「OKAYAMA Curry17」の店主、関戸健二さん=岡山市北区丸の内1で2024年6月13日午後4時26分、平本泰章撮影

 元Jリーガーの華麗なる転身だ。サッカーJ2・ファジアーノ岡山でミッドフィールダーとして活躍した関戸健二さん(34)が、岡山城近くで「OKAYAMA Curry17」(岡山市北区丸の内1)を営み、巧みなパスワークではなく、自慢のスパイスカレーで訪れる客の舌を魅了している。

 横浜市出身で、幼少の頃からサッカー一筋。流通経済大を経て2012年にファジアーノに入団して11シーズンに渡ってプレーし、膝の手術を4度繰り返しながらも豊富な運動量でチームの中盤を支えた。

 実は、「子供の頃からカレーは好きではなかった」。ただ、大学生の時、チームメートに誘われて行ったカレー店で運命的な出会いをした。「今まで見てきたカレーではなく、南インド風のサラサラした感じだった。すごくおいしくて、スパイスカレーが好きなんだと自覚した」。一気に心を奪われた。

店の看板メニュー「17カレープレート」=関戸さん提供

 プロになって岡山に来てからは、時間を見つけては評判の店を探して食べに行った。それだけでは飽き足らず、自分で作り方を研究し、同僚を自宅に呼んで振る舞うようになった。「現役の間は食事制限をしていたので、食べても罪悪感がないように、いい油を使ったり、量を少なくしたりと工夫した。評判は上々でした」。研究は着々と進んでいた。

 膝の故障に加え、21年夏ごろから脚の付け根が痛むようになり、出場機会が激減。22年は1試合しか出場できず、自然と引退後を意識するようになった。漠然と指導者の道を考え、実際にオファーもあったが、脳裏から「いつかカレー屋になりたい」という思いが消えなかった。高校時代の同級生に話してみると「やってみればいい」と背中を押され、カレー店主への転身を決意。妻には当初反対されたものの、揺らがなかった。

 22年限りで退団し、懇意にしていた岡山市内のカレー店と大阪の2店舗で修行を積んで、23年8月に自分の店をオープン。ファジアーノのサポーターらも駆け付けて連日行列ができ、一躍人気店になった。約10カ月が過ぎた現在は行列も一段落し、「ここからが勝負。新メニューの開発など、今後の展開を考えていかないと」と力を込める。

 トップアスリートにとってセカンドキャリアは切っても切り離せない大きな課題だが、「サッカーに限らず、トップ選手は好きなことを突き詰めて究めた人たち。だから、好きな道ならきっと大丈夫ですよ」。第2の人生は、まだキックオフしたばかりだ。【平本泰章】

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