政治とカネの問題が大きく影を落とす、衆議院の補欠選挙。選挙戦の火ぶたが切られています。「長崎3区」「島根1区」「東京15区」3つの選挙区のなかでただ1つ、与野党の一騎打ちとなっているのが「島根1区」です。島根県ではこの30年近く、自民党が選挙区で勝利し続けていますが、裏金問題で、その牙城が揺らいでいます。
■与野党一騎打ち“裏金”で攻防
自民党 小渕優子選対委員長
「派閥をめぐる政治資金の問題で、大変な政治不信を招いています。執行部の1人としても、心からおわびを申し上げたい」
島根県は小選挙区制の導入以降、全国で唯一、自民党が議席を独占してきた“保守王国”。竹下登元総理や青木幹雄元官房長官を輩出してきました。今回は細田博之前議長の後継を決める選挙ですが、細田氏は裏金問題を招いた安倍派を率いてきた当事者。その重荷を背負ってマイクを握るのは、錦織功政氏(55)。元財務官僚の新人です。
自民党 錦織功政候補
「私はいつか、ふるさとの発展のために貢献したいと願い続け、昨年12月末、長く働いた財務省に辞表を提出して、このふるさとに戻ってまいりました」
知名度の低さをはねかえそうと、自民党の組織力をフル稼働させた選挙戦を展開しています。支持者向けの会合を重ねることで、票を着実に固めようとしています。“あいさつ回り”もその一つ。地元県議などがあらかじめセッティングした会場に出向き、地元の党員らに支持を訴えます。こうしたあいさつ回りを一日に何カ所もこなしてきました。
男性
「(Q.錦織さんどう)大変だね。一番悪い時だわね」
訴えるのは政治の刷新です。
自民党 錦織功政候補
「この4月に入って、ついに政治改革に向けた動きが、自民党そして国会内において始まりつつあります。私は一日でも早くこの動きを後押しできるよう、その立場に立てるよう一生懸命努力してまいります」
支持者
「(Q.政治を自民党頼みを変えなきゃという空気は県民の中には?)あると思いますよ。変えたいという気持ちはあっても、少々のことでは変えられないでしょう。ちょっとのことでは(他の党は)島根県では駄目でしょうね」
「(Q.自民党を支持しながら、より地域の人に寄り添う形に変わっていくことを期待?)だから少しでも良くしてもらいたい。自民党しかないです」
“変化”を求める声に自民党はどう応えるのでしょうか。
自民党 小渕優子選対委員長
「(Q.自民党も地方のあり方、地方と国のあり方、もう一度考え直す時期に来ているのでは)新しくしなければならないところは新しくする一方で、守るべきところは守っていかないと。地域で暮らす方々いらっしゃるので、そこは自民党がやってきた強い部分だと思いますので。我々の信頼回復の出発点としていきたいと思います」」
自民党 錦織功政候補
「(Q.自民党には逆風が吹いているとされる。逆風、一日周ってみて実感としてどうでしょう?)逆風は今もあると思っています。ですが、確実に私への支援は高まっていると信じています」
一方の野党候補。亀井亜紀子氏(58)です。
立憲民主党 亀井亜紀子候補
「自民王国を崩すことによって、皆さん真面目に日本の政治を変えましょう。島根を変える。日本が変わる」
亀井候補の追い風となっているのは、裏金問題への有権者の“怒り”でした。
男性
「相も変わらず保守王国島根で、細田さんに代わるような方が登場して、また延々と続いていく。その感覚だけは耐えられないっていう」
亀井亜紀子候補は、島根を地盤とした元衆院議員の亀井久興氏の長女です。前回21年の選挙では細田氏に敗れ、比例復活もかないませんでした。
■進む過疎化…与野党に失望の声
立憲民主党は連日、党幹部を投入し総力戦を展開。選挙区内を広く回り、支持を訴えてきました。
立憲民主党 泉健太代表
「知名度も結構高まっているなという気はしますね。『なんとかしてよ』という声、これも非常に多い」
泉代表と地元神社を練り歩いたこの日。有権者との触れ合いに手応えを感じていましたが、思いがけない言葉も…。
女性
「自民党には疲れます」
立憲民主党 泉健太代表
「ですね」
女性
「でも、あなたたちにもちょっと失望してる」
立憲民主党 泉健太代表
「これからもよろしくお願いします。頑張りますので」
女性
「何を頑張るの?」
立憲民主党 泉健太代表
「政治をきれいにしなきゃいけない」
女性
「頑張るって言葉だけでは信じられない」
単なる批判の受け皿ではなく、自民党にとって代わる選択肢になれるのかどうかが問われています。
立憲民主党 亀井亜紀子候補
「(Q.保守層が強いと言われているが、その中に分け入っている手応えは?)自民王国は確かだが、今の自民党が果たして保守だろうか、私は疑問に感じている。昔の自民党はもう少し地方を大事にしたし、私自分を保守だと思っているし、本来の真っ当な保守とはどういうものかも伝えていきたい」
特に訴えたいのは、地域の衰退ぶりです。
立憲民主党 亀井亜紀子候補
「県庁所在地のJRの駅前が閑散としている。これまで自民党の有力な政治家を国会に送ってきたのに、島根県が発展しているという感じは全くしない」
少子高齢化と過疎化が急速に進む島根県。県で唯一のデパートは今年1月に閉店しました。かつてはにぎわっていた商店街にも、その面影はありません。
■“古株”自民党員も悩む投票先
過疎化が進む安来市で、投票先を悩んでいるという男性を尋ねました。約40年にわたり自民党員の澤田直明さん(77)です。
自民党員 澤田直明さん
「(Q.どこに票を投じるか決まっていますか?)なかなかそれは悩みで、悩んでいるところ」
長年の自民党政治がもたらした光と影。そして政治とカネをめぐる問題で、澤田さんの心は揺れています。
自民党員 澤田直明さん
「同じ自民党員として恥ずかしい感じがして。自民党と対峙できる野党ができたらいいなと。(Q.野党にはどういうことを求めたい?)ここで生活できるだけの収入が得られる政策をとってほしい。自民党でも野党でも。(Q.我々の取材に話そうと思った理由は?)いや実態なので。かざることも何もない。私の思いを聞いていただければ、ありがたかった。今、非常に悩んでいる」
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