故障したストーブの買い替え費用を生活保護受給者に臨時支給しないのは違法だとして、札幌市の50代男性が市を相手取り、支給却下決定の取り消しを求めている訴訟で、控訴審の口頭弁論が13日、札幌高裁であった。男性が本人尋問で「暖房がなければ健康が失われ、場合によっては凍死してしまう」と訴え、結審した。
原告側の請求を退けた一審・札幌地裁判決などによると、男性は心筋梗塞(こうそく)や心不全などを患い、2013年から生活保護を受給している。自宅のストーブが故障したため、17年12月、新たにポータブル石油ストーブを購入する費用1万3590円の臨時支給を市に申請。市は、生活保護の開始時や災害で失った場合に暖房器具の臨時支給を認めるとする厚生労働省の通知を理由に、男性の申請を却下した。
原告側は「健康で文化的な最低限度の生活」を保障した憲法25条に反するなどと主張していたが、一審判決は、暖房器具の買い替えには毎月の生活保護費をあてるべきだと指摘。市の決定は「憲法25条に照らし不合理とはいえない」とした。
男性はこの日、ストーブを自分で買い替えて灯油を節約していたとして、「気温5度ほどの中で寝るのはとにかくつらく、病気の再発も考えると生きた心地がしなかった」と述べた。原告弁護団の高崎暢弁護士も「行政裁量の逸脱や乱用に対し、人間たるに値する生活を求める裁判だ」と意見陳述した。
判決は10月31日の予定。(上保晃平)
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