世界的なオレンジの供給不足により、国内メーカーがオレンジジュースの販売を休止するなど「オレンジ・ショック」が広がっている中、和歌山県内に新たな地産地消のミカンジュースが誕生した。20年連続でミカンの収穫量全国1位を誇る和歌山県だが、ジュースとなれば高価な贈答用のものが多く、食卓にはなじみのない現状があった。【安西李姫】
「青果は地産地消しているのに、手軽に買えるジュースに地元産がない……」。和歌山市内を中心にスーパー11店舗を経営する「ヒダカヤ」の3代目、川端慎治社長(46)は約10年前、青果物の担当者としてバックヤードでチラシを作成していた時にそう思った。店頭には、愛媛県産のミカンジュースが並んでいた。
果汁100%の和歌山県産ミカンジュースは、ぜいたくな濃厚さでファンも多い。しかし、贈答用としてパッケージもしっかりとしたものが多く、700ミリリットルほどの大瓶の相場は約1200~1300円。180ミリリットルほどの小瓶も相場は約350円で、地元住民が冷蔵庫に常備して気軽に飲めるものではないという感覚があった。
「普段から手に取りやすい地元産のジュースを作ろう」。すぐにそう考えたが、果汁を提供してくれる業者などが見つからず、商品化は難航した。業界関係者によると、果汁用のミカンは生果用よりも非常に低価格で取引されており、ジュース原料としての増産が難しいといった事情があった。
それから10年がたった2023年、紀陽銀行(和歌山市)の営業マンに話をしたことをきっかけに、同行のビジネスマッチングで再び商品化に向けて始動。和歌山市内のデザイン会社「アンドエー」、そして県内の果汁提供会社と手を組めることになった。自社開発でコストの上乗せを抑えたプライベートブランド商品「カラダにみかん」として、24年3月に販売を開始した。
県産の「温州(うんしゅう)みかん」の果汁を用い、1本160ミリリットル。常飲できる飲みやすさにこだわり、風味は「甘くて濃い」「すっぱい」「サラサラで薄味」の中間となるようにした。現在ヒダカヤの店頭では、150円前後の特価で売り出している。少しずつリピーターを獲得でき、これまでに約1万5000本を売り上げた。
いずれは県外の人にも、親しみのあるミカンジュースにしたいという。6月末からは、大阪市西淀川区の阪神千船駅構内にオープンした県産品のアンテナショップでも販売している。川端社長は「まずは日常的に手に取ってもらえる商品に育て、果物王国・和歌山の魅力を全国に発信するきっかけにしたい」と語った。
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