「ケラマブルー」とは、沖縄県慶良間諸島の海の色を指す言葉。憧れを込めてこう呼ばれます。透き通った海水と砕けたサンゴの作る白い砂が青と白のグラデーションを織りなす、独特の淡く優しい色です。
慶良間の海に潜ると必ず、色鮮やかなサカナたちやサンゴ、ウミガメたちに出会います。時には魚群や大物も現れ、冬はザトウクジラもやって来ます。さまざまな表情を持った豊かな海。そんな慶良間の海中風景を代表し、「ケラマブルー」を体現している。そう感じる場所があります。
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それは慶良間諸島のひとつ、阿嘉島の北東沖です。真っ白な砂地に、エダサンゴの代表種「トゲスギミドリイシ」がぽつんとたたずみ、周りを海の色に溶けるような水色の「デバスズメダイ(以下、デバ)」が、にぎやかに華やかに、群れ舞ってます。
水深は4~5メートル。沖縄の強く明るい日差しが惜しみなく注ぎこみ、海底をきらめかせて波の斑紋を映し出しています。
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デバは成魚で全長約6センチ。近づくと、一斉にサンゴの隙間(すきま)へ逃げ込みます。そうして身を守っているのです。しかし、サンゴのそばでしばらく静かに動かず待っていると、ふわりと湧き上がってきます。個々のデバがさまざまな動きをすることで群れ全体も形を変え、一つの生き物のような姿を作り出します。
国内では、南西諸島や小笠原諸島などの浅いサンゴ礁の海で暮らしています。外海から隔てられた、穏やかなラグーン(礁湖)内のエダサンゴの周りで群れを作り、動物プランクトンなどを食べています。
下アゴに生えている歯が前向きに突き出ていることにちなんで、和名がつきました。漢字だと「出歯雀鯛」。
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世界中の海を見てきましたが、ここほど心地よい「青と白の世界」はそう多くありません。色彩心理学では、青色はヒトの気持ちを落ち着かせたり、集中力を高めたりする効果がある、という研究結果があるそうです。
透明度が高い慶良間の海では、30メートル以上先まで見通せます。「何もせず、ただぼんやりとデバたちの動きを見ているだけで幸せ」。多くのダイバーがそう口にします。
人工音はレギュレーター(水中呼吸器)が発する、「シュー、ボコボコ」という音だけ。他はデバたちの動きで「シャッ」と海水が動く音と、パチパチというプランクトンの音しか聞こえません。
ダイビングでは、空気タンクの容量や潜水病の原因になる窒素の影響で、潜る深さや時間が制限されます。それを計算して調整し、1回に潜ることができる時間は30分から1時間程度。でもここは浅く、理論上は2時間以上の滞在も不可能ではないため、「ダイバーになって良かった、ずっといたい」と思ってしまうのです。
慶良間諸島の観光キャッチフレーズは「世界が恋する海」。一度潜れば、決して誇張ではないことがわかります。(沖縄県座間味村で撮影)【三村政司】
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