瀬戸内の初夏の味覚、小イワシ(カタクチイワシ)漁が解禁され、何年ぶりかの豊漁だという。若者を中心に魚離れが進む中、広島のある寿司職人は、小イワシの新しい食べ方を考案し、瀬戸内の魚の魅力の発信に尽力している。

小イワシを生で食べられるのは広島だけ

広島市の繁華街から少し離れた一角に店を構える「鮨 黒郷(すし くろごう)」の店主・黒郷修さんは、寿司職人のキャリア30年のベテランで「新鮮な小イワシが生で食べられるのは広島だけ」と語る。

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瀬戸内の初夏の味覚、小イワシは6月10日に漁が解禁され、初日は2023年の2倍と豊漁となった。

初セリでは1箱7000円の値が付き、市場は盛り上がりを見せた。

広島魚市場鮮魚部・右近浩二次長は「販売を担当して5年目の中だとこれほど豊漁だった年はない。ようやく上がってくれたのでほっとしています」と胸をなで下ろした。

一方で、昨今、若者の魚離れが進み、水産業界は頭を悩ませている。15歳から19歳の若年層が1日に食べる魚介類と肉類の量を10年以上の期間で比べると、肉が増えているのに対し、魚は減少傾向が続いており、2019年は肉は魚の約4倍になっている。

小イワシのなめろう寿司を考案

若者の魚離れが進む中、黒郷さんは小イワシの魅力を若い人にも知ってもらおうと、新メニューを考案した。

「そのままでも美味しいけど、みそと砂糖をお好みで入れてもらって。小いわしを“なめろう”にして、寿司にしてみました。“なめろう”はちょっと変化球ですね」と黒郷さんは話す。「なめろう」は、どの家庭にもある味噌や砂糖で簡単に作れることがポイントだ。

小イワシのなめろう寿司

「小イワシのなめろう寿司」は、普段魚を食べる習慣がない若い人たちに、魚料理を味わってもらおうと考えだした新メニューだ。

黒郷さんは広島県が進めるプロジェクト「瀬戸内さかなブランド化推進事業」に参加。このプロジェクトは、魚離れが進む若者に対し、飲食店での食体験などのイベントを通じて、瀬戸内の魚の魅力を発信し、食べてもらうことを目指している。

6月24日には、秀でた技を持つ漁師や料理人を招いて、瀬戸内の魚の魅力を知ってもらうイベントが予定されている。

世代を超えて親しまれる店を目指す

黒郷さんは、若い夫婦やその子どもに魚をもっと食べてもらうこと、そして、世代を超え、親子に親しまれる店を目指しているという。

「鮨 黒郷」店主・黒郷修さん:
子どもたちが大きくなったときに、「お父さん、お母さんに連れてきてもらったよね」と思い出すような店にしたかった。代々親から子へ、その子どもが今度はお父さん、お母さんを招待してあげるように。

また、黒郷さんは「回転寿司が主流になっている今、若い人に本物の寿司を食べてもらいたい」とも語っていた。

近海でとれた身近な魚をいかにおいしく食べてもらうか、職人の技が、日本の食文化の維持に貢献している。

(テレビ新広島)

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