復刻された「りんすず食堂」の「レモンラーメン」=東京都中央区で2024年6月25日、佐久間一輝撮影

 三井不動産は、お取り寄せグルメサービス「mitaseru(ミタセル)」を運営する新会社を設立した。人手不足や食材費の高騰などで飲食業界を取り巻く環境が厳しい中、新型コロナウイルス禍で閉店を余儀なくされた人気店のメニューを再現するなど「食文化の継承」に力を入れる。

 ミタセルは、予約の取れない人気店やミシュランガイド掲載店など、提携するレストランのメニューを冷凍加工し、ネット販売するサービス。レシピの提供を受け、専門の料理人が手作りで調理し、食材の仕入れから商品の製造、販売までを一括で請け負う。1食から購入でき、全国の名店の味を自宅でも楽しめる。

 三井不動産の社内公募で提案があり、2023年4月にサービスを開始。現在は34店舗が参画し、計67商品を購入できる。新会社の設立により製造拠点の新設やグループの連携を進め、海外販売も視野に26年に100店舗の参画、30年には事業規模50億円を目指す。

お取り寄せサイト「mitaseru(ミタセル)」のロゴ=三井不動産提供

 今回、新たに発売される商品の中には、現在は実店舗で食べられないメニューもある。復刻されたのは、今年1月にコロナ禍の影響で惜しまれつつ閉店した東京都江東区のラーメン店「りんすず食堂」の「レモンラーメン」だ。

 そばだしとラーメンスープを融合させたスープに薄切りレモンをトッピングし、やさしい味付けから常連客らに「罪悪感のないラーメン」と親しまれた。店主からレシピなどを提供してもらい復刻。冷凍加工することでレモンの苦みが出ず、より改良されたという。

 帝国データバンクによると、23年度の飲食店の倒産件数は802件で、それまで過去最多だった19年度(784件)を上回った。

 ミタセルを運営する新会社の代表取締役に就いた松本大輝さんは「元々はコロナ禍で苦しんでいる飲食店舗を助けたいという思いから構想した。今後もさらなる復刻商品の拡充により、失われゆく日本の食文化の継承にも貢献していきたい」と話す。【佐久間一輝】

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