れんがの大量生産を支えた、現存する「ホフマン輪釜6号窯」の内部=埼玉県深谷市上敷免で2017年12月、山寺香撮影

 日本初の機械式レンガ製造工場で、国指定重要文化財の「日本煉瓦(れんが)製造株式会社 旧煉瓦製造施設」(深谷市上敷免)の主要施設が30日から定期公開される。新1万円札は同社設立を主導した深谷出身の渋沢栄一が表の顔となり、裏に描かれる東京駅丸の内駅舎、さらには日本銀行本店旧館のレンガは深谷製。新紙幣の表も裏も深谷と深い縁で結ばれていることを実感できる新名所として注目されそうだ。【隈元浩彦】

 明治初期、近代化に向けて政府は洋風建造物の官庁街建設を急いだ。欠かせないのが品質の高いレンガだった。政府の要請に応えた栄一らによって1887年、日本煉瓦製造株式会社が設立され、翌年に故郷血洗島にほど近い上敷免に最新の製造工場が建設された。

 レンガ製造の中心を担ったのがドイツ人技師によって導入されたホフマン輪窯(わがま)。窯を環状にすることで、レンガの連続焼成、大量生産を可能にした。最終的には6基作られ、明治末には年間約3500万個が製造された。レンガには「上敷免製」の刻印が押され、全国にその名が知られたという。

 その後、需要の低下に伴い規模は縮小。輪窯として唯一残った「6号窯」(1907年製)、旧事務所などが97年に国の重要文化財に指定された。一方で、同社は2006年に自主廃業し、重要文化財の建造物を含む敷地7913平方メートルが市に譲渡された。

 6号窯は、耐震性の問題などから市は原則非公開としていたが、公開に向けて19年から補修工事に着手。今年度中に完了する見通しが立ったことで、新札発行記念行事の一つとして、30日から土・日・祝日に限り、6号窯の一部公開に踏み切る。予約不要の定期公開は初めてとなる。公開時間は午前9時から午後4時(30日のみ午前11時から午後4時)。

 6号窯は現存するホフマン窯としては国内最大規模。小島進市長は「貴重な日本の近代遺産。渋沢栄一ゆかりのレンガと、深谷の魅力に触れてほしい」と話している。

初日はイベントも

 初日の30日午前10時から午後3時まで、6号窯の隣接地に位置するたつみ印刷で、「煉瓦窯フェスティバル」を開催。郷土芸能の披露、飲食店の出店があり、お祭り気分を盛り上げる。詳しくは市文化振興課(048・577・4501)。

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