兵庫県豊岡市にあり、日本海に面して建つ「城崎マリンワールド」。
この記事の画像(10枚)こちらの大きな特徴は、地元の海で見つかった数々の生き物を展示してきたこと。
「幻の深海魚」ともいわれるリュウグウノツカイをはじめ、体長4メートルを超える巨大なダイオウイカや黄金色のオニオコゼ、この地域には珍しいクリオネなどがいる。
豊岡の海は海藻が広がり、多くの魚のすみかになってきた。この自然豊かな海が、城崎マリンワールドの人気を支えている。
しかし今、城崎の海は大きな危機に直面しているのだ。
記者:兵庫県の城崎に来ています。今、城崎の海で異変が起きているということで、もぐって取材してまいります。行ってきます。
魚の姿が見当たらず、海藻は少なく、まるで砂漠のよう…。代わりに目に飛び込んできたのは、大量のウニ。
海の中で一体、何が起きているのだろうか?
■「海藻がない場所が増えている」理由はウニ?
地元の海の生き物を展示していることが特色の城崎マリンワールド。
飼育員の伊藤公一さんは、28年前からセイウチやアシカなどの世話をしたり、ショーのトレーナーとしても活躍する一方、周辺の海にもぐって、生き物の観察や採集を行ってきた。
Q.海の変化は感じますか?
城崎マリンワールド 伊藤公一さん:昔はこの辺りの海面が海藻だらけで、もぐる最中に海藻をよけながらじゃないと入れない時も結構あった。海藻が生えてない場所がだんだん増えている感じがします。本当に砂漠みたいな感じです。
海が「砂漠みたい」とはどういうことなのか?伊藤さんたちと一緒にもぐってみると…。
記者:今日はにごっていますね。クリアに見えないですね。
うねりが強い中、着いていくと、だんだんと周りが見えてきた。岩肌がむき出しのところが多く、確かに砂漠のような景色だ。
代わりに目についたのが、いたるところにいる「ムラサキウニ」。食欲旺盛な「ムラサキウニ」が海藻を食べ尽くしてしまうことが「海の砂漠化」の原因の一つとして考えられている。
海藻がなくなることで、魚のすみかや産卵場所が減ってしまい、日本各地で大きな問題となっている。
海の砂漠化を少しでも防ごうと、城崎マリンワールドでは伊藤さんが中心となり、大量発生した「ムラサキウニ」の採集に乗り出した。
ドライバーで1個1個丁寧に、穴や隙間からウニを取り出してかごに入れていく。
かごいっぱいのウニ。この日はわずか1時間で、30キロほどのウニが採れた。
城崎マリンワールドの周辺で、ムラサキウニが増えた原因はまだ分かっていない。
今は海藻が少なく、ムラサキウニが大量発生して砂漠化しているが、採集活動により海藻が戻れば、かつてのように稚魚や魚たちが集まってきて豊かな生態系が復活するきっかけになることが期待される。
そして、海藻の光合成で二酸化炭素が吸収されるため、大気中の温室効果ガスを減らす上でも重要な役割を果たす。
■海藻の赤ちゃんを育てる取り組みも
6月、水族館に新しい水槽が登場した。
水槽の中にいるのは、この辺りに生息し、地元の人にはなじみのある海藻「アカモク」の赤ちゃん。展示しながら育成している。
城崎マリンワールド 伊藤公一さん:今は大きいもので2センチくらいなんですけど、大きくなると2メートル、3メートルと結構大きくなる海藻です。いずれたくさん作れるようになったら、海に返していきたいなと思ってます。
まずは自分たちができることから、少しずつ手探りで始めている。
採集した「ムラサキウニ」も水族館で展示しているのも、城崎マリンワールドならでは。
記者:すごい、すごい!食べてる?
ウニがキャベツを食べている姿を見せてもらった。園内のレストランで廃棄される予定だったキャベツをエサに飼育しているのだ。
記者:引っ張っても(キャベツを)離さない!
さらに、この日捕ったウニを食べさせてもらうことに。
記者:香ばしい。おいしい!食べられると分かったら、たくさん捕りたくなりますよね。
城崎マリンワールド 伊藤公一さん:(漁師さんに)捕っていただけたらウニが減るので、適正な量になっていくのかなと思います。
海藻がない今は身が小さく、ただの厄介者だが、飼育がうまくいって城崎の名産になれば、漁師がウニを捕り、海藻も残る。そんな環境が理想だ。
城崎マリンワールド 伊藤公一さん:海藻がたくさんあればウニたちも飢えずに済むので、ウニが悪いわけではないので。飼っているとだんだんかわいくなってくるんですよね。海藻を戻していけば、魚もたくさん戻ってくるかもしれないので、がんばっていきたいなと思います。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年6月18日放送)
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