自民党派閥による裏金を巡る問題で、党本部は4日、党紀委員会を開き、安倍派、二階派の39人の処分を発表した。処分対象は、政治資金収支報告書への不記載額が5年間で500万円以上の議員など、派閥での役割に応じて決めたとしている。重い順に離党勧告が2人、党員資格停止が3人、党の役職停止が17人、戒告が17人となった。安倍派で座長を務めた塩谷立元文部科学大臣、参院トップの世耕弘成前党参院幹事長は「離党勧告」となったが、党本部は、総裁の岸田総理、二階元幹事長の処分は見送った。事務総長経験者の下村博文元文科大臣、西村康稔前経産大臣の2人は、3番目に重い「党員資格停止」(1年)とした。また、同派の高木毅前国会対策委員長は「党員資格停止」(6カ月)、萩生田光一前政調会長、松野博一前官房長官、二階派事務総長の武田良太元総務大臣は6番目の「党の役職停止」(1年)となった。
塩谷氏は5日、離党勧告の処分を受けた理由に認識の誤りがあるとして、再審査の請求を検討すると表明した。再審査が認められず、離党もしない場合は「除名」となる。塩谷氏は同日、「事実誤認の中で処分が下されたことについて、甚だ心外な思い」と述べた。今回の処分を前に、塩谷氏は4日、党紀委員会に弁明書を提出し、「独裁的・専制的な党運営に断固として抗議する。スケープゴートのように不当に重すぎる処分を受けるのは納得がいかない。(離党勧告に)値するとは思わない」と処分内容の不当性を訴えていた。一方、世耕氏は4日、党本部に離党届を提出し、受理された。世耕氏は、「(不服は)ない。明鏡止水の心境だ。非常に冷静な気持ちで政治責任をとって、この事態をできる限り収束させたい」と語った。
安倍派幹部の“5人衆”の一人とされる萩生田光一前政調会長は、党の役職停止1年の処分となったが、不記載金額も多く、処分の甘さを指摘する声もある。萩生田氏は5日、自身のSNSで、「今回の処分を一部メディアでは、『軽い処分』と批判されているが、政治家として、与党の政策責任者を離れ、今後もしばらく第一線で力を発揮できないことは忸怩たる思いであり、『重い処分』と真摯に受け止めている」と批判を振り払った。
関係議員ら39人の処分を決定した自民党内では、処分への不満や岸田総理への責任を問う声があがり、今後の政権運営に暗い影を落としている。戒告処分を受けた安倍派の大塚拓衆院議員は5日、パーティー収入の会計処理を巡り、「党のコンプライアンス組織にも相談し、指導に従い会計処理を行ってきた。処分を受けることは筋が通っておらず、甚だ遺憾だ」と語り、党の処分プロセスに対する強い不信感をあらわにした。自民党派閥の裏金事件を巡り、自身の処分を見送った岸田総理は4日、「政治改革に向けた取り組みの進捗をご覧いただきたい。そのうえで、最終的には、国民の皆さん、党員の皆さんにご判断いただく立場にある」と述べた。自民党の中堅議員は、「日本の文化的にはトップが責任をとる。総理が責任をとるべきという論調が高まっている」と語り、自民党の関係者は、「この処分内容は岸田さんを守ろうとした結果なのかが分からない」と苦言を呈した。
★ゲスト:久江雅彦(共同通信編集委員兼論説委員)、牧原出(東京大学先端研教授)
★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)
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