障がいや病気のため一般企業や事業所で働くことが難しい人を対象とした「就労支援施設」の利用者がこのところ、全国的に増えてきています。去年は全国で約41万人が利用しました。そして、利用者の増加とともに働き方も変わりつつあります。それぞれの得意なことを生かし、社会に新たな価値を生み出しています。
先日、仙台市若林区で初めて開かれたアパレルブランド「ANNOUN(アンノウン)」の展示会。会場にはデザインが特徴的な服やバッグ、雑貨など約70点が並びました。
会場を訪れた人
「素敵というものもあるし、かわいらしいのもある。私はこういう素朴なデザインが目に入りました」
「これが一番気に入りました。すごいじゃないですか!すごくかわいい」
ANNOUNのデザイナー千葉勇臣さん。しかし、千葉さんだけで手掛けた商品は一つもありません。
ANNOUN 千葉勇臣さん
「障がい者が描いた絵を使って商品にしている。他と違う個性が出るので、彼らの絵を使うことは、うちのブランドとして強みと思う。原画がこれになるんですけれど…切り抜いて色を変えたり柄としてデザインしています」
こちらは原画の世界観を引き立てるよう背景を付け加えたり、ブランドロゴをデザインしたりしています。
原画は就労継続支援B型事業所「アトリエ・アンノウン」で描かれています。「B型事業所」とは雇用契約を結ばず自分のペースで利用できる施設のこと。「A型」とは雇用契約の有無と勤務時間や勤務日数の条件などが異なります。こちらでは、10代から50代の障がい者10人が働いています。皆さん、共通の特技は絵を描くことです。
梅島三環子アナウンサー
「施設のどこが魅力?」
利用者 荒井磨里菜さん(49)
「自由に思い思いに過ごせて絵も好きなだけ描けるところ。今まで何時間も作業できない人だったが、毎日も通えず、ここでは何時間も普通に描くことができてびっくりです」
ANNOUN 澤本義一代表
「ANNOUNというブランドを活用することで、本当にやりたいこと好きなことの就労環境を提供できるのではと思い、アトリエ・アンノウンを開設しました。一人一人が持った感性は障がいがあろうが無かろうが一緒だと思うので、その絵をいかに大切にいいものにできるかを会社としては突き詰めている」
一方、こちらの就労支援施設では…。
梅島三環子アナウンサー
「現在、デジタル紙芝居の作成に向けて、地元のクリエーターが利用者、スタッフと打ち合わせをしています」
コトマグ 中田敦夫代表
「今回、いろんなキャラクターを散りばめたいと思っています」
中心メンバーとなるのは、地域おこしのため、これまでさまざまなコンテンツを手掛けてきた仙台市在住のクリエーター、中田敦夫さんです。今回、多賀城市の公民館からPRのための紙芝居製作の依頼を受け、イラストについてはこの事業所と組むことを決めました。
こちらの事業所は県内に4箇所あり、イラストやパソコン作業を得意とする利用者がインターネットで作品を公開。企業や個人から依頼を受け、工賃へと反映しています。今回はパソコンを使って中田さんのイメージをイラスト化します。
コトマグ 中田敦夫代表
「型にはまらない、自由な個性・表現力ほとばしる情熱とか作品のパワーがすごく感じられて、皆さんのエネルギーが一番魅力的と思う。皆さんのいい部分、強みや個性を世の中につなげていければ」
中田さんはこれまで21人の利用者と一緒に、多賀城創建1300年を伝えるデジタル紙芝居を作成。多賀城市内の公共施設を中心に多くの場所で上映してきました。第三者と一緒に活動することは事業所・利用者にとっても大きな意味があります。
利用者 大谷敏明さん(32)
「いろんな人とつながった方が、やりがいが増えていくので描いていて楽しくなる」
利用者 山口貴史さん(39)
「完成して形になる、努力が形になるとうれしかった」
manabyCREATORS事業部 小泉晴香部長
「私たちだけのアイデアだと制限がある。外部の方からお声がけいただくことで、私たちの事業所にもこういうことができる可能性があると気付かせてもらえたりする。やりがいや楽しさを持って通ってもらえることが、受け入れる私たちとしてもとてもうれしい」
障がいがあっても、好きなことを仕事にしてやりがいを感じる。
専門家は近年の社会の変化によって生み出された働き方だと指摘します。
東北文化学園大学現代社会学部 高濱壮斗助教
「これまで軽作業が主だったと思うが、最近の傾向としては就労を提供するより、本人たちの就労したい意欲をどういうふうに具現化していくかをメインにしている事業所が多くなっている。本人たちの多様な就労ニーズに対して事業所がどのように応えていくか。それが利用者がたくさん来てくれることにもつながる。こういった流れはどんどん進んでいくのかなと思います」
障がい者の多様なニーズに応える新たな働き方。社会の理解が少しずつ広がりつつあります。
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