手に張り付いたヤマビル=上村博道さん提供
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 伸びて縮んで、ニョロニョロと寄ってくる。いつの間にか皮膚に張り付き、血を吸っている――。

 山で行楽気分を一気に損ないかねないのがヒルによる被害だ。本州以南の各地で見られるヤマビルの活動は梅雨の季節に活発化しやすいという。

 その対策を登山歴30年のベテランガイドに聞いた。

二酸化炭素、体温を感知

肌に張り付いたヤマビル=上村博道さん提供
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 「今では慣れましたけど、初めて見た時は驚きましたよ。もう行きたくないと思いましたね」というのは、エベレスト登頂経験もある登山ガイドの上村博道さんだ。

 上村さんの住む神奈川県は首都圏で人気の丹沢山地を抱える。県が研究機関などと作成した「ヤマビル対策共同研究報告書」によると、林業の衰退による山林の荒廃や温暖化による野生動物の増加で、ヤマビルは近年、生息域を山奥から山麓(さんろく)、住宅地へと拡大し、被害の声も多く寄せられているという。

 体長約2~3センチのヤマビルは、伸びると5~8センチほどになる。足で踏みつけてもつぶれない強じんな筋肉を持ち、直射日光の当たらない湿った落ち葉の下などに潜んでいることが多い。雨の日やその翌日など、湿気が高い時に出現数が多くなると考えられている。

 登山客らに恐怖心を抱かせるのは、吸血して繁殖することだ。

 ヤマビルは動物が吐く二酸化炭素と体温を感知して吸血対象に寄っていく。さらに服に潜り込んで皮膚の柔らかい所を探り当て、前吸盤にある顎歯(がくし)で皮膚を傷つける。

 そして、麻酔効果があり血を固まらせないようにする物質「ヒルジン」を出しながら吸血する。吸血されても痛みを感じず、その後1~2時間ほど血が止まらないことがある。

 とはいえ、量は多くなく、しばらくかゆみが残るほどで、人命にかかわることはほとんどないという。

ヤマビル対策にはパンティーストッキングと靴下の重ね着が効果的という=上村博道さん提供
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「パンスト」が効果的

 「今でも生息地に行かざるをえない時は足元をいつも気にして落ち着かない」。そう語る上村さんの対策は、まず帽子に長袖、長ズボンといった肌を露出しない服装にすること。シャツやズボンの裾はしまう。

 そして経験上、効果が高いのはパンスト(パンティーストッキング)をはくことだという。さらに市販の忌避剤や虫よけを吹きかけるのが良い。

 かみついたヤマビルを取り除くには、メンソール系のローションや塩などをかけると外れやすいという。傷口は絞って洗い、止血のためにばんそうこうを貼っておく。

 休憩中はザックなどの荷物は地面に置かないように木につるし、歩いている時も足元を同行者同士で確認するのが望ましい。

 「せっかくの山行きが安心して楽しめないのはもったいない。事前に現地の情報をしっかり集めて準備を整えてほしい」とアドバイスしてくれた。【山崎明子】

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