福岡市東区の水族館「マリンワールド海の中道」のラッコプール。飼育員の福永芳樹さん(29)は大好きなイカをほおばるリロに表情を緩めながらも、食べ方や泳ぎ方、毛並みなどに目を凝らした。「いつもより何か違うなとなれば異変を伝えるサインかもしれない。長生きしてほしいから」と話す。
リロを担当するのは、同館の海洋動物課の6人だ。6人はリロの他、ペンギン、アシカも担当する「アシカチーム」のメンバー。リロが3月30日で17歳になったのに合わせて、6人のリロファミリーを紹介する企画の5回目。
鹿児島出身で、地元の水族館に行く時はオープンから入り浸っていた。イルカのトレーナーになりたいと思い、マリンワールド海の中道の一員となったのが2017年。イルカやアザラシなどがいる「かいじゅうアイランド」で2年間飼育員をし、19年からアシカチームのメンバーとなった。
当時、ラッコはリロとパートナーのマナがいた。ラッコを実際に見た第一印象は率直に「かわいい」。ただ、イメージしていたより体が長くて大きいのに驚いた。仲良しの2頭と時間を重ねるうちにそれぞれの性格が見えてきて、リロが穏やかで優しい性格であることも分かってきた。
動物と付き合う飼育員という仕事が楽しくてたまらないという。「イルカが好きでこの仕事を志したが、いろいろな動物を知るうちにどの動物も好きになった」と話す。勤務で館内を歩いていると、来館者から動物のことを聞かれることがあるという。「そんな時に生態などを説明して『へえ~』と驚かれるとうれしくなる。動物のことをたくさん知ってほしい」とほほ笑む。
リロをはじめ動物と暮らす時間が「生活の一部」という福永さん。「17歳となればもう高齢だから、一日一日を健康に過ごしてほしい」。これからもリロとの時間を楽しみにしている。【松本光央】
国内飼育のラッコは3頭のみ
国内の水族館には1994年のピーク時に122頭のラッコが飼育されていたが、海外から輸入ができなくなり、国内繁殖も難しくなってきたため、現在は3頭まで減ってしまった。3頭は、鳥羽水族館(三重県鳥羽市)の19歳のメイと15歳のキラ、そして、マリンワールド海の中道のリロ。メイとキラはいずれも雌で、雄はリロだけだ。飼育下のラッコの寿命は20歳前後と言われている。3頭は飼育員やファンに囲まれて元気に暮らしている。
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