文部科学省は19日、いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」の調査に関するガイドラインの改定案を公表した。調査にあたる第三者委員会の人選や財源が課題になっていることから、事前に委員候補を確認し、報酬などに充てる予算を確保しておくことなどが盛り込まれた。
重大事態には学校や教委に対し第三者委などによる調査が義務付けられているが、被害者側が調査結果や人選に不満を持ち、トラブルになるケースが少なくない。また、毎日新聞の調査では7割超の自治体が第三者委の設置について「財源確保が困難」と回答するなど、設置が遅れる一因となっている可能性がある。あらかじめ委員候補の確認と財源の確保をしておくことで、早期の第三者委設置につなげる狙いがある。
改定案ではこのほか、初動対応を重視し、重大事態に発展するのを防ぐための対策を新たに提示。児童生徒や保護者から重大事態に該当する申し立てがあった場合、重大事態が発生したと推定して調査を始めるよう強調し、具体的な方法を例示した。
初動対応のための準備として、学校で日ごろの教育活動の中で作成したメモを管理するほか、犯罪行為とみなされる場合には警察に通報することをあらかじめ保護者に周知することを挙げた。
2022年度の文科省調査では、いじめの重大事態発生件数は923件。うち38・7%にあたる357件では学校が当初、いじめの存在を認知していなかった。改定案では「児童生徒や保護者から(重大事態の)申し立てがあったときは、重大事態が発生したものとする。調査をしないまま重大事態ではないとは断言できない」と強調。学校がいじめを確認できていない段階でも組織的に調査するよう求めた。
重大事態の申し立て後、学校側との情報共有が図られずに対応が遅れた事例もあったとし、電話や口頭でのやり取りに終始せず、書面で具体的な状況を記入してもらう必要もあるとして書面の様式も示した。
文科省の担当者は「改定により学校の対応をより明確化した。円滑・適切な調査の実施や、児童生徒や保護者に寄り添った対応を促したい」と述べた。今後、パブリックコメントなどを経て正式決定する。【斎藤文太郎】
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