国鉄時代の特急電車で唯一、定期運行していた特急「やくも」の車両「381系」のラストランイベントが14日、鳥取県米子市のJR米子駅で開かれた。381系の引退で、旧国鉄型の特急車両は路線から姿を消すことになる。車両がホームに到着すると、多くの鉄道ファンが別れを惜しんだ。
岡山駅と出雲市駅(島根県)を結ぶやくもで、381系は1982年に投入された。やくもが走る「伯備線」は、山岳部を縦断するためカーブが多い。381系はカーブでバイクのように車体を傾け、高速のまま曲がることができる「振り子式」を採用。初代やくもの「キハ181系」に比べて岡山―出雲市間を約20分短縮し、観光やビジネスで大きな役割を果たした。
運行開始当初の「国鉄色」はクリーム色に赤の帯が特徴。その後、紫色を基調とした「スーパーやくも色」、白をベースに緑と黄色のラインが入った「緑やくも色」とさまざまなデザインが誕生した。
2007年以降は車両がリニューアルされ、座席前後の間隔を広くするなど乗り心地が改善された「ゆったりやくも」が登場し、デザインは白地と赤いラインに刷新された。22年3月からは、歴代のデザインが相次いで復刻され、懐かしいカラーリングの車両が走っていた。
今年4月には、やくもの新型車両「273系」がデビュー。あらかじめ登録されたカーブの曲線データと走行地点のデータを照合し、最適なタイミングで車体を傾かせる仕組みで、「酔いやすい」とされた381系の乗り心地が大幅に改善された。それに合わせ、40年以上にわたって走ってきた381系の引退が決まった。
381系は、名古屋と信州地方を結ぶ特急「しなの」や、大阪と南紀方面を結ぶ特急「くろしお」でも走っていたが既に引退。1987年に旧国鉄がJRになってから35年以上がたち、旧国鉄時代の特急車両は役割を終えることになった。
JR米子駅では14日午前9時21分、「緑やくも色」の車両が到着。下車した乗客に、JRの職員から記念品が手渡された。岡山市の会社員、藤原新一さん(54)は「今日は最後なのでわざわざ乗った。『振り子式』は、中国山地を揺れながら駆け抜けるのが魅力。今日も車両の後ろの方に乗って、傾く姿を楽しみました」と話していた。【松原隼斗】
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