洋菓子店が行った、ケーキのサイズを2種類並べて販売する実験の様子がX(旧Twitter)に投稿され、話題になっている。

「テストやってます」というコメントと共に、投稿されたのはショーケースに並んだケーキの写真。ショートケーキにはイチゴがのっていて、チョコレートケーキにはかわいいクマとハート型のチョコが見える。

投稿したのは、京都府にある洋菓子店・パティスリーミムラの三村彰さん(@pat_mimura)。

左:ショートケーキ 右:チョコレートケーキ(画像提供:パティスリーミムラ)
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投稿にあった“テスト”とは、「苺のショートケーキが8カットサイズ(380円)と6カットサイズ(470円)だと、どちらが人気があるのか」という実験だ。

父の日の6月16日に開始した実験。価格やコスパなどを考えると悩んでしまいそうだが、実際はどうだったのだろうか。

左:8カットサイズ(380円) 右:6カットサイズ(470円)。(画像提供:パティスリーミムラ)

開始1日目は、午前中は圧倒的に8カットが人気だったそう。そして補充を繰り返していると、午後には6カットも動き出し、最終的には8カットが少し余る結果に。

しかし2週間後の結果では6カットが圧勝。さらには、ショートケーキの売れ行きが実験前よりも2倍以上に伸び、三村さんは「驚きの結果でした」とコメントしていた。

初日は8カットサイズが売れていた(画像提供:パティスリーミムラ)

今の時期は、ショートケーキの売行きが下がる傾向にあるのだそう。しかし、2つのサイズを並べたことで6カットが大きく見えたのが良かったのか、よく売れたという。

また8カットが完売すると、なぜか6カットが売れなくなったとのことだった。何か関係があるのだろうか。

父の日限定で、初日だけチョコレートケーキも実験した(画像提供:パティスリーミムラ)

ちなみに、ショートケーキの隣には、初日だけ実験してその後は通常通りの1サイズだけを販売していたチョコレートケーキが並んでいたのだが、なぜかこちらも売行きが伸びたという。

上:6カットサイズ 下:8カットサイズ(画像提供:パティスリーミムラ)

そして、予想していなかった6カットの圧勝に三村さんは、「面白いのでもう少し実験を引っ張ってみたいと思います」とコメント。現在も実験を続けている。

実験の様子に、「大きい方が、美味しそうに見えます」「私は2つ食べたいけど……とかいう時に小さいカットあるとうれしいですね……」「昔はケーキが今よりも大きいような気がしていたし、大きいとワクワクする。8カットだと2個食べちゃおっていう楽しみ方もできる」などとコメントも盛り上がり、結果報告の投稿には4万5000いいねが付いている(7月12日時点)。

実験結果に「予想外、おもしろい」

予想外の売れ行きとのことだったが、この結果をどう思ったのだろうか?また、どうして実験をやろうと思ったのだろうか?オーナーシェフ・三村彰さんに話を聞いた。


ーー実験を始めた経緯を教えて

物価高のニュースを目にするようになってから、当店でも470円のケーキより比較的安価なシュークリームやプリンが売れるようになりました。

それならば、テストとして5月の定休日を1日利用して、300円以下で買えるおやつ菓子(エクレアやオムレット、シフォンなどシンプルで安価なお菓子)だけを販売する日を作りSNSで告知、実行したところ多くのご来店とうれしいお言葉をいただきました。

その経験から8カットを380円で並べたらお客さまも喜んでくれるのではないかな?と思いました。しかし、当店はほぼ全てのケーキが15cmのホール6カットなので、いきなり全てを変える勇気はなく、とりあえず父の日ならお客さまも通常より多くご来店いただけるので、ショートケーキとチョコレートケーキの2種類だけ6カットと8カットを置いて実験することにしました。

通常販売の様子(画像提供:パティスリーミムラ)

ーーお客の反応はどうだった?

気づかずに「ショートケーキ1つ」と普通にご注文される方が多いです。ですが、「どっちが人気?」と実験結果を聞いていただいたり、「大人は6カットやけど子供やおじいちゃん・おばあちゃんは8カットにする」など使い分けを説明してくださったりとお客さまとの会話が増えたような気がします。

ただ、「ホール換算したら6カットと8カットで値段が違う」などのお声を引用リポストでたくさんいただきました。

売手としては体積だけでなく飾りのイチゴ、フィルム、銀紙などのコスト、1つ仕上げる際の時間、販売する人件費などが乗ってくるので380円が「売りたい値段」だと思い値段設定させていただきました。ご理解いただければ幸いです。

1つひとつ丁寧に作っている(画像提供:パティスリーミムラ)

ーー実験結果を見て、どう思う?

予想外の一言です。8カットのほうがお買い求めいただけると思っていたので意外でしたし、もともとの販売数より多くお買い上げいただけるようになった事に関してはとてもうれしく予想外でした。

スタッフの妻と両親とは、おもしろいねっていっています。

チョコレートケーキが売れたのは謎

ーーどうして6カットが売れたと思う?

やはり見栄えがよいからかと思います。また人数分ケーキを買うときに、1種類だけ小さいのは選びにくいなどもあるかと思います。

またXでいただいた、「ケーキは特別な日に買うものだから妥協できない」とのご意見もなるほどと思いました。隣のチョコレートケーキが売れた理由は、謎です。ほんとに謎です。こんな答えしかご用意できませんが…謎です。

6カットより少し小さい8カットサイズのショートケーキ(画像提供:パティスリーミムラ)

ーーお店としては、どちらのサイズがいい?

お店にもよりますが、偶数にカットするのが作業性はよいと思います。当店では、箱に入れやすいので全てのケーキを三角形に統一しています。また同じサイズに統一することで、6個選んでもらうと丸くアソートデコレーションにできます。

真上から見た6分割したホールケーキ(画像提供:パティスリーミムラ)

すると、1つだけ卵不使用のケーキにしたり、小麦粉不使用にしたりできるので、家族にアレルギーがある人がいても「誰かが我慢する」可能性も下がるし「家族に我慢させている」というような負い目も感じにくくなればみんなハッピーなんじゃないかと思い、当店では1番スタンダードなホールケーキの大きさ15cmを基本にそれを6カットにして販売しております。

余談ですがロゴマークもそれをイメージしていますので8カットをだすのは少し勇気がいりました。


ーー今後の実験はどうなるの?

ただいま実験中です。複数のケーキでサイズが2種類あると「どっちも食べたいお客さま」は、8カットを2つ買うのではないか?とのお声をいただきました。

僕もそれは気になっていたので、7月5日から新たに「チョコレートケーキ」「スフレチーズケーキ」も2サイズ価格を変えて並べてみました。

2日間だけですがチョコレートケーキ、スフレチーズケーキに関しては8カットもショートケーキよりはよく売れています。

現在実験中のスフレチーズケーキ(画像提供:パティスリーミムラ)

今後お店に負担がでるような事がなければ、しばらく様子を見ながら続けていきたいと思います。また、いろいろ試しながら自分が楽しいと思える販売方法が見つかればうれしいです。(もちろん売上げも上がればなおさらうれしいです)

【実験結果2週間】
驚きの結果でした。
少し長いですが読んでもらえたら。
父の日が終わってからは苺ショートだけでテストしてみました。
予想では8カットが売れると思ってましたが結果は6カット(大きい方)が圧勝。

それだけではなく…
なんとショートケーキの売れゆきが2倍以上に伸びました!↓ https://t.co/3dvgByFZqq

— パティスリーミムラ (@pat_mimura) June 30, 2024

2つのサイズがあると、買わない選択肢ではなく、「どっちを買う?」という意識に変わり、思わず買ってしまうのかもしれない。今後の実験も、どのような結果になるのか楽しみだ。

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