札幌市東区の市街地にクマが出没し、男女4人が襲われる衝撃的な出来事から6月18日で3年を迎えます。クマの出没が増えている中、再び街中に現れた場合どのような対策が取られるのでしょうか。

 2021年6月18日。札幌市東区の住宅街に現れた1頭のクマが次々と人を襲いました。

 40代の男性が重傷を負うなど、男女合わせて4人がケガをしました。

 「何回もかまれているので、このまま死んでしまうのかなと。かみ傷と切り傷で100針以上縫った」(被害にあった男性)

 札幌市東区で人がクマに襲われたのは、明治時代以来143年ぶりのことでした。

「猟友会が銃を構えました。いま、発砲しました」(鎌田 祐輔 記者)

 約8時間後、猟友会のハンターがクマを駆除。体長約1.6m、体重約160kgのオスでした。

 当時、現場にいた札幌市の職員は。

 「地下鉄駅にすごく近い市街地の真ん中に出没してしまった。市民が4人負傷しているので、『捕獲やむなし』という判断は間違っていなかった」(札幌市 環境共生担当課 清尾 崇さん)

 札幌市で市街地にクマが出没したのは東区だけではありません。

 2022年9月には、札幌市豊平区の札幌ドームの敷地内にクマが出没。周辺には商業施設や住宅街が広がっています。

 東区以上の被害も予想され、現場には緊張が走りました。

 「横には国道36号が通っている。札幌ドームの敷地内なので、360度どこに銃口を向けても市街地発砲になる状況」(札幌市ヒグマ防除隊 玉木 康雄 隊長)

 現在、市街地での猟銃による駆除は「鳥獣保護管理法」で原則禁止されています。

 警察官が「警察官職務執行法」に基づいて命令した場合に、ハンターが猟銃を使用することができます。当時、猟銃の使用も検討されました。

 「基本は市民の安全第一を考えた。札幌ドームの建物ばかりではなく、備品などの一部を破損する可能性を札幌ドームの管理者に話をした。事態を解決するために、そういうこともありうると了承をもらって対応していた」(札幌市 環境共生担当課 清尾 崇さん)

 結局、クマは山林に戻ったとみられ大事には至りませんでした。


 札幌市は2023年に人とクマの住み分けを目的とした「さっぽろヒグマ基本計画」を制定しました。

 西区、中央区、南区の一部を重点エリアに指定。箱わなを設置したり、人とクマが住むエリアの境目となる山林近くに電気柵を設置したりして、侵入を防ぐ方針です。

 それでもクマが市街地に出没した場合どうするのか。いま新たな動きが進んでいます。

 「警察官職務執行法の範疇ではなく、ハンターの判断で発砲することなども視野に入れた改正が検討されている。猟銃での駆除という判断をするとき、より迅速に対応できるようになる」(札幌市ヒグマ防除隊 玉木康雄隊長)

 現在、「鳥獣保護管理法」で禁止されている市街地での猟銃による駆除。国はこれを改正し、人身被害が生じる可能性がある場合に限り、猟銃使用の条件を一部緩和する方針です。

 法律が改正されたら、札幌市の市街地にクマが出没した場合どうなるのでしょうか。

 「仮にここにクマが出没した場合、弾丸をはじくような位置での発砲はしないことで全員が一致する。銃弾がはじかれてしまうとどっちの方向に飛んでいくか予測がつかない。そのリスクを避けるために、どこかに追い込む作戦がとられると思う」(札幌市ヒグマ防除隊 玉木 隊長)

 クマを地面がやわらかくて弾が跳ね返る危険が少ない場所に追い込み、付近に人がいないことを確認してから発砲するなど、現在行っている駆除方法と大きな違いはないといいます。

 ただ、警察官の命令を待たずに迅速に対応できるようになるといいます。

 ハンターが心配しているのは。

 「何らかの損害が出てしまった場合、ハンターに全ての責任を負わせるのか。法律でカバーできるような、損害賠償の仕組みなどを考えてほしい」(札幌市ヒグマ防除隊 玉木 隊長)

 国は2024年秋に予定される臨時国会への、法律の改正案提出を視野に入れています。

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