長野市信州新町で75歳になる男性が独学で腕を磨き、4年かけて高さ5メートルを超える「薬師如来像」を完成させた。最初は興味本位で小さい仏像を彫っていたが、徐々にはまり、巨大な像を作ってしまったという。
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圧倒的な存在感
長野市信州新町。山あいの県道を進むと、圧倒的な存在感を放つ像が。
鎮座しているのは巨大な「薬師如来像」だ。高さは5.4メートル、幅は4メートルに及ぶ。
この記事の画像(10枚)独学で腕を磨き制作
作者は越道地区で暮らす農家の西沢治夫さん(75)。2020年1月から自宅の敷地で一人で制作を始め、4年余り経った5月末、完成させた。
制作者・西沢治夫さん:
「よく大変でしたかと言われるけど、全然大変じゃないんだよ。楽しいだけで」
高校卒業後、西沢さんは会社勤めをしながら趣味の登山に力を入れてきた。マッターホルンやモンブランに登頂したこともある。
仏像を作り始めたのは体力が落ちて、登山が難しくなった20年ほど前のこと。友人から勧められたという。
西沢治夫さん:
「その人の仏像見て、いやすごいな、俺もやってみようかなと思って。最初小さいのを彫ってたんだわ、何体か10cmぐらいの。だんだん彫り始めて、『結構いいね』と、それではまっちゃったの」
以来、独学で腕を磨いてきた西沢さん。木材をチェーンソーで切り出してから「のみ」で彫り進めるスタイルだ。
今は唐の高僧・不空三蔵(ふくうさんぞう)の像を制作中。
西沢治夫さん:
「弘法大師よりずっと前の、真言密教の創始者とも言われている。どんな形になるか、まだまだ粗堀りの段階なんで」
これまでに制作した仏像は約100点。一部を自宅に展示している。
西沢治夫さん:
「仏像は深みがあって面白いんだよ。あと何年掘れるかわかんないけど、彫り続ける予定です」
コロナ禍…「薬師如来」制作
それまで一本の木から掘り出す「一木造(いちぼくづくり)」だったが、4年前、複数の木材を彫って寄せ合わせる「寄木造(よせぎづくり)」にチャレンジ。巨大な仏像づくりを始めた。
西沢治夫さん:
「大きいと、バランスがよくわかんなくなるから、ちょっと離れて、たまにスマホで撮って、『あれ、ちょっとここおかしいな』とか、バランスが一番、彫っていく中では難しいね」
当時はちょうど、新型コロナウイルスが拡大し始めた時期。仏像は病気を治し、心身の健康を守ってくれるとされる「薬師如来」にした。
西沢治夫さん:
「医者みたいな仏様とも言われ、病気が治るようにお願いするともいわれているから」
左手には疫病を治す「薬壺(やっこ)」。
約500個の螺髪(らほつ)も手彫りだ。
こだわりは顔
そして一番のこだわりはー
西沢治夫さん:
「こだわりは顔に出るからさ。慈悲の心を込めたものでなければ仏像じゃないよって言われるぐらいの世界。顔の表情が一番苦労する。苦労するっていうか、到達はできないけど」
法衣は麻布を使用。
背景には朝焼けの北アルプスを描いている。
とにかく見てもらえれば
先日、開眼法要も営まれ、それが新聞で報じられると、住民や観光客が「参拝」に訪れるようになった。
訪れた人は、「すごい。病気ばかりしてるからお参りさせてもらいます。大きさはすごいですね、びっくりしました。(ご利益ありそう?)本当に元気いただきます」、「一人で作ったのにしては、大変なものだなと。迫力はあったね」と、完成度の高さに驚いていた。
山あいの集落に突如、現れた巨大な「薬師如来像」。西沢さんは気軽に見に来てほしいと話している。
制作者・西沢治夫さん:
「ただ自分は(彫るのが)好きで、いい加減な理由はつけてるけど、そんな立派なもんじゃないんだわ(笑)。見てもらってどういうふうに感じてくれているのかなとは想像するけど、とにかく見てもらえば、それだけでうれしい」
(長野放送)
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