関東鉄道「DD502」=茨城県常総市の水海道車両基地で2024年6月4日、渡部直樹撮影
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 茶色い車体に、大きなロッド。気動車がずらりと並ぶ関東鉄道の車両基地の中で、1956年製のディーゼル機関車「DD502」は独特の存在感を放っています。

関東鉄道「DD502」の台車部分=茨城県常総市の水海道車両基地で2024年6月4日、渡部直樹撮影
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 全長11メートル、空車重量33・7トン。ファンからは「カバさん」という愛称で親しまれているDD502。目立つのは台車についた大きなロッドです。エンジンで生み出された動力は、推進軸により車両前後にある2軸ボギー台車のそれぞれ片側の軸に伝わります。そしてロッドを介してもう一方の軸にも伝わるのです。貨物鉄道博物館(三重県いなべ市)の伊藤則人前館長によると、構造が単純なこともあり、初期のディーゼル機関車によく取り入れられた方式だそうです。

関東鉄道「DD502」の運転室。背もたれはリバーシブルになっている=茨城県常総市の水海道車両基地で2024年6月4日、渡部直樹撮影
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 製造元の日本車両製造は当時、新しい大型ディーゼル機関車の開発に乗り出したばかりでした。社史によると56年2月に試作車「DL900」を落成。実績を基に民間向けのディーゼル機関車を次々と納入していきました。関東鉄道の前身である常総筑波鉄道に納入されたDD502もその中の1両だったとみられます。

関東鉄道「DD502」運転室内の計器=茨城県常総市の水海道車両基地で2024年6月4日、渡部直樹撮影
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 当初は貨物輸送などに使われていましたが、74年に常総線で貨物輸送が廃止に。今度は取手―水海道間の複線化工事で資材の運搬に従事しました。84年にその工事も終わると、新車のけん引などに使われたものの、活躍の場は徐々に減っていったようです。

関東鉄道「DD502」内部。ディーゼル機関「DMF31SB」やトルクコンバーターなどの機械が並ぶ=茨城県常総市の水海道車両基地で2024年6月4日、渡部直樹撮影
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 最後に定期検査を受けたのは2007年11月です。検査に必要な部品が製造中止になったこともあり、現在は運用していません。現在はエンジンも動かない状態で、再び走らせるには数億円の費用がかかるとみられます。20年には公式SNSなどで広く売却先を募集して話題になりましたが、買い手は見つかりませんでした。今後の計画は今のところないということです。

関東鉄道「DD502」の前面部分=茨城県常総市の水海道車両基地で2024年6月4日、渡部直樹撮影
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 ところで、DL900はどうなったのでしょうか。日本車両製造の社史によれば、1957年から58年にかけて「DD42形」として国鉄で試用された後、常総筑波鉄道に納入されたといいます。関東鉄道の社史には56年度から58年度にかけてDD502に加え「DD901」という機関車を投入したと書かれてることから、おそらくこれがDL900だったのではないかと思います。晩年を鹿島鉄道で過ごし「鹿島のカバさん」とも呼ばれました。「関鉄レールファンCLUB」により大切に手入れされていましたが、同鉄道線の廃線と同時期に解体されてしまったそうです。

 DD502にはぜひ、ディーゼル機関車の歴史を伝える証人として、残っていってほしいと願います。【写真・文 渡部直樹】

関東鉄道「DD502」の側面=茨城県常総市の水海道車両基地で2024年6月4日、渡部直樹撮影
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