東京大学=東京都文京区で2021年6月15日、武市公孝撮影

 牛に感染したH5N1型の高病原性鳥インフルエンザウイルスは、ヒトへの感染効率が鳥由来のウイルスよりも高い可能性があると、東京大新世代感染症センターの河岡義裕機構長らのチームが発表した。マウスやフェレットに強い病原性を示すことも確認。ウイルスが変化した可能性があり、ヒトへの感染拡大が懸念される。

 チームはヒトの呼吸器細胞の受容体を使い、牛由来と鳥由来のH5N1型をそれぞれ反応させた。すると、牛由来のほうが鳥由来より結合力が強いことがわかった。「ヒトへの感染効率が鳥由来より高いことを示唆するデータだ」(チーム)という。

 牛由来のH5N1型をフェレットとマウスに感染させたところ、脳や筋肉など全身でウイルスが増殖し、強い病原性を示した。マウスに対する病原性は、ヒトの季節性インフルエンザの約1万倍もあった。フェレット間では、飛沫(ひまつ)によって感染が広がることも確認した。

 H5N1型は鳥類では感染力や病原性が非常に高いのが特徴で、2000年代に世界的流行が始まり、各地でニワトリの大量死を起こしてきた。20年以降にはさまざまな哺乳類への感染例が相次ぎ、ヒトでは28人の感染が世界保健機関に報告されているが、ヒト―ヒト間での感染例は報告されていない。一方、米国では今年3月以降、乳牛への感染が急拡大。熱処理していない牛乳を介したヒトへの感染が牧場で起きている。

 河岡さんは「ウイルスの性質が変わっている可能性が示唆された。ヒト間の感染についても、今後の推移を気にかけるべきだ」と話した。

 成果は9日付の英科学誌ネイチャー電子版(https://doi.org/10.1038/s41586-024-07766-6)に掲載された。【渡辺諒】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。