2014年に自死した県立高校の男子生徒の母親が、当時の学校の対応は不適切などとして鹿児島県に損害賠償を求めていた裁判は、県が母親に謝罪し、再発防止策を継続することなどを盛り込んだ裁判所の和解勧告に基づき、25日、和解が成立しました。

この裁判は2014年 、当時県立高校1年生だった男子生徒が、いじめを苦に自死したことを巡り、生徒の母親が「教職員らはいじめを防止し、自死を回避すべき義務を怠った」と主張して鹿児島県に約4500万円の損害賠償を求めていたものです。

鹿児島地裁は2024年3月、「再発を防止するための指導や取り組みの継続を中心とした内容での和解が解決にふさわしい」として双方に和解を勧告していて、この勧告に基づき、25日和解が成立しました。

和解条項には、県が重大な事態を防げなかったことを厳粛に受け止めて母親に謝罪することや、すでに県が取り組んでいる再発防止策を継続すること、そして母親側は、損害賠償の請求を放棄することなどが盛り込まれています。

和解が成立したことについて鹿児島県教育委員会の地頭所恵教育長は「重大な事態を防げなかったことを厳粛に受け止め、生徒、ご家族にあらためて謝罪する。再発防止に全力で取り組んでいく」とコメントしています。

自死から10年、生徒の母親と弁護士が記者会見を開き、和解に至った思いを明らかにしました。

会見で母親は、男子生徒がもし生きていたら何をしていたか想像しながら次のように語りました。

母親「3人の中で一番やんちゃで元気で、という感じの子供でした。スポーツインストラクターのような仕事に就きたい、当時はやっていたゲームの関連の仕事もしたいと言っていたので、人と関わる仕事をしていただろうと思います」

そして母親は今回の訴訟を提起するに至った思いを語りました。

母親「私はこの裁判で損害賠償を求めようということは一切なく、10年前に(適切な対応が)なされていればこのような10年間を迎えずに済んだのではという気持ちでいる。それをどうしても県が認めてくれなかったというところがあったので、謝罪を求める裁判はできないので、賠償を求める裁判をした」

そのような思いで臨んだ今回の裁判。和解に至ったのは、和解勧告書に具体的な再発防止策がつづられたことや、重大事案のサインを家族と共有してほしいという遺族の思いをくみ取ってもらったことなどが理由だったと言います。

母親「(同じ被害者を)次に出さないために(息子)がしたことをちゃんと残してあげられたらなという気持ちが湧いてきた。和解勧告書の10ページをみたときに、すごく(息子)を理解してくださった話が弁護団を通じて伝わってきたときに、とても温かい気持ちになり、闘うのはやめてもいいのではないかと、ここが終着点なのかなと思って和解を受け入れた」

最後に母親は一連の出来事を振り返り、「悔しくて悔しくて、きつくて、本当に抱きしめて『ごめんね』と言いたかったし、今だったら『ごめん』だし、当時だったら『もう何があったのよ』と言いたかったし、そんな感じでした」と話しました。

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