「マジですか!」。その審判員の年齢を知った野球部員は試合後、目を丸くした。
それもそのはず。一塁の塁審を務めた湯村三千男さんは89歳。走って、ジャッジして、声を上げる。広島県内で6月にあった練習試合の後、話を聞いた。
声をかけてもろたら、わしは絶対に断らない。グラウンドで尻もちついたことないけぇ。まだまだ現役よ。
でも、最近は1日1試合にしてもらうんよ。体のことを考えてね。それてきたボールが体に当たると、あざになる。
それでも骨は折れんで。朝は牛乳飲んで、パンとバナナを食べてるから。もちろん、今日も食うてきたよ。
審判を始めたのは、40歳の頃じゃった。工場で働いてた時、上司に「手伝ってくれ」って言われてねぇ。球児を支えるやりがいがあって、ずっと続けてきたよ。
高校野球は、一生懸命な姿に元気をもらえるね。球児と話すのも楽しみじゃけ。
今日もファーストを守ってた選手に声をかけたんよ。「ええバッティングしとる」って。みんな監督にしごかれてるけ、わしらは褒めちゃるんよ。
元気の秘訣(ひけつ)? そりゃもちろん野球よ。試合を見るのも、審判をするのも、良い刺激になるんよ。家におるだけじゃ、つまらんけぇね。
公式戦の審判はもう引退したから、夏の大会は見るだけ。今年も球場で楽しみたいね。3年生は今まで辛抱してきたんじゃけ、けがだけせんように頑張りなさいよ。
湯村さんはこの日の試合後、整列してあいさつを済ませると、ニカッと笑顔を見せた。「帰ったら、ビールがうまいね。午前中に審判やって、家に帰って酒飲んで寝る。これ以上の幸せはないで」(根本快)
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