特集は、ベビー用品の開発・販売が好調な企業の舞台裏です。商品をユーザー目線で徹底的に検証。改良を重ねて人気商品を世に送り出しています。成長の裏には女性たちの活躍がありました。


■大手通販サイトから表彰される注目企業

抱っこされる赤ちゃん。

おしりを支えているのはお母さんの腰に巻かれた補助具「ヒップシート」。

12万個を売り上げた人気アイテムです。


着る毛布「スリーパー」。

生地の厚さやサイズ、色など、バリエーション豊かでこれまでに17万枚を販売しています。


手掛けたのは塩尻市の「kerata(ケラッタ)」。

インターネットでの販売のみですが、2023年の売り上げは前の年の2倍に。


大手通販サイトから表彰される注目企業です。

「楽天ショップオブザイヤー2023」

「amazon 販売事業者アワードカテゴリー賞」


ケラッタ・下村祐貴子社長:
「利便性と機能とかわいさを、圧倒的なお手頃価格で提供するのが強み。ベビーの製品を使うなら『ケラッタ』と思ってもらえるブランドになりたいなと」


ケラッタの前身は2016年創業の「やまびこ屋」。

商品開発力が注目され2022年、M&Aで東京の企業の傘下になりました。

創業者や社員は残りつつ、外資系企業でブランディングのノウハウを培ってきた下村社長の下、業績を伸ばしています。


■商品を「ユーザー目線」で徹底的に検証

冒頭のヒップシートは「やまびこ屋」時代からの主力商品。

実際に、着け心地を市内に住む親子に試してもらいました。

ケラッタ商品部・和田まりあさん:
「抱きかかえるように乗せていただいて、座面の上に。抱っこひもだと下ろしたり着けたり大変かと思うが、使う時の手軽さがポイント」


財布などを入れるポーチにも―。

最大の特徴は、体にフィットさせるダイヤル式の調節器具です。


実際に試した・古畑阿伊さん:
「すごく締まってくる感じがするので、手で締めるより楽」

ケラッタ商品部・和田まりあさん:
「腰回りに負担がかかるので、それを少しでも改善したくて」

当初は、バックルとマジックテープによる調節で、フィット感がいまひとつでした。

そこで、スノーボードのブーツをヒントにダイヤル式の調節器具を取り入れました。


さらに、台座には厚いクッションをプラス。

ケラッタ商品部・和田まりあさん:
「痛みを軽減する事ができるので、長い時間使用していただけるように」


多くの商品が支持される理由は、こうした「改良」の積み重ねにあります。

その元になっているのがー。

ケラッタ・下村祐貴子社長:
「『レビュー』を毎日全部チェックしてるんです。1日100件は入ってくるんですけど、いいものも悪いものも全部」

下村社長が徹底してチェックしているのは購入者が通販サイトに書き込む感想=「レビュー」や、「★」の数による評価。

新年度を前に人気の「お昼寝布団」はー。

ケラッタ・下村祐貴子社長:
「名前のシール布はありがたかったけど小さすぎるっていう声があるので、これはもっと大きくしなければなと」


特に注目するのは「低評価」のレビュー。

解決策を見出し、速やかに工場に伝え改良につなげます。

こちらは改良した「ループ付きタオル」。

保育園・幼稚園に入った時の必需品ですが、他社製品も含め「ひもが切れやすい」というレビューを受けて縫製を強化しました。

ケラッタ・下村祐貴子社長:
「表からも裏からも縫ってるのですごく頑丈。洗濯する方は数百回はされるので、糸も摩耗していくので」


人気のスリーパーは、前後が全てボタンで取り外せるようになっています。

ケラッタ・下村祐貴子社長:
「前後取り外しができるのは、弊社が初めてなのでは。赤ちゃんって、ここ(前)だけ汚すことが多い。汚れたところだけ切り取って、洗ってもらうこともできるのでいいかな」


小学生と中学生、2人の母でもある下村社長。ユーザーの声を大切にしています。

ケラッタ・下村祐貴子社長:
「子育て中のお母さんて人を助けたいと積極的に思われる方が多いので、レビューもすごく書いてくださる。その中のシグナルを今後の製品に反映させていくのが大事。直接お話しできないから、ここで真意を読み取るっていうことをする」


■成長の裏に女性たちの活躍

社員30人余りの平均年齢は30代前半。女性が7割を占めます。

ケラッタ企画開発担当・笹沢日菜さん(28):
「今回出したいのは、バンブー生地を使ったガーゼケットになっていて、これが、竹70%で綿30%の素材」

新商品の企画会議。

「専門分野」を持つ4人が話し合います。

木祖村出身のデザイナー・赤羽智世さん(38)は子育て中。

デザインには母親目線が生かされています。


タオルケットの「ドーナツ柄」は男女問わず、長く使えるように意識したものです。

デザイナー・赤羽智世さん(38):
「白より色味・背景が入っていた方が汚れたとき目立たないということで、自然な柔らかいタッチのドーナツ柄で、親も子どもも一緒に使ってほほ笑むようなデザインに」


■専門知識を生かし会社を支えるスタッフも

会社を支えているのは女性ばかりではありません。

ケラッタ品質管理・高田正直さん(66):
「竹って抗菌作用もあるよね」

ケラッタ企画開発担当・笹沢日菜さん(28):
「そこは言えるかな、訴求ポイントで」

「品質管理」の高田正直さんは66歳。ベビー用品の大手チェーンを退職し素材や加工の専門知識を新たな職場で生かしています。

神戸から単身赴任中で、山登りやマラソンなど信州での暮らしも楽しんでいます。

ケラッタ品質管理・高田正直さん(66):
「嘱託という位置付けだが区別なく活躍できる。フランクに付き合いができる」


高田さんのマラソン仲間でもある李龍男さん(36)は中国出身。

ケラッタ工場担当・李龍男さん(36):
「開発しようとしている商品について工場とのやり取りをするポジション。中国の工場が多いので、言語を生かして活躍しています」


中国の工場とやりとりし、速やかな改良につなげるキーマンです。

■目指すは信州発の業界ナンバーワン企業

女性を中心に商品開発に力を入れるケラッタ。

4月からは子ども用品の全国チェーンでの販売を始める他、自社サイトでの販売や中国展開も予定しています。

目指すは信州発の業界ナンバーワン企業です。

ケラッタ・下村祐貴子社長:
「松本・塩尻で代表する会社になりたいのももちろんなんですけど、これからは『信州からグローバルへ』っていうスローガンを掲げて、子育てのエキスパート、リーディングブランド、けん引するブランドになっていきたい」

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