東京女子医科大(東京都新宿区)の推薦入試で、同大と同窓会組織の一般社団法人「至誠会」が一部の受験生の保護者らから寄付金を受け取っていたことが明らかになった。文部科学省は私立大学の入学に関して学校や関係者が寄付金を受け取ることを禁じているが、寄付額が推薦状を出すかどうかの判定に影響していた可能性もあり、大学に事実関係を報告するよう求めている。
関係者によると、至誠会が寄付の意向を聞き取っていたのは卒業生が3親等以内にいる受験生を対象とする推薦入試で、大学の理念から「至誠と愛推薦」と呼ばれていた。2018年に始まり、推薦枠は数人~10人程度だった。
選考は至誠会による面接と大学による審査の2段階。入学希望者が至誠会に提出する推薦依頼書には、過去の寄付実績を記入する欄が設けられていた。また、至誠会の幹部が面接官を務める面接では、創設者や建学の精神に関する質問に加え、同席した保護者に大学や同会への寄付の意向を尋ねることもあったという。推薦を受けた受験生が大学による小論文審査や面接に進み、最終的な合否は大学が決めていた。
文科省は02年の通知で、私大の入学に関して寄付金を収受することを禁じている。学内には通知に抵触するとの意見もあったとされ、文科省によると、19年末に「入試の選考過程で寄付額が考慮されている」との内部通報が寄せられた。文科省の問い合わせに対し、大学側は「そうした事実はない」と回答したという。
大学は25年度入学者の試験から至誠と愛推薦を廃止。至誠会による推薦が不要の「卒業生子女推薦」に変更して親族向けの推薦枠は残している。
一方、大学では、卒業生が教職員への採用や昇任を希望する場合に至誠会への寄付実績をポイント制で評価していたことも判明した。関係者によると「至誠会ポイント」という名称で、寄付額10万円で0・5ポイントに換算していたほか、至誠会の行事への出席状況なども換算の対象だった。「ポイントが足りない」と告げられた後に寄付し、採用された教員もいたという。
入試や教職員の採用・昇任と寄付の関連について、大学広報室は「現在、第三者委員会によってガバナンスを含め検証中で、コメントは差し控える」としている。
至誠会を巡っては、運営している病院の元職員が勤務実態がないのに給与を受け取っていた疑いがあるとして警視庁が24年3月、一般社団法人法違反(特別背任)容疑で、前代表理事の岩本絹子・同大理事長の自宅や大学本部などを家宅捜索した。【井川加菜美、斎藤文太郎】
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