稲垣キャスター:
「私は今、朝市通りから少し離れた、マリンタウン近くにいます。道を挟んだ向かいには仮設住宅が立ち並んでいます」
「そして今からご紹介するのがこちら。今日、7月1日、つい先ほど午後5時半にオープンした飲食店です。地震発生から半年、どうして私がこちらのお店を紹介したいのかと言いますと…お店の代表、池端隼也(いけはた としや)さんです」

池端さん:
「よろしくお願いします」

稲垣キャスター:
「今の気持ちを教えてください」

池端さん:
「もう感無量ですよ、僕は。スタッフも楽しそうに仕事していますし、
お客様も楽しそうにしていらっしゃるので…」

稲垣キャスター:
「皆さんご存じの方も多いと思いますが、池端さんは、輪島市でフレンチレストランのオーナーシェフをしていました。そして地震発生以降、きのうまで仲間の料理人たちと共に輪島の人たちの食を支えてきたのです」
「池端さんたちのこの半年を振り返ります」

VTR:
池端さんは2014年、地元の輪島市でフレンチレストラン
「ラトリエ・ドゥ・ノト」をオープン。
3年前にはミシュランガイドで1つ星を初めて獲得しました。

池端さん「これからももっと地域の能登のすばらしいものをお客様に提供したいと思っています」

しかし…。

池端さん「ここ上がってもらったら分かるんですけど、上が全部やられている」
「屋根がないんで雨漏りがひどくて…」

元日の地震で、朝市通り近くにあった店は「全壊」と判定されました。

店がそんな状態でも、池端さんは、地震があった翌日からある事を始めました。

池端さん「スープ作ってコメ入れて、おじやみたいにして」「肉あるん?」
南谷さん「いい肉やよ」

炊き出しです。
まわりの被災した飲食店の人たちと共に、
店にあった食材などを持ち出して温かい食べ物をふるまったのです。

避難している女性「体育館の中でガラス割れててとても寒かった。おいしいです、ありがたいです、本当にありがとうございました。皆さんにお世話になって」

池端さん「ずっと温かいものを食べていなかったみたいで涙している人もいたので来てよかったです」

その後、池端さんたちは炊き出しのチーム「輪島セントラルキッチン」を結成。
毎日、各避難所に電話をして必要な人数分のご飯を作ってきました。

復旧支援に来た業者向けにも1食500円で炊き出しを行い、
それを被災者向けの食材費に充てました。

先月からは弁当に形を変え、作った数はこの半年で10万食にもなりました。

池端さん「長いというより毎日必死だったので…」

そして…避難所で生活する人も減り、市内の飲食店も少しずつ再開したことから炊き出しはきのうで一旦、終了することに。

スタッフの女性「1つ区切りを迎えて復旧から復興に向かって進む日になるのかなとは思います」
「被災者が被災者のために始めた炊き出しが、無事きょうこうやって終了を迎えます、ありがたいです」
「きょうで一区切り、明日から新しいスタート、ご苦労様でした!」

弁当を車で運ぶ最後の炊き出しは避難所で暮らす36人分のお弁当。
輪島市民の食を支えた池端さんたちの活動が1つの区切りをつけました。

しかし…

池端さんON「これから炊き出し終わった後みんなで生業しないかとみんなに声をかけたんですよね、そしたらみんなぜひということで、これからみんなが集まる居酒屋をしようかなと思っています」

地震で閉店した店を購入し、半年間炊き出しを続けてきたチームで新たな活動をスタートさせました。

池端さん「炊き出ししていて思っていたのが、やっぱり食事を食べている時ってみんな嫌なことを忘れてすごい幸せな気持ちになるというのはわかっているので、そういう場所を僕らが提供するのが義務というか使命だねと言っていたので、居酒屋スタイルというか…みんなでお酒を飲みながらワイワイできるような空間を作ろうということで今のスタイルにしようかなと思っています」

炊き出しのかたわら、池端さんたちは、少しずつ準備を進めてきました。
切り盛りするのは料理人だけではありません。

田井さん「ホールスタッフになるんですかね。輪島港で漁師をしていて今漁に出られる状況ではないので今ここで働かせてもらうという形ですね」

中には、輪島で3代続いた味噌蔵を廃業し手伝うことを決めた人も…。

立野さん「この決断に関しては何の後悔もないかなと。このメンバーすごい好きなんで」「一緒にやっていけるのが楽しいなって」

他にも居酒屋にラーメン店、バーのマスターなどジャンルはバラバラ。
それでも池端さんは何の心配もしていません。

池端さん「炊き出ししている中ですごい絆が深まりましたし、
みんな思いは1個なので。来る人を喜ばせたいという思いでつながっているので…」

店名は「-mebuki- 芽吹」。震災から立ち上がろうとする新しい芽が
ここから大きく成長していきます。

稲垣キャスター:
「池端さん、この半年間いろんなことがあったと思いますけど一番印象に残っていることは何ですか?」

池端さん:
「振り返ってみると、みんなで炊き出しをした期間が長かったので、電気がない、水がない中で炊き出しをしたことが脳裏に蘇ってきますね」

稲垣キャスター:
きょうのお料理はどんなメニューですか?

池端さん:
地物のハモを使ったお鍋とか、お刺身は輪島沖のやつです。うちの料理人が釣ってきました」

稲垣キャスター:
「輪島沖で釣ってきたんですか?」

池端さん:
「そうなんですよ。ヒラマサです。今漁師が出られないので、船を出して釣ってきたんです」

稲垣キャスター:
「貴重な輪島のお魚を頂きます、久しぶり!」
「歯ごたえと、新鮮さと、甘み。一噛みごとに幸せが伝わりますね」

池端さん:
「ありがとうございます」

稲垣キャスター:
「お客さんにも伺います。池端さんとはどんなご縁なんですか?」

お客さん:
「私たちも1月2日からおにぎりの炊き出しを始めまして、5日の日に池端さんと合流して工房長屋で一緒に炊き出しをしていました。私はお米を炊いていました」

稲垣キャスター:
「半年経ってきょうこちらのお店でお料理を食べていかがですか?」

お客さん:
「あの頃はこうしておいしいお料理を頂けるとは思っていなかったので、感慨深いというか…池端さんを前にしてこうしておいしいお魚を頂けて嬉しいです」

稲垣キャスター:
「今後このお店をどのようにして盛り上げていきたいですか?」

池端さん:
「能登には自然が残っていますので、僕はこのお店でおいしいものを作って皆さんに
召し上がって頂いて、笑顔になって、少しでも元気になって、いい復興につなげていきたいですね」

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