5月22日、午後8時過ぎにサンゴの産卵が始まった。通常の一斉産卵とは少し異なって、群体がパラパラと時間差で産卵している。

八重山漁協サンゴ種苗生産部会 小林鉄郎さん:
2020年に有性生殖サンゴ再生支援協議会に支援をいただいて、その時に作った株が産卵をするということで、それに挑戦しています。完全養殖は研究機関で行われていると思いますが、このように大規模に海人(うみんちゅ=漁師)が実施するのは初めてのことだと思いますので、これからのサンゴの再生や保全に対して、一つのビジョンを示せるのではないかと思います

1万群体のサンゴの種苗の生産を目指す

2016年にも記録的な暑さと海水温の上昇でストレスを受け、大規模なサンゴの白化に見舞われた八重山の海。

八重山漁協 サンゴ種苗生産部会 新盛裕二郎 副会長:
温暖化で水温も上がっています。(2022年の白化から)もとに戻るのがかなり時間がかかると思いますが、それまで養殖サンゴとかで何とか頑張ってやっていきたいと思います

八重山漁協サンゴ種苗生産部会 小林鉄郎さん:
周辺のサンゴの卵が海面にも漂うような感じだったんですが、2022年の大規模白化後にはそれがなく、周りのサンゴが全部死んでしまいました。毎年幼生を作って、種苗を作るということをやっていかなければ、サンゴはどんどんなくなってしまいます。技術を確立して、ちゃんと実績を出し、そういうのが頑張って集まれば、八重山の海は変わるのではないかと思っています

今後は卵と精子を受精させ、幼生を着生。2025年度までに1万群体のサンゴの種苗の生産を目指していて、その後はおよそ3年かけて育てた種苗を移植していく計画だ。

有性生殖によるサンゴの再生は、八重山の豊かな海を未来に繋ぐ重要な役割を担っている。

(沖縄テレビ)

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