週末に夜更かし、休日は少しだけ朝寝坊…ということは大人も子どももあるだろう。
しかし、そうした習慣が「国内にいるのに時差ボケ」という状態を作り出してしまうという。
小児科医で小児神経科医・熊本大学名誉教授の三池輝久さん監修で、乳幼児睡眠コンサルタントの愛波あやさんの著書『忙しくても能力がどんどん引き出される 子どものためのベスト睡眠』(KADOKAWA)から、週末や長期休みに起こりやすい「ソーシャル・ジェットラグ」について一部抜粋・再編集して紹介する。
日中の活動や学業に影響も
休日と平日の起床時間の差が大きかったり、週末だけ夜型生活をしていたりしていると、起床時間のズレが体内時計を狂わせ、月曜日の朝がつらいということをお話ししました。
これは「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)」といい、海外旅行で長距離の飛行機に乗った時と同じような時差ボケ状態を作り出してしまうことからこの名前がついています。
この記事の画像(4枚)このソーシャル・ジェットラグの怖いところは、週明けの月曜日だけでなく、その週の前半まで日中のパフォーマンスを低下させてしまうところ。
その期間ずっと子どもの日中の活動や学業にも影響を及ぼしてしまうのです。
日本の未就学児を対象とした研究では、朝型の子どもに比べて夜型の子どもはソーシャル・ジェットラグが大きい傾向にあり、多動傾向が見られ、お友達関係にも悪影響があるということがわかっています。
特に2時間を超えるソーシャル・ジェットラグがあると睡眠の質の低下はもちろん、日中に強い眠気を引き起こすという結果が出ています。
夏休みは睡眠リズムに要注意
平日いつも7時に起きている子が、週末は9時過ぎまで起きてこない…これもよくあることではないでしょうか?
でも、朝寝坊を2時間以内に抑えれば、大きな睡眠問題は予防できることもわかりました。
子どもが元気に遊んで、意欲的に勉強に取り組めるようにするためにも、基本的にはソーシャル・ジェットラグを引き起こさない生活を送るようにして、疲れていて寝かせてあげたい時は朝寝坊を2時間以内にとどめましょう。
なお、注意したいのが夏休みなどの長期休み。
学校がないと週末だけでなく平日も遅寝遅起きをしてしまいがち。これをまた学校がスタートする前に調整するには時間がかかります。
長期休みも基本的には睡眠リズムを乱さないようにしましょう。
ゆっくり眠るなら土曜の朝、1時間程度
子どもが疲れているようなら、週末や祝日の朝くらいゆっくり寝かせてあげたいですよね。
ですが、日頃の睡眠不足でたまった睡眠負債は1~2日の長い睡眠では回復しません。
これは睡眠貯金(寝だめ)ではなく、睡眠負債の借金を返済しているだけ。つまり、平日の睡眠不足を補っているだけです。
ただ、週末しかゆっくり睡眠をとれないなら、何もしないよりは少しでも眠る方がいいでしょう。その際に気をつけてほしいのが「睡眠時間」と「睡眠する曜日」です。
ソーシャル・ジェットラグについて説明しましたが、眠る時間がたっぷりとれるからと、土日の両方ともゆっくり眠らせてしまうと、体内時計が狂ってしまい、月曜日の朝に起きるのが辛くなります。
週末にゆっくり眠るのであれば「土曜日の朝、1時間程度」がおすすめ。
土曜日の朝ならばゆっくり眠っても、日曜日に調整が可能です。
また体内時計は、大体24時間プラス10分くらいで動いているので、起床時間の差が2時間以内であれば、無理なく調整できます。
週末は家族で少し早寝もおすすめ
子どもの場合は調整に時間がかかることを考えると寝坊は1時間程度がベターです。また、週末は家族みんなで少し早寝をするのをおすすめします。
親子で週末は早く寝る習慣をつけることで、睡眠負債の帳尻合わせをしつつ、早寝をする親を見ることで、睡眠の大切さを子どもにわかってもらえるはずです。
一方で、スポーツチームに入っている子は週末に早起きをして遠征試合に行くことも多く、朝練で早起きをすることもあって、なかなか土曜日にゆっくり朝寝坊をすることは叶わないかもしれませんね。
そういう時はお昼寝を上手に使いましょう。
特に運動をしていると体の疲労もたまっているので、土日それぞれ20分程度のお昼寝をすると、睡眠のリズムを崩さずに疲労回復と睡眠不足の解消ができます。
著:愛波あや
慶応義塾大学文学部教育学専攻卒業。外資系企業勤務後、拠点をアメリカ・ニューヨークに移し、2014年に米国IPHI公認資格(国際認定資格)を日本人で初めて取得。現在、IPHI日本代表、Sleeping Smart Japan株式会社代表取締役。著書に『ママと赤ちゃんのぐっすり本』(講談社)、『マンガで読む ぐっすり眠る赤ちゃんの寝かせ方』(主婦の友社)がある。2児の母
監修:三池輝久
小児科医、小児神経科医。熊本大学病院長、日本小児神経学会理事長、兵庫県立リハビリテーション中央病院「子どものリハビリテーション睡眠・発達医療センター」センター長などを経て、現在は熊本大学名誉教授、日本眠育推進協議会理事長。著書に『赤ちゃんと体内時間 胎児期から始まる生活習慣病』『子どもの夜ふかし 脳への脅威』(ともに集英社)など
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